All Chapters of 義実家崩壊の原因は私を守る神です〜悪神に魅入られた花嫁〜: Chapter 31 - Chapter 40

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30.温かい手

 ロビーまで来ると、誠治に連れられた仁香を見て、塁がポカンとしていた。「え…… ? あれ ? 」「塁さん、来てたんですね。お義母さんからは来ないって聞いてて……」 仁香がそう言うと、静かに頷く。「気になって……。兄さんの様子は ? 」「あ……その……」 まさか中身の人格がジャックされているなどとは言い出せず、しかし塁としても祭壇にまつわる話を知っている。仁香の様子を伺うと「そうか」と納得した。 車を回した誠治が戻ってくると、塁に話しかけた。「塁くん。仁香さん、服をうちで着せるからさ。功一くんに言っておいてよ」「分かりました」 仁香は一人ポツンと残される塁にいたたまれない気持ちになりながらも、南川と書かれたのワゴンへ乗り込んだのだった。 □□□「功一くんはどうなってる ? 毎日、家から通ってるんだよなぁ ? 」 誠治が後部座席の仁香をルームミラーから伺う。「はい」「……何も言ってくれねぇのかい ? 今回のことも……功一くんは正装してたのを見かけたって妻が……」「彼は……今忙しくて……」「忙しいって……竹田さんとこの従業員だろ ? そんなに忙しいかねぇ ? 」「……」 それ以上何も聞かず、誠治は突然鳴り出したスマホの液晶を見てから眉を寄せた。 商店街のど真ん中の交差点。 その一角に呉服屋は建っていた。『南川呉服店』「うひ〜」 車を止めてからスマホを見た誠治が額をガリガリと掻き出した。「凄い鬼着信。俺の母親から」「お母様はご在宅です
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31.呉服屋の名にかけて

「神代さんも馬鹿ねぇ〜。何も分かってない !  って言うか、庭師を馬鹿にするなんて、職業差別どころか世間知らずよね ! 」 店はビルになっていて、三階の最上階に和装が山ほど置かれていた。「確かにピンキリの世界かもしれないけれど、松本先生を知らないなんて ! 樹木医の学者さんと施工の一流集団を引き連れた庭園のスペシャリスト ! 憧れるわ。 最も、わたしはその光景を着物に描かれたものを扱うわけだけど……あの庭のプリントでいいもの〜。鶴亀は飽き飽きしてるわ〜、ってのは冗談だけどね。 お祖母様は華道家でしょ ? 」「それは母方の祖母です。母が亡くなってからは付き合いが無くなりました……」「やだ。じゃあ、ニカちゃん華道家の血も継いでるのね !  神代さんとこは昔はお庭も広かったけど、佐喜男さんの代に変わってからは草むしりの一本も実習生がやるようになって。一体、何を教えてるのか。 だいたい、あの今一緒にいる実習生の方 ? あの女性はよくこの通りを昼間からプラプラしてるのよ。 ま、皆んな気にしてないようで目に付いちゃうのよね」 言いたいことを一頻り話すと、一際厳重に保管されていた桐箪笥から帯を取り出し手に取った着物へ合わせていく。 仁香は和装に詳しい方ではない。 しかし、その装いは素人目に見たとしても分かる。 闇より深い黒色に総刺繍で彩られた黒引き振袖。 色とりどりの刺繍で埋め尽くされた煌びやかさは下地の黒色を払拭するような強烈優美なインパクト。「す、凄い……。これ、着ていい物ですか ? 売り物じゃないんじゃ……」「大丈夫大丈夫 ! さぁ ! 着せるわよ〜っ ! 」 温かい。 この町の人間は温かい。 初めて仁香はそう感じた。 神代家に閉じ込められた生活では得られなかった人の温もりに、申し訳なさと嬉しさで涙を堪えるのが精一杯だった。 □□□
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32.堕ちた悪神

