18歳の時、白石夏美(しらいし なつみ)は見知らぬ男に酒に酔った勢いで暴行された。その男は裏社会の権力者だった。だが夏美は凄まじいプレッシャーと恐怖に耐え、警察に告発して、無理やり男を刑務所へと送り込んだのだ。しかし、その悪夢が残したトラウマはあまりにも深く、それからの数年間、男性が少し近づくだけで制御不能な震えと吐き気に襲われ、嘔吐してしまうほどだった。夏美は、自分の人生はこれで終わったのだと思っていた。壊され、汚され、二度と普通の人間のように愛し、生きていくことなどできないのだと。九条隼人(くじょう はやと)が現れるまでは。盛沢市のトップ財閥の社長が、なぜかごく普通の、しかも「拭えぬ汚点」を抱えた夏美に対し、熱烈なアプローチを仕掛けてきたのだ。隼人は夏美を尊重し、大切にし、あの暗闇のどん底から少しずつ彼女を救い出してくれた。プロポーズの日、隼人は片膝をついて言った。「夏美、一生お前を守るチャンスを俺にくれ。俺のすべてをかけて、お前の傷跡を癒してみせる」夏美はそれを信じ、ボロボロに砕けた心を、何も隠すことなく隼人に委ねたのだ。街中を揺るがすほどの盛大な結婚式。誰もが口を揃えて言った。夏美は前世でどれほどの徳を積めば、隼人のような男に溺愛され、庶民から一躍、財閥のセレブ夫人になれるのかと。夏美自身もずっとそう思っていた。どん底に突き落とされた後で、こんな光に救われるなんて、自分はなんて幸運なのだろうと。この日、隼人に連れられてビジネスのパーティーに出席した時のことだった。夏美はこの手の場に慣れておらず、しばらくして疲れたから先に帰りたいと伝えた。隼人は部下に夏美を送るよう手配し、自分は付き合いのために会場に残った。駐車場まで歩いたところで、夏美はスマホを控室に忘れたことに気づき、引き返して取りに向かう途中、半開きになったVIPルームのドアの前を通りかかった時、中から話し声が聞こえてきた。「5年だな、隼人。この復讐計画も、そろそろ終わりにする時期じゃないか?」「ああ」隼人の声が響いた。相変わらず冷ややかで低い声だったが、そこには夏美が一度も聞いたことのない冷酷さが混じっていた。「離婚協議書にはとうにサインしてある。数日後、夏美が俺を一番愛している絶頂の瞬間に突きつけてやる。そして……すべての真実を教えてやるん
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