三國京介(みくに きょうすけ)の「子供が生まれたら結婚しよう」という言葉のせいで、私、堂本檸檬(どうもと れもん)は散々な目に遭った。お産直前には大出血をして、三途の川を渡りかけた末、やっと三國家の長男を生んだのだ。それなのに、息子のお宮参りのその日、京介は初恋相手、田中琳子(たなか りんこ)の手を掴んで掲げ、集まった人たちの前でこう言った。「皆様、琳子と僕の息子のお宮参りにご参加いただき誠にありがとうございます」私は階段口で立ち尽くしていた。京介は私を見ると笑いながらやってきた。「遅かれ早かれ話さなければならなかった。それなら子供がまだ幼いうちにお前と決着をつけた方がいい」京介は私に向かって杯を挙げた。彼の口調はまるでビジネスの商談をしているかのようだった。「お前は婚前妊娠したのだから、ここにいる人は皆、お前を軽蔑する。俺の両親だってお前とは面識がないのだから、お前は俺にすがる他ない。安心してくれ。息子はお前に育ててもらう。でも明日、お前には一緒に出生届を出しに行ってもらわなければならない。息子の親権は必ず琳子に渡してもらう」京介は私が泣き崩れるか、子供のために泣き寝入りすると思っていた。けれど私はただ静かにその場を離れ、帰国したばかりの三國家の当主、京介の父親と連絡を取った。数日後、私は息子、三國浩輝(みくに こうき)と共に三國家に籍をいれた。それ以来、私は京介の義母、息子は京介の弟となった。息子の親権は全部私が持つ。そして、将来の三國家の相続権も私に帰属することとなったのだ。/その日の午後、京介が家に帰ってきた。私はすぐさま下に降りると、家政婦の懐で眠っている息子をみつめた。家政婦は戸惑いながらまず京介の顔色を窺い、彼がうなずくと、私に子供を渡した。もやもやしていた心がようやく落ち着いた。少なくとも京介はまだ息子を私に抱かせてはくれるのだ。「京介の勝ちね」田中琳子は、出し抜けにこう言うと、吹き出しながら続けた。「私たちは賭けをしていたの。 私は『堂本家のお嬢様であるあなたは、愛する人が別の女性と結ばれることを受け入れられず、怒りのあまり京介のもとを去って行くにちがいない』と言った。けれど京介は 『あいつは俺のことを命がけで愛している。たとえ俺が10人、20人もの女性
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