All Chapters of 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜: Chapter 11 - Chapter 20

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10.神の特権

「今日も早く寝ないと。明日は参観日だよ ? 」「ニカちゃんと行く ! 」 聞いた瞬間、仁香が驚くだけでは済まなかった。 美千花もまた驚きはしたものの、怒りが先行し髪が逆立つ。「ニカちゃんはお母さんじゃないでしょ ? 」「ママ以外が来る人いる。ママの兄妹とかだから明日はニカちゃんでいい」「それは親戚でしょ ? 仁香さんは親戚じゃないのよ ? 」 これには仁香も気まずさを隠せない。何とか場を取り持とうと考えるが上手く誘導する言葉が出ない。「ちゃんとお弁当作るからね。ママと保育園楽しいと思うけどなぁ〜」「ニカちゃんといた方が楽しい ! 」 賢治は食べ終わったテーブルの椅子から飛び降りると離れの住居に向かって走り去ってしまった。「育児って、大変ですね……」 そこへ騒ぎを聞きつけた友紀がやってきた。「何なの一体」「友紀さん……」 美千花は一度仁香へ冷たい視線を向けると、友紀の側へ身体を寄せた。「仁香さんが賢治に、明日の参観日一緒に行こうとか、話してたらしくてもう賢治がその気になっちゃって……困ってます」 仁香の顔が引き攣る。 まさかこんな裏切り方をされるとは。「仁香さん……呆れた……。 あのね、親子の会話ってとても重要なの。それを母親から取り上げるんじゃない ! 賢治くんはまだ小さいから分からないだけで、あなたがそういった行事に行くのはお門違いよ」「あの、わたし言ってないです。賢治くんが突然……」「はぁ ? 言ったじゃん !? マジでやばいんですけど」「仁香さん、賢治くんの面倒を見てくれてるのは美千花さんもいつも感謝してるのよ ? 変に取り入ろうとせず、ちゃんと美千花さんに謝りなさい」 賢治に取り入ろうなどと言う気はない。 しか
last updateLast Updated : 2026-05-10
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11.違和感

「塁さん、ご飯置いておくね」「……はい」 昼間は控えめな態度ながらに、何とか事情を説明してくれた塁。根は優しい男なのだろう。 階段を降りると、玄関の開くガチャリという音が響く。「功一さん ! 」 思わず壁掛け時計を見上げる。 時刻は18時半。 いつもは21時程の帰宅だ。早いとはメッセージを受け取ったがここまで早いとは思わなかった。「ただいまニカ」 近付くと、突然強く抱きしめられる。 いつもはしない行動。 離れていく顔から不意にアルコールの香りがした。「お酒……車は !? 」「まさか。タクシーだよ。飲酒運転なんかしないから安心して」「ご飯、食べてきたの ? 」「あ……そうか。言っておけばよかったよね ? 」「あ……違うの。お肉とお魚……切らしてて。 車を使おうとすると、お義母さん心配するのよ」「ああ。そうだったね」 機嫌の良さそうな功一を仁香は見つめていたが、何か違和感に気付く。 こんな柔和な表情をしているのを今までみたことがあっただろうか。「あれ ? 誰もいないの ? 」「え ? あ、うん。外にお食事に行かれたわ」 功一は現にここにいる。 別人なわけがない。 しかし何かが──いつもは舌打ちと暴言を吐き続けるというのに今日は優しすぎる。初心どころか、交際中ですら言葉使いはややアクティブな印象があったのに今はまるで──「じゃあ、買い物行こっか ? 」「え !? 今から ? 」「どうせ明日の用意も食材が無いと困るだろ ? 」「でも車は……」「俺がそばで見てれば大丈夫。俺が運転しなければ違反じゃないよ。 それに、そろそろ慣れた方がいいとは思うしね。用意
last updateLast Updated : 2026-05-11
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12.粗探し

