慎也は押し黙った。黒焦げになった遺体を見つめ、かつて生き生きとして、優しく、自分の下で声を上げていた女がこんな姿になってしまったことを思い、突然胃の中が激しく波打った。彼は視線を逸らした。消防隊員が担架を救急車に乗せた。検視官が現場で初期段階の検視を行った。「死者は女性で、奥さんの年齢や体型の特徴と一致します。死因は初期判断で煙の吸引による窒息死と思われます。遺体の炭化が激しいため、最終的な身元確認にはDNA鑑定が必要ですが、現場の状況と遺留品から判断すると……」その後の言葉は、隼人の耳には入ってこなかった。彼はただ、救急車のドアが閉まり、ゆっくりと走り去っていくのを見つめていた。周囲は静まり返り、消防車の放水音と現場の片付けの音だけが残った。慎也が先に口を開いた。彼は口角を引き攣らせて笑おうとしたが上手くいかず、乾ききった声を出した。「死んだのか?」隼人が数秒沈黙した後、喉仏が上下に動いた。「ああ」隼人は短く、消え入るような声で答えた。慎也は息を吸い込み、自分に言い聞かせるように言った。「まあいい。どうせ……元々バラすつもりだったんだ。これで……手間が省けたな」隼人はそれ以上何も言わなかった。ただ背を向け、自分の車へと歩き出した。背筋は伸び、足取りも安定しているように見えた。だが車のそばまで来ると、ドアを開けようと伸ばした手が3度もドアを空振りし、ようやくドアノブを握って開けた。慎也はその場に立ち尽くし、後を追わなかった。黒い車が発進し、加速して、あっという間に夜の闇に消えていくのを見送った。そして再び振り返り、「夏美」の遺体を乗せた救急車が消えた方向を見た。夜風が吹き抜け、廃墟のくすぶる熱と焦げ臭さを運んできた。慎也は突然、喉が締め付けられ、ひどく胸が苦しくなるのを感じた。「クソが」彼は悪態をついたが、誰に向けてなのかは分からなかった。そして慎也も背を向け、自分の車に乗り込み、エンジンを唸らせて猛スピードで走り去った。廃墟の前には、惨状と少しずつ晴れていく煙だけが残された。まるで、最初から何も起きていなかったかのように。葬儀は極めて簡素で、みすぼらしいとさえ言えるものだった。場所は郊外のひっそりとした墓地。時間は早朝で、どんよりと曇った空から霧雨が降ってい
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