Todos los capítulos de 夫の子を産まされ、妹の身代わりとして死んだ私――今世では冷徹CEOに執着されています: Capítulo 461 - Capítulo 470

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新しい上司

 月曜日の朝、佳苗が出社すると、部署内がいつもより少し騒がしかった。「今日から新しい課長が来るんですよね」 隣の席の同僚が、パソコンを立ち上げながら話しかけてきた。「そういえば、今日でしたね」「本社から来るらしいですよ。結構仕事ができる人だとか」 佳苗も異動の話は聞いていたが、詳しいことまでは知らなかった。 ほどなくして朝礼が始まり、部長が一人の男性を連れてきた。「本日付で着任した高瀬課長です」「高瀬です。よろしくお願いします」 三十代後半くらいだろうか。すらりと背が高く、落ち着いた雰囲気の男性だった。 高瀬は簡単に自己紹介を済ませると、部署全体を見渡した。「まずは皆さんの仕事を把握したいと思っています。今までのやり方を急に変えるつもりはありませんので、いろいろ教えてください」 穏やかな口調だった。 もっとも、新しい上司がどんな人物なのかは、一緒に仕事をしてみなければ分からない。 佳苗はそう考えながら、自分の席へ戻った。     ◇ 午前中、高瀬は部署内を回り、担当者から業務内容の説明を受けていた。 佳苗の順番が来たのは、昼休みの少し前だった。「榊原さんは、請求書の照合と契約関係の事務を担当されているんですね」「はい。ほかに月次の集計資料も作成しています」「少し見せてもらってもいいですか?」「もちろんです」 佳苗は管理している資料を開き、処理の流れを説明した。 高瀬は途中で何度か質問したものの、話を遮ることなく最後まで聞いていた。「なるほど。こちらの確認表も榊原さんが?」「はい。以前、発注金額と請求金額に食い違いがあったので、確認項目を追加しました」「ああ、その件は引き継ぎ資料にもありました。十万円の差額を発見されたんですよね」「そうです」「これなら担当者が変わっても確認できますね。よく整理されていると思います」
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仕事が楽しい

 新しい課長が赴任してから、一週間が経った。 高瀬は、佳苗が最初に受けた印象の通り、仕事のできる上司だった。 何かを変更するときには必ず担当者に理由を説明し、現場の意見も聞く。分からないことがあれば、役職に関係なく質問する。 何より佳苗がありがたかったのは、仕事を任せるときに、その目的まで説明してくれることだった。「榊原さん、少しいいですか?」「はい」 高瀬に呼ばれ、佳苗は資料を持って席を立った。「先日話していた、請求処理の確認方法についてなんですが」「あ、はい。何か問題がありましたか?」「いえ。むしろ、ほかの部署でも使えそうだと思いまして」 高瀬はパソコンの画面を示した。「こちらの部署では、同じ項目を毎月手作業で照合しているんです。榊原さんの確認表を応用できませんか?」 佳苗は画面を覗き込んだ。「できると思います。ただ、こちらは契約の種類によって確認項目が変わるので、そのまま使うのは難しいかもしれません」「なるほど。では、一度担当者と打ち合わせをしましょう」「私も参加していいんですか?」「もちろん。作った本人がいないと話が進まないでしょう」 高瀬は当然のように答えた。 佳苗は思わず笑顔になった。「ありがとうございます!」     ◇ 昼休み。「榊原さん、最近忙しそうですね」 同僚に声をかけられ、佳苗は弁当を開きながら頷いた。「ちょっと新しい仕事が増えそうで」「高瀬課長から?」「そう。ほかの部署の業務改善にも参加させてもらえるみたい」「すごいじゃないですか!」「まだ何も決まってないけどね」 そう答えながらも、佳苗は嬉しかった。 以前は、言われた仕事を間違えずに終わらせることばかり考えていた。 けれど今は、自分の工夫が別の仕事にも役立つかもしれない。 それが楽
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気に入らない