 ショッピングモールのイルミネーションは店のホールから駐車場まで巨大なアーチと雪の結晶をモチーフにした輝きに満ちていた。 冬の寒い空気に白い息と混じり合う橙色や青の揺らめき。「うわぁ〜。凄いね ! 」「ゆっくり歩こう。まずはそれ」 功一が仁香の足元を指す。「あ。う、恥ずかしい……」「こっちに来るの、急だったからな」「父さんに靴を送ってって連絡はしたんだけど既読がなかなかつかなくて」 父と通話すると、何か溜め込んだものを吐き出してしまいそうで躊躇っていた。心配をかけたくないし、何より吐き出したところで戻るつもりもない。 まだ何か解決の糸口があるはず、と思い続け同居の生活は続いていく。「ブーツを見に行こう」「うん」 □ 仁香と巧一がモールに着いた頃、佐喜男と友紀、美千花と賢治を乗せたタクシーが家へ戻った。「はぁ〜着いた ! 」「ただいまぁー」 思い思いに炬燵へ群がる。「仁香さん ? お風呂は焚いてあるんでしょうね ? 仁香さん ? 」 いくら呼んでも仁香が姿を現さないもので、友紀は足音を殺しながら二階へ上がる。 二世帯住宅とはいかないが、仁香と巧一の部屋と塁の部屋、客室と屋根裏、そしてあの鳥居の部屋しかない二階は、佐喜男と友紀が立ち入れないテリトリーなのだ。 しかし度々友紀は様子を見たがるもので、理由を付けては上がってくる。「仁香さん。寝てるの ? 」 居ないなら居ないで。 友紀は仁香の部屋へ立ち入り物を漁る。仁香も気付いてはいるが、巧一は聞く耳を持たず佐喜男も気まずそうにするだけ。 しかし、今日は違った。 階段を上がり切った友紀を目の前のドアから塁がジッと見ていた。「ひっ !!? 」 数ヶ月ぶりに見た息子の姿に友紀が飛び上がった。「る、塁 !? びっくりした……」 友紀は不審げに
last updateLast Updated : 2026-05-12
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13.不思議なお弁当

 翌朝── 仁香が泊まりだった事を友紀は美千花へ告げていなかった。「じゃあお弁当はどうするの !? 」「え !? 今日、お弁当なの !? 」 焦る美千花にしょぼくれた園児姿の賢治。 ダイニングで喚かれ友紀も立ち尽くす。 完全にしてやられた ! と二人の怒りの矛先はすぐに仁香へ向いた。 しかし。「あれ ? 本当に泊まりました ? 」「泊まりよ。巧一から連絡があったし、わたしたちは朝早いもの」「でも……」 美千花の目の前、カウンターテーブルには二つのお弁当が保温バッグに入って置いてあった。「昨日のじゃないの ? 」 友紀がひったくると、ずっしり重い。 そしてバッグには確かに仁香の筆跡で『こちらが美千花さん用です。楽しんできてください』とメッセージが添えられていた。中身は小さなおにぎりといなり寿司が交互に並び、唐揚げや鮭が卵焼きと共に入っていた。「まだ温かい。一度帰って来たんじゃないですか ? 」「そんなはずは……だとしたら……。靴は…… ? 」 友紀と美千花が玄関前を確認に行くと、見慣れない新品のスノーブーツが揃えてあった。「ほら。これわたしの靴じゃないですよ」「じゃあ、気が変わったのかしら ? 帰ったのに気付かなかったけれど……。 あら ? 巧一からメッセージが届いてる」『今朝方帰宅しました。ニカを寝かせて上げてください。 朝食はレンジの中に入っています。俺と仁香で作りました。食べてくれると嬉しいです』「……」 巧一が料理を……。確かに都会に出てからは一人暮らしをしていたので、しっかり出来る自慢の息子だ。それは疑わないのだが、ココ最近巧一が仁香に接する態度を見て見ぬフリしてきた。 友紀も分かっ
last updateLast Updated : 2026-05-13
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14.勘のいい者悪い者

