Masuk上手くいかない義両親と神代 仁香は新婚二ヶ月にして同居をする。問題が尽きない中、義実家で祭壇を見つけた。開かずの間にあった曰く付きの祭壇。義母の友紀は仁香に掃除をするよう命じる。その頃から、夫の功一の冷えた態度が一変し始める。 最近功一はもっとドライだったはず……思い過ごしか、気分屋なのか。戸惑う仁香は知らず知らずのうちに夫の中に巣食うナニカに魅入られていく。それは仁香を前世から追って来た悪神だった。
Lihat lebih banyak再び廊下に置きっぱなしにした掃除機を取りに戻る。 電気コードが無いと生きられないその相棒は何かの首が長い……或いは象のような鼻の長い動物のようだ。 持ち上げ、鳥居のある部屋へ向かおうとした時、そばのドアでカタカタと物音がした。 塁の部屋だ。「あ、そうだった……。 塁さん ! 昨日はお義父さんに連絡ありがとう」「……はい」 小さく返事だけが聞こえる。 白い鳥居の開かずの間に、姿の見えない義弟との会話。案外自然と馴染むものだ。「さぁ。やるわよ ! 」 開かずの間の取っ手に指を掛ける。 ザリ……ザリザリ…… 軋みながら開く、大きな引き戸。 正面に純白の鳥居。 朱色の絨毯に歪んだ社。 深く深呼吸をする。 空気に異常はない。「貧血だったのかな…… ? 変な匂いもしないし……たまたまよね。 それに謎の神様かぁ。悪いものなら、尚更ほったらかし出来ないし、このままじゃ可哀想だもんね」 仁香は掃除機のコードを刺そうとコンセントを探そうとして気付く。 ぽふ、ぽふ……。 雪のような分厚い埃の層。 朱色の絨毯が霞む程に降り積もってるのだが、昨日仁香が歩いた足跡が消えていた。 それどころか、助けに入ったはずの佐喜男と美千花の跡も無い。 真っ白に均等。埃の積もったふわふわの床だ。「……え……何故 ? 」 一緒に持ってきたスリッパをそっと埃の上に降ろす。 パフ……。「うわぁ。なんだか雪みたい……」 埃や煤は本来汚物なはずだ。しかしこの足跡ひと
洗い物を終え、早速掃除機を迎えに行くと窓の外に洗濯物が揺れているのが見えた。 適当に干された洗濯物。 友紀は家事の類が好きではない。功一は高校はスポーツによる寮生活、大学は一人暮らしと、友紀のものぐさは引き継がなかった。佐喜男がマメな分、友紀はそういう意味では釣り合いが取れた夫婦かもしれない。 皺を伸ばすことなく干された洗濯物を眺めながら、仁香も複雑な気持ちだった。 何せ仁香にはアイロンがけして仕上げろときかないからだ。自分のことは棚に上げ……と、言い出したところでキリがないのも事実。 父親は結婚をすると聞いて涙ながらに喜んでいたが、同居することに関しては心配をしていた。仁香の母親は心労で亡くなっていたからだ。忙しく、腕のいい庭師の父親は個人宅を極めるとそのままリゾート地まで手広く請け負い、家に帰らない日々が続いた。父方の祖父母と母親と仁香。四人で取り残された家は母親が精神を病み、床に伏せてからすぐ祖父母が亡くなり、全てのしがらみから開放された頃、母親も逝った。 同居が大変な事など最初から分かっていた事だ。 こんなものだと自分に言い聞かせる。 ふわふわと揺れる洗濯物の側、犬を連れたどこかの中年男性が、じっと洗濯物を見つめていた。「…… ? 」 その後も、通りかかった隣家の女性も目を丸くして洗濯物を見ながら通りすがる。「……まさか」 タオルの端からチラチラと見える薄布を見つけ、慌てて階段を駆け下りた。 廊下を走り、サンダルを履き薄氷を割りながら庭に出て洗濯物を確かめる。 寒い雪国の洗濯物は凍ってしまう。 しかし今日は例外に暖かい日だった。外に洗濯物を干してもいい天候だろう。 友紀もそう判断したはず。 しかし、そうであればわざわざ一番端に干し、通行人から見えるように吊るされた仁香のショーツやブラは意図的にやったとしか思えない。 ケバケバしく派手なものでは無いが、やはり他人に見られるには抵抗がある。 同居してから洗濯は仁香がし