 現れた仁香に招待客は皆息を飲んだ。 一度は聞いたほとがある呉服屋の家宝の噂。 これがまさにそうなのだと確信した瞬間だった。 普段、和装に馴染みのない者も、男性も子供も、その刺繍の美しさに感嘆の声を漏らす。 何より垢抜けた顔つきの仁香の造作も決して引けを取らず、凛とした淑やかさがあった。「仁香さん、いいんじゃない ? 」 以前、酒を売った商店の中年女性が仁香の肩を叩く。「最高 ! 」 そこへスタッフがやってくる。「新婦さんですよね ? 急いでください、皆さんもう上がられてます」 仁香は慌てて会場へ入る。 既に功一も、佐喜男と友紀も、自分の席へついていた。 現れた仁香の服を見て友紀は忌々しそうに奥歯を鳴らしていた。 □□□ 始終功一は和かだった。 何より注がれた酒はぺろりと飲み干しなんでもない様子で招待客と話している。 進行役はなく、本当にただの食事会出会った。 高座に功一と仁香がいるだけ。 客人が入れ代わり立ち代わり挨拶に来るが、不機嫌な友紀を避け、皆が功一と仁香の元へ来る。 更に美千花の悪い噂によりその本人ときゅうり屋は村八分になっていた。 デザートが出る直前になった頃、一息ついた仁香が功一に話しかけた。「楽しそうですね。今はお父様 ? いえ、ルシウスよね ? 」 功一の中のルシウスはつまらなそうな顔で清酒を飲み干す。「全然楽しくはないね。父さんもバレたのか」「二人で功一さんの中に取り憑いて……一体どうするつもり ? 」「まぁいいじゃない。鬱陶しい家系の人間など俺が始末してやる。仁香、お前にとっても都合がいいだろう ?  見なよ。あの客人たち。今回の件で手のひら返しだ。笑える……笑えるよ ! 」 功一は愉快そうに会場を眺めていたが、ある一人を見据えると急に不機嫌そうに顔を背けた。「ちっ。
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33.仁香の父

食事会を終えてから、佐喜男は町民の一人から仁香の着物の事情をきくと、控えの自室で友紀を問い詰めていた。「おめぇ、仁香ちゃんに言ってなかったんか !? 」「言ったわよ ! 食事会のことも、事前に」「披露宴も兼ねるって、それも言ったのか ? 」「どうだったかしら。でも功一には伝えたし」「功一は忙しいんだぞ ? 」友紀は口を尖らせると佐喜男に向き直る。「だいたいね。これは正式な披露宴って訳じゃないし、気張ることないのよ。それに仁香さんの衣装は、本来新婚の二人が選ぶものじゃないの。そこを義母のわたしがしゃしゃり出て、これを着なさい、なんて言えるわけないでしょうに」「そういう問題じゃないだろ。とにかく……披露宴は後日改めるとかすればよかった……」旅館の一室。それなりに騒音の類は遮断出来るのだが、何やら廊下が騒がしい。二人が部屋を出て覗くと、すぐ隣の功一の部屋に、和装をした仁香が来ていた。「南川の旦那 ! 」誠治のそばに来た佐喜男に仁香が微笑む。「呉服屋さんが貸してくださったんです……」「んなっ !? 南の坊ちゃん、すまんなぁ。こっちの手違いでなぁ〜」心底気まずそうに誠治に手を合わせる佐喜男と、仁香の裾を持っている美雪にも頭を下げる。「本当にすまんかった。それにしても……凄いなこりゃあ  ! 」仁香の着物に目を見張る佐喜男に美雪が言う。「うちの家宝よ。凄いでしょう ? 」「こんな素晴らしいものを貸してくださって…… ! 」「そりゃあ、そうよ ! この仁香さんに下手な物を着せたくないもの。お祖母様は華道松木流、お父様は庭園スペシャリストの松本先生 ! 『和』に生きる者で知らない者はいないわよ ! あぁ、本当に ! そんな娘さんにうちの着
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34.若い二人同士で

「そろそろ振り納めかなぁ」 佐喜男がスコップを持って仁香に話しかけた。 あの会食からたった一日。 佐喜男と友紀はずっと仁香の様子を伺っていた。 顔色を見ながら話しかけてくる空気が続く。「そうですね。降らない日の方が多くなりましたね」「へ、へへ」 なんとも薄気味悪い手のひら返しだった。「あ〜。うん。もういいぞ。内職仕事もあるんだろ ? あとは俺がやっておくから」「あ、ありがとうございます」 仁香はスコップを手放すと、遠慮なく家に戻った。 真っ直ぐ祭壇へ向かう途中、自分と賢二の弁当を持った美千花とすれ違った。「仁香さん。わたしのこと噂するのやめてくれない ? 」「え ? 」「きゅうり屋さんに行くとか、仁香さんにしか言ってないし。仁香さんでしょ ? 噂立ててんの」「まさか ! 」「じゃあ誰なの ? 」 誰も何もこんな小さな町で派手に出歩いていたら噂好きの中高年はすぐに嗅ぎ分けるものだ。 故に仁香は薄々勘付いてはいたが、自分が言いふらしたら神代家の嫁として口の軽い悪印象を持たれるのを危惧していた。誰にも言わなかったし、何より今まで話す相手すらいなかったのだ。「わたし、美千花さんにそんなことしません。賢二くんの為にも、悪い噂なんか立てません」「ふーん。でも知ってたんだ」 それは子供を仁香や友紀に預け、その上出向く実習先をすっぽかしてきゅうり屋と出歩いてるとなれば、噂が立たないわけがないのだが。友紀は仁香には何も言わないが、佐喜男に愚痴を言っているのは聞いていた。友紀だって美千花を都合よく扱いたいが、子守りがしたい訳では無いのだ。「あんたも文句言うわけ ? 」 止まらない美千花の猛攻。 思い込みなのか、憂さ晴らしなのか。恐らく後者だろうが仁香は出そうになるため息を飲み込み、美千花に目を輝かせる。「文句なんか ! まさか !!  美千花さん ! 出会いって突然のものだし、上手くい
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35.馬宮の罠