 翌日の打ち合わせは、佳苗が思っていた以上に順調に進んだ。 別部署の担当者から実際の処理方法を聞き、どこを共通化できるのかを整理する。「この項目だけ、契約ごとに分けた方がいいと思います」 佳苗が資料を指すと、高瀬が頷いた。「理由は?」「ここまで共通化すると、例外処理のときにかえって確認が増えるので。入力する人にも分かりにくくなると思います」「確かに。では、そこは残しましょう」 あっさり採用されて、佳苗は少し驚いた。 以前なら、自分はただ指示されたものを作る側だった。 今は違う。 自分の意見を聞かれ、それが実際の仕事に反映されている。「榊原さん、この部分のたたき台をお願いできますか?」「はい!」「急がなくて大丈夫です。通常業務を優先してください」「分かりました」 打ち合わせを終えて席へ戻る途中、佳苗は自然と笑っていた。 もっとできることを増やしたい。 そんなふうに仕事について思ったのは、初めてかもしれなかった。     ◇ 結局、その日は予定より三十分ほど遅くなった。 マンションへ帰ると、雄吾はすでにリビングにいた。「ただいま」「おかえり」「今日の打ち合わせ、すごくうまくいったよ」 靴を脱ぎながら話し始めると、雄吾がこちらを見る。「例のやつか?」「そう。私が言った案、そのまま採用してもらえたの」「よかったな」「うん。高瀬課長がちゃんと理由まで聞いてくれて――」 そこで、雄吾の眉がわずかに動いた。「また高瀬か」「え?」「いや」 佳苗は首を傾げた。「何?」「お前、最近そいつの話ばかりしてないか?」「そうかな?」「してる」 妙に即答されて、佳苗は記憶を辿った。「新しい課長なんだから、仕事の話をしたら出てくるでしょう?」「それは分かってる」「じゃあ何?」 雄吾はしばらく黙った。 佳苗が不思議そうに見ていると、やがて視線を逸らす。「……気に入らないだけだ」「何が?」「お前が毎日、ほかの男に褒められたって嬉しそうに帰ってくるのが」「え」 佳苗は目を瞬いた。 意味を理解するまで、少し時間がかかった。「もしかして、嫉妬してる?」「悪いか?」「……本当に?」「なんでそこで驚くんだ」「だって、仕事だよ?」「分かってる」「高瀬課長は上司だし」「それも分かってる」「私、仕事の
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夫の機嫌

 雄吾が嫉妬している。 一度そう分かってしまうと、佳苗には以前まで気づかなかったことまで見えるようになった。「今日、少し遅くなるから」 朝、出かける前にそう告げると、雄吾が時計を見た。「何時くらいだ?」「七時半くらいかな」「また打ち合わせ?」「うん」「高瀬もいるのか?」 佳苗は思わず雄吾を見る。「いるけど」「そうか」 それだけ言って、雄吾はコーヒーを飲む。 別に止められたわけではない。 嫌な顔をされたわけでもない。 けれど、今の質問が必要だったのかと考えれば、たぶん必要ではない。「気になるの?」「何が?」「高瀬課長」「別に」「昨日は気に入らないって言ってたのに?」「気に入らないのと、気になるのは違う」「同じじゃない?」「違う」 きっぱり言い切られて、佳苗は笑った。「じゃあ、行ってきます」「ああ。遅くなるなら連絡しろ」「分かってる」 玄関を出る直前、振り返る。「雄吾」「何だ?」「ちゃんと帰ってくるからね」「当たり前だろ」 そう答えた雄吾の機嫌が、ほんの少しだけ直った気がした。     ◇ その日の帰宅は、予定より早かった。「ただいま」「おかえり」 雄吾はソファに座っていた。 佳苗は時計を見る。「七時前だ」「見れば分かる」「思ったより早く終わったの」「そうか」 相変わらず素っ気ない。 けれど、テーブルには佳苗の分の夕食が用意されていた。「待ってた?」「飯はまだ食ってない」「それ、待ってたって言うんじゃない?」
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予定を空けて

 金曜日の夜。 佳苗が帰宅すると、雄吾はダイニングテーブルでスマートフォンを見ていた。「ただいま」「おかえり」「今日は早いね」「佳苗よりはな」 最近は仕事が少し忙しく、佳苗の帰宅が雄吾より遅くなる日も増えていた。 とはいえ今日は七時を少し回った程度だ。「ご飯、どうする?」「その前に、来週の土曜空いてるか?」「来週?」 佳苗はバッグからスマートフォンを取り出し、予定を確認した。「空いてるよ。何かあるの?」「じゃあ空けといてくれ」「だから、何?」「出かける」「どこに?」「まだ言わない」「ええ?」 佳苗が怪訝な顔をすると、雄吾は平然としている。「朝から?」「昼前でいい」「服は?」「普通でいい。歩きにくい靴だけやめとけ」 そこまで聞いても、まるで分からない。「なんで急に?」「出かけたいから」「それだけ?」「ああ」 佳苗はじっと雄吾を見た。 昨日までそんな話は一度もしていなかった。「……もしかして」「何だ?」「私が最近、仕事ばっかりだから?」 雄吾の視線が一瞬だけ逸れた。 佳苗は思わず笑う。「やっぱり!」「何がやっぱりなんだ」「雄吾、私と出かけたくなったんでしょう?」「夫婦なんだから普通だろ」「そうだけど」 否定しないところが、かえっておかしい。 佳苗は雄吾の向かいに座った。「別に予定を作らなくても、毎日会ってるよ?」「家で飯食って寝るだけなのと、出かけるのは違う」「それはそうだけど」「最近、休みの日もお前が仕事の話ばか
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デートの日

