佳苗はスマートフォンを握ったまま、しばらく動けなかった。 絢子に送ったメッセージに、夫の直哉が返事をしてきた。 しかも、直前まで表示されていた絢子からの返信は、すべて取り消されている。「佳苗?」 隣にいた雄吾が、映画を一時停止した。「どうした?」「……これ、見て」 佳苗がスマートフォンを差し出すと、雄吾は画面を覗き込んだ。『佳苗さん、妻がいつもお世話になっています。久世直哉です』『ところで、絢子に何かご用でしょうか?』 雄吾の表情が険しくなった。「久世が絢子の携帯を使ってるのか」「うん。さっきまで絢子さんから返事が来てたの。でも、急に取り消されて……」「何て書いてあった?」「元気にしてるって。それから、直哉さんが交友関係を気にするから、しばらく連絡を控えてほしいって」 雄吾は黙って画面を見つめた。「……返事はするな」「でも、何か答えないと不自然じゃない?」「今はいい。向こうが何を言ってくるか分からん」 佳苗は頷いたものの、落ち着かなかった。 絢子は今、直哉の隣にいるのだろうか。 自分が送ったメッセージのせいで、責められているのではないだろうか。 そんなことを考えていると、再び通知が鳴った。『絢子は結婚したばかりで、まだ新しい生活に慣れていないんです。昔のお友達とのお付き合いも大切ですが、今は夫婦の時間を優先させたいと思っていましてね』 丁寧な文章だった。 けれど、佳苗にはまるで、絢子に近づくなと言われているように感じられた。「……私、絢子さんに迷惑をかけちゃったのかな」「佳苗が悪いわけじゃない」「でも、連絡しなければ……」「絢子が自分で返事をしたんだろ。久世がそれを
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