 二階まで上がると、何やら近くで物音がする。 塁は早々、今朝はどこかに出かけて行った。「そういえば……」 前世の自分には姉奴隷がいた。 それが塁の前世であると領主は言っていた。 トン、コココ、コツコツ…… 祭壇の部屋からだ。 功一は出勤、友紀は自室。佐喜男は雪掻き、塁は外出中。 塁と話したかったところだが、どうもそれどころじゃないようだ。「大変 ! 」 大事な内職の預かり物をネズミにかじられる訳にはいかない。 あと半分は作業が残っているというのに。 ガララッ !! 「っえ !!?」 仁香の目の前に信じられない光景が広がっていた。 房のついた数珠の箱と、ラッピング用のセロハンの入った袋、更にはそれを詰める小箱の山。 それらを椅子の周りにセットし手が届く範囲に並べていたのだ。 それが一纏めになっている。「……どうして…… ? 」 仁香は混乱しながらもはっきりと確認した。 全ての作業が終了しているのだ。「領主はこんなことしない……でもルシウスはこんな事しないわ……。彼にわたしに対しての労りはないもの」 塁はここへ入れる唯一の男だが、流石にそこまで仁香を庇護していない。塁は祭壇の経緯は知っていても、前世の記憶は無いのだ。「誰がやってくれたの ? それとも見返りになにかさせたいの ? 」 仁香が祭壇へ声をかけた。 だが返答はなかった。 □□□ 夕刻、なんの説明もできないままだが、誠治が品物を取りに来た。「うん、綺麗に出来てる。じゃあ新しいもの、持ってきたから」 そういい、同等量の品物を置いていく。「数珠ってこんなに売れるんですね」
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36.共犯者

「会食に来ないからどうしたのかと思ってたら、警察沙汰になってたぁ !? 」「強盗が奪った物がなんなのかわからなかったんです。功一さんから直近の契約の流れを見てまさかと確認しましたら……」「功一 ! お前の先輩だったんだよな ? 」 功一の顔は仁香からは見えない。しかし、どこか功一は他人事のように「まぁ、そうだな」などとあやふやな返事を返すのみだ。「ひ、被害届は出しましたんで ! 」 竹田が佐喜男をなだめようとするが、収まらない 。無理もない。 太陽電設という感謝もダミー。馬宮という男の存在しか分からない状況だった。「そもそも権利書だけでは売買は成立しません ! 本人の同意書から身分証明書、印鑑証明、全てないと ! 」「俺、それを既に功一に渡してんだよ ! 」「えぇっ !!? 」 ここでようやく、竹田はそばで正座したまま呑気に出された茶を啜る功一を愕然と見上げた。「こ、功一くん…… ! つい先週のお客様だろ ? そんな急ぎ早で契約をするなんて…… ! 」「前の職場では契約はスピード命でしたし。 馬宮先輩もまともそうに見えたので、すっかり……。しかもまさか強盗に入るなんて」「強盗に入ったのが馬宮っての本人で契約に関するものをとりもどせればいいが、これが特殊詐欺だと流石に……細分化されて追いようがないかもしれません」「いや、冷静に考えて。ここの土地を買ったなら持ち主を辿ればいいだけだ。そこから遡ればいいだけで」 そこで竹田が疑わしい目で功一を見始めた。「お父さんの実印やらなんやら……なんで借りる必要あったんだ ? 書類だけで済むものを、なんでうちに持ってきた ? 」「最近多忙でしたので、スキマ時間にやろうかと」「それは通じないだろ 。 佐喜男さん、その土地。最近見に行かれましたか ? 」
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37.明地 美羽の訪問