  巧一は出勤すると、一度向かい側のコンビニへ駐車した。 頭がボンヤリとし、かすみがかかったように記憶が薄い。  確か竹田と飲みに行くことを承諾した。渋々行くか行くまいか迷っていたはずが、何故か昨日はノリに乗って自分から誘った。  だがそれ以降の記憶は無い。「ーーー ! 〜〜〜っ ! 」「ーーーーーっ」 外から何事か声が聞こえてくる。喧嘩のような怒号が飛び交っていた。ルームミラーから背後を見ると、竹田と隣の眼鏡屋の主人が何やら取っ組み合いの喧嘩になっているのが見えた。「はぁ ? 何してんだよあれ」 巧一は呆れた様子で道路を渡った。「竹田さん、何やってるんですか ! 」「あんた ! ちょうどいい ! 」 眼鏡屋の主人は竹田を押さえ込んだ巧一を見て自分の店を指差した。「あんた新人さんで来たヤツだよな ? じゃあ、公平に見てもらおうじゃねぇか !   あれを見てくれよ ! 」 巧一も薄々気付いてはいたが、改めて目の前にすると言葉を失った。 眼鏡屋はあるはずなのだが、山積みになった雪の山で店舗が見えなかった。とてつもない雪の量。  しかし竹田不動産は。  雪玉一つ落ちていない。まるでその場にあった雪をそっくりそのまま眼鏡屋の敷地に盛り上げたように。  それ程の事をしないとこの眼鏡屋も雪に埋もれないだろう。何せ雪掻きのタイミングはほぼほぼ、似通るからだ。「昨日うちは定休だけど、雪かきはしに午前中来た ! その時には無かった ! あんたも会ったよな ? 」 確かに昨日の午前、駐車場の雪かきをしに巧一が外に出た時挨拶を交わした。「休みの日でも雪だと大変ですね」と言った記憶がある。「でも今朝来たら、お宅は雪ひとつ無くてうちの…… ! あんたら、俺の店前に雪掻きした雪を積みやがって ! 」「俺たちゃしてねぇ ! 昨晩は二人で飲みに行ったし、夕方はうちの社屋には雪が積もって無かったんだ ! 」「っかー !! 今どき屋根に雪が積もんね
last updateLast Updated : 2026-05-16
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15.寝坊厳禁

 崖の上の密会場所。 領主の息子アスターと奴隷少女のミレアは、そうして互いの気持ちを知り合っていった。約束など無くとも、いつしか待てば何度も再会を繰り返し、その度にミレアは奴隷小屋を抜け出し、アスターは家人にもバレずに屋敷から出てくる。 屋敷と奴隷小屋などすぐ敷地の中だと言うのに、その庭園は酷く広く感じた。いや、確かに土地は広大なのだ。背の高い植物なのがあるとミレアの姿など見失うほど。「お前何してるんだよ」 遂にこの時が来た。 第三者に見つかってしまった。「ルシアン…… ! なんだよ驚かせるなよ……」 ルシアンと呼ばれた男をミレアがみたとき、とても動揺した。 話には聞いていた。『この領主様の御子息は二人いらっしゃるそうよ。双子でね』 姉奴隷がそう自分に言い聞かせていた事を思い出したが、この時ミレアは初めて『双子』と言う者の存在を目にした。 アスターと同じ艶のある赤い髪に深みのある青い瞳。 同じ姿だと言うのに、恋人のアスターと違いルシアンは恐ろしい程身だしなみも身なりも整いすぎていて、ミレアは焦燥感にかられた。 双子というものが本当にそれぞれの個であり、ただ外見の造作が似ただけと言う事実。今では行動パターンのメカニズムもあるだろうが、少なくともこの時代、ミレアの目にはルシアンがとても恐ろしく写った。 アスターは綿のシャツ一枚で太めの革紐だけの姿。その姿に気兼ねなく甘えていたミレアだったが、双子の兄のルシアンの装いに、やはり分不相応だと思い知ってしまった。「アスター、今日は帰って。わたしはいいから」「え……そんな。やっと抜け出してきたのに……。 ……そう、か。じゃあ出直すよ、ミレア」 そういい頬に唇を寄せる。崖下から吹き上げる風がミレアの髪を掬い、アスターの首元にサラりと触れた。 ルシアンは背中越しに二人にやり取りを聴きながら、弟の不祥事に頭を抱えたのだった。
last updateLast Updated : 2026-05-17
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16.雪の警告

