霧華は言葉を区切り、決して揺らぐことのない明瞭な声で紡いだ。「桐生牧野。世には、骨の髄まで達し、二度と癒えることのない傷というものがある。そして、一度道を違えれば、生涯交わることのない縁というものがある。そなたがかの女の言葉を信じ、妾を疑い罰したあの瞬間に、我らの間にある縁は絶たれたのじゃ」彼女は冷ややかに彼を見据えた。「今や、そなたは大暁の底辺を這う一介の衛士であり、妾は高凛へ嫁ぐ東宮妃。互いに自分の身の丈に合った場所で静かに生きる。それが最も良き結末であろう」言い残すと、彼女はもはや彼に一瞥もくれることなく、女房たちに「戻るぞ」とだけ命じて背を向けた。牧野はその場に縫い付けられたように立ち尽くした。決然と遠ざかっていく彼女の背中を見つめながら、最後に残されていた細い希望の糸さえも彼女自身の手で断ち切られ、全身の血が完全に凍りつくのを感じていた。季節は巡り、天高く空が澄み渡る秋。皇室主催の大規模な巻狩の日が訪れた。見渡す限りの野に幔幕が張られ、駿馬がいななき、皇族や公卿、武官たちが広大な狩り場に集結していた。高凛の東宮妃となることが決まっている霧華も、高台に設けられた桟敷席からその様子を眺めていた。狩りが佳境に入り、一行が立派な角の雄鹿を追って深い森へと足を踏み入れた時のことである。突如として、森の奥から人々の恐慌に満ちた叫び声と、耳を劈くような獣の咆哮が響き渡った。いずこから現れたのか、巨大な黒熊が狂乱して護衛の陣を突破し、桟敷席へ向かって一直線に突進してきたのである。その血走った視線の先には、前列に座る霧華の姿があった。あまりに突然の出来事に、周囲の護衛たちも反応が遅れた。熊の剛腕が、凄惨な血の臭いと共に霧華の頭上へ振り下ろされようとしたその刹那。「危ない!」一本の矢のような人影が側面から猛然と飛び出し、渾身の力で霧華の身体を激しく突き飛ばした。牧野であった。彼はいつの間にか監視の目を逃れ、この狩り場に潜り込んでいたのだ。ドシャッ、という生々しい音と共に、熊の剛腕が彼の背をもろに打ち据えた。背骨が砕け散る、身の毛のよだつような鈍い音が響く。立て続けに、熊の鋭い牙が彼の肩口に深く食い込み、血肉を大きく引きちぎった。牧野が絶叫し、鮮血が舞い上がる。しかし彼は決して熊の脚から手を離そうとせず
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