それでも晴臣は諦めなかった。彼はついに、知人の協力のもとで詩音の行方を掴んだ。彼女は退院当日、官舎の近くで黒い車に乗ったのを目撃されていたそうだ。その車は特殊なナンバーをつけており、市街地を出たところで痕跡が途絶えた。特殊なナンバー。アクセス制限。晴臣の胸の中に、不吉な予感が深く澱む。彼は職務の権限を利用し、本来扱えないはずの機密データまで引き出して、車の行方を追跡しようとした。警告音が鳴り響いたのは、まさにその時だった。西区の特別管理区間の近くまで特定して、ほんのわずかな手がかりに触れた直後、晴臣のオフィスに誰かが飛び込んできた。やってきたのは、私服の冷徹な男たちと、晴臣の上司、そして監査部の面々だった。「佐伯隊長。あなたは特別保護情報に無断でアクセスしたため、事情聴取を行います。ご同行願います」尋問室の明かりは、突き刺すように白くまぶしい。晴臣は固い椅子に腰を下ろすと、向かい側には、冷徹な視線を向ける監査当局の人間が揃っていた。「佐伯隊長。なぜ規定を破り、特別保護情報の追跡を試みたんだ?誰の指示でそうしたんだ?目的はなんだ?」晴臣は背筋をまっすぐに伸ばした。青白い髭が伸び、頬はこけていたが、瞳の奥の執着は誰にも消せない。「誰かの指示を受けたからではありません。ただ、妻の詩音を探していただけです。妻は失踪しました。とある車に乗せられたからです。なんとしても、見つけ出さねばなりません」「『詩音』だと?」監査当局の人は視線を交わし、資料をめくった後、冷ややかに告げた。「君の妻の情報は現在トップレベルのアクセス制限がかかっている。それに、相手は失踪などしていない。すべては彼女自身の意志で行っている。君の行為はすでに組織の規則を乱しているんだ。態度を改め、真実を答えろ!」自分の意志でそうした。その言葉が、鋭利なナイフのように晴臣の心臓をえぐった。彼は跳ね起き、赤く充血した目で叫んだ。「どこにいるんですか?妻に会わせてください!一度だけでいいです!ちゃんと話し合いたいんです!」「佐伯!」晴臣の上司が怒りにまかせてデスクを叩く。「いい加減にしろ!情けない姿を見せるな!自己都合で、職務を濫用し、規律を破り、これまで培ってきたすべてをなげうつというのか!?失望したよ!」晴臣は上司を見つめ、大粒
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