「でも、そうよね」 仁香は冷蔵庫をもう一度開けるとまじまじと整頓されたそれらをチェックした。 今までは父親と二人だったこともあり、大人数の食事を少ない買い物の回数で回す、という経験がなかった。 歩きで行ける距離のスーパーに少ない家族。そんな生活をしていたわけだ。 そこへ焼きそばを食べ終えた友紀が戻ってきた。「そうですよね。今までは食事の量が違ったので、とても勉強になります」 仁香は友紀が嫌味でやったのではないかと確信したのだ。 しかし友紀はポカンとしてそれを聞く。「何 ? なんの話し ? 」「冷蔵庫ですよ」「ああ。食材が足りなくなった話 ? そうね。ドカ雪で行ける時に行けなくなることもあるから、昨日みたいな急な外出はやめてくれるかしら 」「ええ。すみませんでした」 噛み合ってないのに纏まってしまう話。「さて、あとは塁さんのお皿を片付けたらこたつ布団を……」 天気を確認しようと外を見ると、今にも降り出しそうなどんよりとした厚い雲。 その下にまた友紀が洗濯物を干したようだ。今回は大丈夫だと仁香は溜息をついてそれを眺める。前回は下着を公開され酷い思いをしたが、今は自室横の使っていない物置に乾燥機を置いて隠し干場を確保した。もう下着は二度と自分のものだけを自分で干すと決め……。「え、ちょっとまって……」 あまりに悪い天候の中、干されたタオルたちが妙な動きをしていた。縁側から出てタオルを手に取ると、全てが大根のように固く、凍りついていた。「……二度手間……」 カチカチの洗濯物を取り込むと、今日もまたコードのついた鼻の長い相棒を連れて歩くのだった。 □「おい、これから宮司さん来てくれるってよ」 竹田は功一にそういうと、作業に止まっている手元を見て不審がる。「なんだか今日、様子お
last updateLast Updated : 2026-05-19
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17.気配

 功一と竹田はデスクに戻ると、奇妙な心境で腰を下ろす。 引戸が何やら神妙な顔色で帰って行った事が引っかかっていた。「……あれだなぁ。事故物件の時も、あの人ちゃんとお祓いしたし……今までもそんなことは無かったし……思い過ごしだよなぁ。 少なくとも事故物件云々じゃねぇような気がするよなぁ」「俺も……実際に何かが起きたなんてことは聞いた事ありませんね。噂では物件の中で起こるというのは聞いた事ありますが、実際見に行っても、結局俺は一度も見たことありませんよ」 功一はあまり神託やオカルトなどに興味はない。「だよなぁ ! ま、気休めって事でやらないよりゃいいだろ」 □□□「ミレア、太陽祭の誘いは受けたの ? 」 姉貴分の女性が興味津々とばかりにミレアに聞いてきた。しかしミレアにはなんの事か分からずポカンとした顔を返すだけだった。「太陽祭はここの領土のお祭りよ ! あんた知らないでアスター様と会ってたの ? 」「こら、声が大きいわよ」 静かに話す中でも、小屋中の女たちはミレアの反応を伺っていた。「今度の休日に、ルシアン様とアスター様のどちらかが太陽神に選ばれるのよ。この家の主になられる方は皆双子で生まれるの」「え…… ? でも領主様にご兄弟はいらっしゃらないと聞いてましたが…… ? 」「ああ。そりゃあ、片方は生贄にされちゃうからね」「……え ? 」「それで膨大な力を得るのよ。各国の王都と ! もしアスター様が領主様の正統な跡継ぎに決まったら、あたしたちも何かが変わる気がする〜」「そうそう。ミレア頑張って ! 」 所詮は他人事。 ミレアは沸き上がる姉達に慌てて聞き返す。「待って ! 待って、もし。もし、ルシアン様が選ばれたら…… !
last updateLast Updated : 2026-05-28
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18 . 流れに身を任す

