カミソリでまた手首を切ったとき、真っ先に駆け込んできたのは、やはり桐谷彰宗(きりたに あきむね)だった。震える手で包帯を巻きながら、彼は言った。「薬、また飲み忘れたんじゃないか?」私・久遠美咲(くおん みさき)は何も答えず、ただぼんやりと、赤く潤んだ彼の瞳を見つめていた。さすが双子だ。今この瞬間、心配で歪んだその顔立ちまで、あの人と瓜二つだった。しばらくして、彼は小さく息をつき、ようやく重い口を開いた。「もし……本当に翔伍(しょうご)のことが忘れられないなら、俺が……」「いらない」きっぱりと言い切り、私の視線は、彼の襟元から覗く、生々しいキスマークへと落ちた。「彰宗さんは、ちゃんと知恵さんのそばにいてあげて」口元にわずかな笑みを浮かべて、彼を見た。不思議と、心にはもう悲しみは残っていなかった。 「だって、私もそろそろ自分を解放して、やり直そうと思うの」あのとき、あなたが私を捨てたのと同じように。別の人間として、別の誰かと一生を歩んでいく。彰宗は呆然と立ち尽くした。「何を言っているんだ?」私は手を引き抜いて、自分でガーゼを巻き始めた。「この数年間、私の病気のせいで、彰宗さんにも知恵さんにもたくさん迷惑をかけたわね。でも、もうすっかり良くなったから、そろそろここを出て行こうと思うの」彼は弾かれたように立ち上がった。「良くなった?それなのに手首を切ったのか?」私は俯いたまま、サージカルテープを歯で噛み切り、ガーゼの端をきちんと押さえた。「リンゴを剥いてたら、ちょっと滑っちゃっただけ」信じてくれなかった。この三年間で、私は十七回も手首を切っていて、そのたびに一番にドアを蹴破って駆け込んできたのは彼だったから。でも、今回は違う。本当に、リンゴが食べたかっただけ。「喜んでくれないの?」顔を上げて、彼を見つめた。「ずっと前に進めって言ってくれてたじゃない。今、やっと前に進めるようになったのに、どうして喜んでくれないの?」彼の表情がわずかに揺れ、口を開きかけて、また閉じた。 その顔を見つめながら、私はいつの間にか指先を握りしめていた。翔伍と彰宗は、本当に瓜二つだった。双子だから、当然だけど。眉の形も、鼻筋も、唇も。こめかみの小さなほくろの位
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