 朝起きると何やら一階が騒がしい。 昨日と同じく、佐喜男が騒ぐ声。それともう一つ。 事務的な口調で話す男の声。「仁香さん……」 美千花が不安そうに仁香に寄ってきた。「犯人……。馬宮って人と身分証盗んだ人、見つかったんですって」「え ? じゃあ何に騒いでるの ? 」「相手が雇いのホームレスの方みたいで……。口座のお金、使いまくったとか」「え、でもそれは返すように警察のほうで……」「うーん。無理じゃない ? そうなると、あのホームレスに財産がないと。無いものはないって感じでさ。泣き寝入りコースだよ」「そんな……」 そのうち制服を着た警官に連れられ、佐喜男と友紀は署へ同行して行った。「わたしももう行かなきゃ。仁香さん、お弁当ありがとう。 行ってきまーす」「いってらっしゃい」 神代家から人が消える。「ほんとに一人になっちゃった……あ、違うか」 塁は自室にいるはずだ。「折角だけど美佳さんが来る前に内職は終わらせて置かないと」 茶菓子があるのを確認したあと祭壇の部屋へと戻る。「え ?! 」 端に寄せてあった段ボールの山が動いていた。 荒らされたと言うよりは、並べられた感じで、仁香は恐る恐る箱の中身を確認した。「…… !? 」 終わっている。 すべての作業、一週間分の中身のセロハンの包みから箱詰めまですべてが済んでいた。「……」 思わず祭壇を見上げる。 昨晩、この部屋に来てから、トイレと入浴以外は空けていないのだ。 神がかり的力でもない限りは無理な作業量だ。 領主の男はそんなことはしないだろう。
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38.領土の最後

「ルシウス様、大丈夫なのですか ? 」「ルシウス様 !! 」  庭にいた女たちが屋敷から出てきたルシウスに群がった。ルシウスはすっかり血に塗れたシャツを脱ぎ捨て、普段は袖を通さない法衣に身を包んでいた。「ルシウス様、太陽神に選ばれたと聞きました。おめでとうございます。 ところで。その……ミレアという私の友人を見掛けませんでしたか?」「ああ、君は確かいつも彼女とペアを組んでいた娘だね。 これから行くところにいるはずさ。一緒に来るかい?」「はい ! お邪魔でなければ」 他の奴隷たちの羨む視線を振り切り二人は門を出る。「あの、ミレアは敷地の外には行かないと思いますが」「君は知ってるんだろ ? ミレアはアスターといるよ 」「そうですよね。ルシウス様にはバレちゃいますよね」「君、名前は ? 」「エリーです」「そうか。エリー。さあ、あの丘の上だ」 ルシウスはすぐ門から出て岸壁沿いにある小さな遺跡を指した。 海から吹き上がる潮風で風化した、形の崩れた物だ。背丈ほどある大きなリング状の祭壇だったが、崩落してからは太陽神の祀りは街中で行われるようになった。 街中で太陽神を民衆が拝むのとは違い、まさにここは本殿だ。 岸壁からは広大なコバルトブルーの海が見え、大きな夕日が沈む直前だった。「太陽神の遺跡……」 エリーは辺りを見渡すと不思議そうにルシウスを見上げた。「二人はどこに?」 ルシウスもまたエリーを見下ろした。 ボロを着ていてもしっかり結ばれた服の袖、まとめられた髪。そしてその表情は無邪気さはなく、明らかにルシウスに警戒心を顕にしていた。「大人しくしていろ」 突然、笑みの消えたルシウスにエリーは素早く反応した。 ガギィ!!「クソッ ! 何様のつもりだ !? 」 エリーは隠し持っていた鉄の棒で、ルシウ
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39.ミレアのペアの姉奴隷の姿

「では二階に」 仁香が美羽を誘導しようとすると、美羽がスッと片手を上げて制する。「ごめんなさい。暫く無言になるわね。 あと、美佳はどっか行ってて」「もう。ごめんね。じゃあわたしこっちにいていい ? 」 そう言い美佳はリビングの窓辺の椅子を指した。「はい。大丈夫。あ、よかったらカウンターのお菓子でも」「ありがと♡」 仁香が振り返った頃には既に美羽は階段下からジッと一点を見上げるように固まっていた。「……ああ、そう。じゃあいいけれど」 何やら独り言を呟き仁香へ向き直る。「こういうのってさ。抜き打ちで来ないとバレちゃうんだよね」「でも、誰にも言ってないのに…… ? 」「昨日、電話は部屋でしたんでしょう ? 」 確かに連絡を取ったときは寝室にいた。「あの時、功一さんも一緒にいたわ。寝てたけど……それは大丈夫ですか ? 」「それはその子がどうにかしてくれたみたい」 そう言い、仁香の足元を美羽がいう。しかし、仁香には何も見えないのだ。「多分、たぬきかなぁ…… ? 野生動物を保護した事無い ? 」 仁香には確かに覚えがあった。「父親の仕事の関係で。たぬき……引き取ったことがあります。 凄い。どうして分かるんですか ? 」 仁香の質問に美羽は難しそうな顔をして語った。「この子はずっと仁香さんに憑いてた良い子なんだけど、あの祭壇をきっかけに力をつけたのね。物音を聞いたことない ? 足音とか」「そういえば、祭壇を見つけた日も物音が……昨日も」「今回の事は無責任に聞こえるかもしれないけど、前世の関わりの中で今世で回避できなかったイベントみたいなものなの。深く落ち込まないで」「はい……」
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