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16話:双刃の魔剣士

last update 公開日: 2026-06-12 22:04:16

 ギルド本部でニーナから強引に押し付けられた緊急クエスト。

 人助けをする気など毛頭ない。

 けれど、護衛対象である『ロドリゲス子爵』の名は、後々私がこの国で自由な王女としての権利を保ち、優雅に暮らすための『駒』として、非常に魅力的な利権を含んでいた。

 彼は表舞台では大人しい保守派の老人だが、裏では王都の隠密な物流ルートを牛耳っている。

 彼を恩義で縛り、その強力な経済基盤を味方につけておけば、他の兄姉たちの派閥に理不尽に権利を脅かされることなく、私の自由を担保する絶好の政治的カードになるのだ。

 すべては、私自身の自己都合のために。

 ——けれど、私の気分は少しばかり波立っていた。

 先ほど、去り際のリヒトの態度が妙に私の中をざわつかせる。

 一人でうろうろするなって? 何様のつもりよ……、実力だって私の方が上、そもそも異世界に来たばかりで右も左もわからないアイツに心配される道理なんて——。

(心配、されて、たのよね……なのに、なんで私イライラして? っ、そもそも!アイツが私を心配する必要もないし、烏滸がましいわ!! これも『刻印』のバグね、きっと)

 他人と深く関わるつもりも、
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     ギルド本部でニーナから強引に押し付けられた緊急クエスト。 人助けをする気など毛頭ない。 けれど、護衛対象である『ロドリゲス子爵』の名は、後々私がこの国で自由な王女としての権利を保ち、優雅に暮らすための『駒』として、非常に魅力的な利権を含んでいた。 彼は表舞台では大人しい保守派の老人だが、裏では王都の隠密な物流ルートを牛耳っている。 彼を恩義で縛り、その強力な経済基盤を味方につけておけば、他の兄姉たちの派閥に理不尽に権利を脅かされることなく、私の自由を担保する絶好の政治的カードになるのだ。 すべては、私自身の自己都合のために。 ——けれど、私の気分は少しばかり波立っていた。 先ほど、去り際のリヒトの態度が妙に私の中をざわつかせる。 一人でうろうろするなって? 何様のつもりよ……、実力だって私の方が上、そもそも異世界に来たばかりで右も左もわからないアイツに心配される道理なんて——。(心配、されて、たのよね……なのに、なんで私イライラして? っ、そもそも!アイツが私を心配する必要もないし、烏滸がましいわ!! これも『刻印』のバグね、きっと) 他人と深く関わるつもりも、内面を踏み荒らされるつもりもないのに、あの言葉が妙に胸の奥でざわついて離れない。 私の調子を狂わせてばかりの男に対する、割り切れない不機嫌さが胸の奥で燻っていた。 *** 数時間後。私は見知った貴族相手という事もあり、顔を隠す仮面と外套を纏い、高ランク冒険者『サクラ』として依頼主であるロドリゲス子爵の前に姿を現した。 彼との間で正式な挨拶と任務の確認を事務的に済ませると、私は「姿を隠して周囲を警戒する」というサクラとしての警護方針を告げ、老子爵の承諾を得てから、走り出した馬車の天蓋へと音もなく身を潜めた。 天蓋の上で一人、退屈極まる護衛の時間をやり過ごす。 ロドリゲスは私がどこか近くで見守っていることは知っているはずだが、まさか、防音の甘い馬車の天蓋のすぐ上で自分の呟きを聞かれているとは思ってもみないのだろう。 やがて、小窓から漏れ聞こえてくる老貴族の独白が、静寂な夜の空気に溶けて私の耳に届いた。「まさか、あのアイン王女様が勇者召喚を成功させるとはな……。やはり、あのお方こそが正当なる血脈、王の器なのだ……」 馬車の中で、ロドリゲスは一人、熱を帯びた声で震えていた。

  • 天才召喚魔術師で王女の私は、完全に自己都合で勇者様を召喚します   15話:護衛依頼

     リヒトがコクライの説得——もとい、調教? を始めてから小一時間。『従うか?』(あーー!!っもう!! しつこいんだよオマエ!! 何回同じやりとり——シビレバビビっ!?)『しつこいのはお前だろうが……、いい加減従え』(ぐぬぬっ! オレ様はあの銀髪——ヒギギッ!?)『却下だ』 まだまだ終わりそうにない不毛なやりとりを横目に、三杯目の紅茶を飲み干したところで私は静かに立ち上がった。 「ノンノン、私は先に帰るわ——精霊とのアレコレとか、言語学習のフォローも、お願い」「マスター、了解しました」  これ以上付き合ってられない、とばかりに背を向けて歩き出す私。  実際あれだけ精霊を手玉にとれているのだから後は時間の問題でしょう。 後ろから、困ったようなリヒトの声が追いかけてきた。 『……すぐ追いかける、あんまり一人でうろうろするなよ?』「……なんのつもりか知らないけど、余計なお世話よ」  振り返ることなく溢した言葉はリヒトに理解される事なく、私は足早にギルドの執務室を後にした。 *** 私がギルドの扉をくぐり、その場を後にしようとした、まさにその時だった。 「待ってください、サクラさーんっ!」  私の背後から必死の形相で追いかけてきたニーナが、バタバタと足音を立てて立ち塞がる。 その手には、封蝋が施された重厚な羊皮紙の巻物が握られていた。 「もう……本当に、これだけは受け取ってください! ギルドとしても、このクエストだけは放置できないんです。どうか、サクラさんのその……慈悲深い心でっ!」  彼女は半ば泣きつきながら、私の胸元に強引にその巻物を押し付けてくる。 断固拒否しようとした私だが、ニーナの瞳があまりに必死で、迅速な解決を求めているのが伝ってきた。 そして何より――その依頼書に刻印された『王家直属の調査印』が、私の視界に毒のように飛び込んできた。 「……何よこれ。ただの護衛依頼じゃないわね?」  私が巻物を広げると、そこには夜会の標的となる貴族の名前と、何の目的か律儀に高級な紙にしたためられた犯行予告文。 ふと、標的の貴族の名前が目に止まった。 「これを見れば、サクラさんも興味を持ってくれるかと……っ。 報酬の倍増は保証します! どうか、このクエストを『受理』という形だけでもっ!」  彼女は私にクエストカウンターの承

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