「……ただいま」 帰宅した功一は不機嫌そうにカバンを置くと、すぐに寝室へ向かう。「功一さん、食事とお風呂は ? 」「すぐ入る。疲れてんだからさ、勝手にさせろよ」「ご、ごめんなさい」 不安定とはいえ、怒りっぽくなる功一の態度には日々驚く。果たして自分の愛した功一ではない気がして。「仁香さん、ちょっといい ? 」「はい」 友紀が仁香を自室へ招く。 珍しい事もあるものだと中へ入ると、佐喜男も座布団の上に座っていた。友紀がその隣に並ぶ。「仁香さん、今度の日曜……明後日だけれど。ご近所の方の食事会に行くから」「そうですか。楽しんできてください」「貴女も行くのよ ? 」「わたしも……ですか ? 」「まぁ……神代家は一際目立つし、全員出席しないとバランスが取れないのよ」「バランス……。わ、分かりました。では、功一さんも ? 」「あの子にはわたしから言うからいいわ」「分かりました」 そこで気まずそうに佐喜男が口を開く。「塁なんだけどな……。あいつぁ、みんな事情を知っているし連れてはいかないが……仁香ちゃん、あまりよそに他言しないで貰えるかい ? 」「勿論……あの、それなんですけど、塁さん最近は調子がいいみたいで」「 ? 」 佐喜男も友紀も顔を見合せる。「わたし、人見知りされてたんでしょうか。最近は廊下でよくすれ違うんですよ。挨拶もしますし」「……マジかいな」 佐喜男は驚きと喜びの混じる表情。 しかし友紀は不機嫌と妬みの表情。「似た者同士と思われてるだけでしょう。 仁香さん。貴女、家の事をやるのは当たり
last updateLast Updated : 2026-06-02
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19.見え隠れする二面性

 リビングへ戻ると功一が仁香の作り置きしていた食事をゴミ箱に入れたところだった。 気配に気付き振り返った功一の目は虚ろで、仁香を見ても気まずそうな態度一つもしない。「ごめん。口に合わなかった ? 」「盛り付けにセンスがない。食べようって気にもならない。一体、昼間何して遊んでるんだ ? 」「遊んでなんか……」「飯は不味いし、風呂は温いし」「お風呂は……お義母さんが熱いのが苦手みたいで……」「あんな温いわけないじゃん。ほぼ真水。保温機能も切られてるし。嫌がらせか ? 」「え  ? まさか…… ! わたしもこれから入るし……そんな事しないよ」「もう寝る」 功一は不貞腐れたようにリビングを後にした。その後ろ姿を廊下まで追いかけるが言葉が見つからない。 そもそもこの寒い冬場に、功一と自分がまだ入っていない風呂の保温機能を切ってしまうのは考えられないのだが。 友紀は間違って操作しているのだろうかと疑問に思い、つい佐喜男と友紀のいる部屋に視線が向いてしまった。その時、友紀が様子を伺うように首だけを廊下に出し、自分たちのいざこざを見ているのが分かった。 仁香に気付くと友紀の顔がすぐに引っ込んだ。「……」 わざと切られたとしか思えない。 しかしこれを功一に訴えたところで、後からお前が再確認すればいい、と一蹴されてしまうのだ。「あーあ。もう ! 」 嘆いたところでどうしようもない。 ひとつずつ不安の芽を潰して行くしか対処はない。 それよりも今は内職のことで頭がいっぱいだった。「細かい作業は得意だし。可愛いものとかあるかな。選別なんかも在庫管理を思い出すなぁ。この辺りだとどんな仕事なんだろ ?」 仁香は父親と二人になってから、実は内職作業は学生時代に何件も引き受けた事があった。学業の合間に
last updateLast Updated : 2026-06-03
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