サクを見送った後、トキは座布団を枕にして寝ていた。ここ最近、過労と不安でほとんど眠れず、限界が近かった。「店は橋を渡ってすぐのところにあるんだ、問題ないだろ」 サク達がよく行く店は、トキの家から歩いて5分もしない場所にあった。それに辻斬りは激減している。眠気と感覚の狂いが、トキを安心して眠らせ、サクを見送らせた。 横になると睡魔は一気に訪れ、トキはあっという間に深く眠ってしまった。 乱暴に戸を叩く音と叫び声で目が覚める。性格な時間こそ分からないが、外はもう真っ暗だ。「んだよ、人が気持ちよく寝てるってのに」「トキ、はやく開けろ!」 聞き覚えのある声ではあるが、寝起きの頭では誰なのか思い出せない。目をこすりながら戸を開けると、魚売りの三吉がいた。 三吉は快活な若者で、トキの賭け仲間でもある。お調子者の三吉が、珍しく重々しい顔をしていた。その顔で、死人が出たと悟る。「トキ、死人が出た……」 三吉は外に出るように促すかのように、トキが出やすいように体をずらす。下駄を引っ掛けて外に出ると、荷車が置いてある。荷車には、ござで包まれた遺体が積んであった。膨らみなどからして、小柄な人物か子供だろう。「こんな時間に運び込まれるなんてな。辻斬りか? というか、こいつの身内は?」「それは……。俺からは言えん!」 三吉はつらそうに顔をしかめ、走り出してしまった。「あ、おい! 待てよ!」 トキが呼び止めても、彼は止まることも戻ることもなく、闇夜に紛れて消えてしまった。「荷車も置いて行っちまうとはな……。一緒に運んでほしかったが、仕方ない……」 少し闇に慣れた目で、改めてござを見る。15前後の子供か、小柄な女性と見た。「ござの膨らみからして、男ではなさそうだな……。よいせ、っと」 遺体を抱えると、ござ越しでも濡れているのが分かる。濡れ具合からして、堀から引き上げてすぐ、
Last Updated : 2026-05-12 Read more