車が都心部へと入った時、澪は自分が3年間も帰ってきていなかったことを改めて実感した。車窓を流れる高層ビル群、見知らぬ顔ぶれに変わった巨大な広告看板、立ち並ぶ街路樹でさえ、記憶よりずっと高く成長していた。潤は道中、ずっと電話で連絡を取り合っていた。通話を終えると、彼は澪の方を向いて言った。「まずはホテルに荷物を置こう。夜に会わせたい人間がいるんだ」「誰?」「父の昔からの部下なんだけど、今も会社のために奮闘してくれている。現状を詳しく聞き出しておかなければならないからさ」澪は頷き、それ以上は聞かなかった。夜8時、潤は澪を連れて個室がある料亭へと向かった。個室に入ると、50代半ばくらいの男性が座っていた。白髪交じりの頭に眼鏡をかけたその男は、潤が入ってくるなり、すぐに目を赤くする。「潤くん……」「小林さん」潤は歩み寄り、小林慎也(こばやし しんや)の手を固く握った。「戻りました」慎也は潤の肩を力強く叩き、しばらくの間、言葉を発することができなかった。澪は静かにその後ろに控えていた。二人が席に着くと、慎也が澪の存在に気づいた。「こちらの方は……」「弁護士の白川澪さんです」潤が紹介する。「翠川町での3年間、澪さんにはずっと助けてもらっていたんです」慎也は澪に視線を向け、深く頷いた。「白川先生もどうぞお掛けください」3人が席に着くと、慎也が本題へと切り出した。「潤くんが去った後、会社の状況は悪化の一途を辿っています」慎也が重い溜息をつく。「実は、植田家の連中が必要以上に圧力をかけてきていまして……まずは大口のクライアントを2社奪われ、さらには株主総会で『前社長の死後、会社を牽引できる人材がいない』と糾弾し、取締役会の再編を要求してきたのです」植田家?湯呑みを握る澪の手が、ピクリと止まった。「現在、彼らはどれほどの株式を握っているんですか?」と潤が聞いた。「23パーセントです」慎也が答える。「それに、彼らの息のかかった株主を合わせれば、30パーセント強にはなるかと思います。こちら側には、社長が潤くんに残した35パーセントの株があるのですが、その中の一部は従業員持株会が保有しているため、今の社内の混乱に乗じて、すでに植田家と接触を図っている者もいるようです」潤は数秒沈黙した。「植田家
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