 土曜日。 佳苗は朝から、何を着ていくかで少し迷っていた。 雄吾から聞いているのは、昼前に出ることと、あまり歩きにくい靴はやめておけということだけだ。「これなら大丈夫かな」 結局、きれいめのワンピースに小さなバッグを合わせた。 部屋を出ると、待っていた雄吾が佳苗を見る。「それで行くのか?」「うん。変?」「いや。似合ってる」「じゃあいいけど……本当にどこに行くの?」「着けば分かる」 今日まで行き先を教える気はないらしい。     ◇ 車を降りた佳苗は、目の前のホテルを見上げた。「……ここ?」「ああ」 都心でも名の知られた高級ホテルだった。 エントランスを抜けた先には広々としたロビーがあり、大きな花が飾られている。 周囲を行き交う客も、どこか余裕のある雰囲気だ。「雄吾」「何だ?」「普通の服でいいって言ったよね?」「普通だろ」「私にとっては普通だけど!」 思わず自分のワンピースを見下ろす。 別に浮いてはいない。周囲にも同じような服装の女性はいる。 それでも、先にこのホテルだと知っていたら、もう少し悩んでいたと思う。「似合ってるから問題ない」「そういう問題じゃないんだけど……」「行くぞ」 雄吾はまったく気にした様子もなく歩き出した。 案内されたのは、上階のラウンジだった。 窓際の席から街を一望できる。「もしかして、ここでご飯?」「アフタヌーンティー」「えっ」 佳苗はメニューを開き、並んでいる写真に目を輝かせた。 季節の果物を使ったケーキやタルト、小さなサンドイッチ。 可愛い。
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今度は私が

 アフタヌーンティーから数日後。 佳苗は昼休みにスマートフォンを眺めながら、ひとりで悩んでいた。 次は自分がデート先を決める。 そう宣言したものの、いざ探し始めるとなかなか難しい。 雄吾なら、大抵の店には行ったことがありそうだ。高級な場所を選んでも、先日のホテルには敵わない気がする。「何見てるんですか?」 同僚に声をかけられ、佳苗は慌てて画面を伏せた。「今度、夫と出かけようと思って」「デートですか?」「まあ……そう」「いいですね。榊原さん、最近忙しかったですもんね」 言われて、佳苗は少しだけ笑った。 自分ではそれほど意識していなかったが、仕事に夢中になっていたのは周囲にも分かっていたらしい。 だからこそ、今度は自分から雄吾を誘いたかった。     ◇ その日の夕方、高瀬に呼び止められた。「榊原さん」「はい」「この前の件、来週から試験的に始めることになりました」「本当ですか?」「ええ。しばらく確認をお願いすることになると思います」「分かりました」 自分が関わったものが実際に使われる。 嬉しくて、佳苗は自然と笑顔になった。「ありがとうございます」「こちらこそ。助かりました」 短いやり取りを終えて席へ戻る。 以前なら、この嬉しさをそのまま家へ持ち帰って、真っ先に雄吾へ話していただろう。 もちろん今日も話したい。 けれど――。「……また高瀬課長の話になるな」 小さく呟いて、佳苗は笑った。 雄吾の顔が簡単に想像できてしまう。     ◇「ただいま」「おかえり」 帰宅すると、雄吾は先に帰っていた。「雄吾、今度の日曜って空いてる?」
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佳苗のデートプラン

 日曜日。「今日は私についてきてね」 玄関でそう宣言すると、雄吾が靴を履きながら佳苗を見る。「随分自信ありそうだな」「いっぱい調べたから」「期待していいのか?」「もちろん」 そう言い切ったものの、実は少しだけ緊張していた。 雄吾が連れていってくれた高級ホテルのような豪華さはない。 佳苗が選んだのは、少し離れた街にある大きな水族館だった。 休日らしいことをして、一緒にのんびり遊びたい。 ただそれだけで選んだ場所だ。「水族館か」 到着した雄吾が建物を見上げる。「どう?」「いいんじゃないか」「その反応、薄くない?」「まだ入ってないだろ」「そうだけど」 少し不満に思いながら中へ入ったものの、十分もしないうちに佳苗のほうが夢中になっていた。「雄吾、見て。あれすごい」「見てる」「大きい!」「佳苗」「何?」「さっきから俺より魚しか見てないぞ」 振り向くと、雄吾が呆れた顔をしていた。「水族館なんだから魚を見るでしょう?」「俺とのデートじゃなかったのか?」「雄吾も一緒に見ればいいじゃない」 佳苗は笑いながら雄吾の腕を引いた。 大きな水槽の前では、青い光の中を魚の群れがゆっくり横切っていく。 しばらく並んで眺めていると、雄吾がふいに佳苗の手を握った。「どうしたの?」「別に」「はぐれないよ?」「知ってる」 それでも離すつもりはないらしい。 佳苗もそのまま指を絡めた。 館内を一通り回ったあと、ショップへ立ち寄る。「これ、可愛い」 佳苗が手に取ったのは、小さなペンギンのぬいぐるみだった。「欲しいのか?」「見るだ
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次の約束