想定外か、予想通りか──朝起きると、家事は何もされていなかった。 佐喜男と友紀の食べた弁当の空が、乱雑にシンクへ置かれていた。「はぁ……」 思わずため息が出る。 しかし、早寝をしたせいか寝起きがよく、いつもより早い時間にスッキリ目を覚ました。今から炊飯をしても間に合うだろう。 キッチンのカウンターには弁当箱の入ったランチバッグが二つ。 一つは美千花の息子 賢治のものだ。中身を見て好き嫌いをチェック。嬉しいことに昨日も完食。少し嬉しくなる。 功一の弁当箱を開ける時、ふと手が止まった。「洗って……ある ? 」 綺麗な弁当箱。ソースの汚れや、衣の欠片一つ付いていない。そっと匂いを嗅ぐが、洗剤で洗った様子ではなく、軽く濯いであるようだった。 功一の事務所には簡易的なキッチンもあるから、食べ終えたあとに濯ぐ事は可能だ。だが、今まで一度もそんな事は無かった。「……」 ただの気遣いなら嬉しい。 食べていないのを隠すために流した……もしくはほかの女性の影……いや、そんな事ができる環境ではない。 この小さな町で、噂一つ無く愛人を持つことが可能な環境ではないのだ。近隣住民、町中が知り合いのようで、家族の耳に入らないはずもない。 だがもしも友紀の耳に入れば、仁香を捨ててその女とくっ付けとまで言いかねない気がするのだった。 綺麗に濯がれた弁当箱。 これが続くかどうかで話は変わる。 卵を取り出して冷蔵庫のドアを閉め、フライパンを取ろうと振り返ると──「ぅわっ ! 」 ──いつの間にか友紀が側へ立っていた。「お、お義母さん ! びっくりしました…… ! あの、昨日はすみませんでした」 仁香が謝ると、友紀は舐め回す勢いで仁香の全身を見回した。「お義母さん ?
南の島の庭園はいつも緑が豊かで、雑草を残らず抜く作業も枝の剪定も苦にならなかった。先にいた同性の使用人達も皆、同じ身分で優しかった。 しかし自分には秘密があった。 いつも仕事が終わると各自、小屋へ戻り話したり水を飲んだり自由だ。その中で、いつもの景色を眺めに行くと嘘をついて自分だけ崖へ行く。 いつも自分が先に来ていて、ガサガサと茂みの音が鳴るのを待つ。 そして草木を掻き分けて現れた男は大きく手を伸ばし、自分をきつく抱きしめる。 背中越しに感じる温かさはいつもと変わらない。「待たせた」 二人は身を寄せ合い、愛を語り合う。いつもほんの少し。束の間の癒し。 彼は──島の領主の御子息。誰にも知られてはいけない。 二人は秘密の恋をしていた。 □□□ 気が付くと仁香は寝室のベッドで横になっていた。 ベッドの縁には功一が座って頭を抱えていた。「功一さん……」「ニカ……」 功一は迷子になった子供を見つけた母の様な、不安が吹き飛んだ様な笑みで仁香を見下ろす。 寝室は静まり返っていた。「大丈夫か ? 」「え、ええ」 まだ15:30──早退して帰ってきてくれたのか。 功一はスーツ姿のままだったが実に穏やかで、なんだかベッドの上でこんなに顔を合わせて会話をするのは久々だった。同居してからは夫婦の会話も筒抜けで、お互いを楽しむ時間など持つ気になれなかった。 果たして何週間ぶりだろうと胸がドキンと波打つ。 だが、現実は過酷だ。すぐに引き戻される。「 駄目だわ ! 夕飯 ! 準備しないと ! 」 神代家の家事サイクル。それは『旅館と同じ動きをする』に尽きる。故に食事は17:00〜19:00。19:00には風呂が湧いてないといけない。洗濯に関しては朝に友紀と自分たちの物を、夕刻は佐喜男と美千花の作業服と園児の賢治君の洗濯が待っている。「20時だよ。 早退つい