【マスター、システム判定によりミッション失敗が確認されました。攻略に失敗したため、これより抹消処理を実行します】システムの声で、物陰から結婚式を盗み見ていた私――西園寺莉緒(さいおんじ りお)は我に返った。礼拝堂の中では、一条遥真(いちじょう はるま)と七瀬眞白(ななせ ましろ)が見つめ合って笑い、参列者たちの祝福の拍手に包まれながら口づけを交わしていた。これが、システムが私に用意してくれた最後のチャンスだった。けれど今となっては、それも失敗に終わったらしい。かつて私は、三歳児の体に入り込み、システムと契約を交わした。二十年以内に三人の攻略対象のうち誰か一人でも攻略できれば、元の世界へ戻れるという契約だった。けれど、二十年が過ぎた今、攻略できた相手は一人もいない。もしかすると、これがいちばんいい結末なのかもしれない。私はその場を離れ、大通りにかかる歩道橋へ向かった。システムの話では、攻略ミッションに失敗した場合、まず上位システムへ状況を報告し、それから私を抹消するらしい。橋の下を流れていく車を見下ろしていると、この二十年のあいだ、三人の攻略対象が私に向けてきた冷たい目ばかりが思い出された。彼らは皆、同じ一人の女――眞白のために、私へ容赦ない言葉を浴びせた。彼女は、この攻略世界で誰からも愛されるヒロインだ。彼女にはヒロイン補正があるから、攻略対象たちはどうしても彼女に惹かれてしまうのだと、システムは私を慰めていた。私は曇り空を見上げた。私はこの世界に迷い込んだ異物で、ヒロインを引き立てるための悪役令嬢。だから、こんな結末を迎えるしかなかったのだろうか。もういい。ここまで来て考えたところで、何も変わらない。どうせ私は死ぬのだから。私はふらふらと車道へ出た。誰にも気づかれないまま抹消されるくらいなら、いっそ無惨な死体を彼らに見せつけてやりたい。どれほど私を嫌っていても、最後くらいは、私を葬るしかなくなるはずだ。次の瞬間、耳をつんざくようなブレーキ音が響いた。聞き慣れた荒々しい声が飛んでくる。「莉緒、死ぬなら人目のないところで勝手に死ね。こんな場所で醜態をさらすな」顔を上げると、そこにいたのは西園寺蓮也(さいおんじ れんや)だった。この世界で、私の異父兄にあたる人だ。
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