 水族館から帰った翌日。 佳苗は昼休みにスマートフォンを開き、昨日撮った写真を見返していた。 大きな水槽、ペンギン、色鮮やかな魚。 その中に一枚だけ、雄吾の写真がある。 佳苗が何気なく撮ったもので、雄吾は水槽の前でこちらを見ていた。「榊原さん、楽しそうですね」 声をかけられて顔を上げると、高瀬が近くに立っていた。「あ、お疲れさまです」「昨日どこか行ったんですか?」「夫と水族館に行ってきました」「いいですね。休日らしい」「はい。久しぶりに一日遊びました」 答えながら、佳苗は自然と笑っていた。「じゃあ、午後もよろしくお願いします」「はい」 それだけで高瀬は離れていく。 佳苗は再び画面へ目を落とした。 少し前なら、家に帰ってから雄吾に「高瀬課長に水族館のこと聞かれたよ」と報告していたかもしれない。 けれど、さすがにこれは言わなくてもいいだろう。 別に隠すことでもない。 単に、雄吾をからかうためだけに高瀬の名前を出すのは、そろそろやめようと思った。     ◇ その夜。「雄吾、これ」 夕食のあと、佳苗は昨日買ったペンを指した。 雄吾の胸ポケットに挿さっている。「今日使ったの?」「ああ」「本当に会社に持っていったんだ」「使うって言っただろ」「そうだけど」 佳苗はなんとなく嬉しくなって、そのペンを眺めた。「会社の人に何か言われなかった?」「部下に珍しいって言われた」「何て答えたの?」「妻にもらったって」「……普通に言ったんだ」「隠す理由がないだろ」 雄吾にとっては当たり前らしい。 佳苗は少し照れながら、隣へ座った。「そういえば、次のデートは?」「もう考えてる」「早い!」「お前が楽しみにしてるって言ったからな」「どこ?」「まだ決めてない」「考えてるだけ?」「ああ」 雄吾はスマートフォンを取り出した。「泊まりでもいいか?」「え?」「次の土日。予定は?」 突然話の規模が大きくなった。「ちょっと待って」 佳苗も予定表を確認する。「今のところ何もないけど……旅行するの?」「近場で一泊くらいならいいだろ」「いいけど、急だね」「最近、まともに二人で出かけてなかったからな」 その言葉に、佳苗は少し考えた。 確かに結婚してから、生活そのものはずっと一緒にある。 朝起きて、仕
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ふたりきりの週末

 旅行の日は、思ったより早くやってきた。 土曜日の朝、佳苗は小さな旅行バッグを持って玄関へ向かった。「これくらいでいいかな」「一泊だろ。十分だ」「忘れ物しても知らないよ?」「現地で買えばいい」「雄吾はそう言うと思った」 結局、行き先を決めたのは雄吾だった。 都心から車で二時間ほど。山あいにある温泉地だという。「宿は?」「着いてからのお楽しみ」「またそれ?」「部屋に露天風呂があるところ、って希望は聞いた」「じゃあ期待していいんだ」「ああ」 助手席に座りながら、佳苗は笑った。     ◇ 途中で昼食を取り、温泉街へ着いたのは午後三時前だった。 車窓から古い旅館や土産物店が見える。「あとで歩きたい」「いいぞ」「温泉まんじゅうも食べたい」「夕飯食えなくなるぞ」「一個くらい平気」 そんな話をしているうちに、車が一軒の旅館へ入っていく。 派手ではないが、門をくぐった先には手入れされた庭が広がっていた。「ここ?」「ああ」 案内された部屋へ入った佳苗は、思わず足を止めた。 広い和洋室の向こうに、小さな庭と露天風呂が見える。「すごい……」「気に入ったか?」「うん。でも、これ絶対高いでしょう」「また値段を気にしてるのか」「するよ」「俺が泊まりたくて選んだんだからいいだろ」 そう言われてしまえば、それ以上は何も言えない。 佳苗は窓際まで歩き、外を覗いた。「本当に二人だけで入れるんだ」「そのための部屋風呂だろ」「そうだけど」 そこでようやく、自分の言葉の意味に気づいた。 夫婦なのだから、別におかし
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