一方その頃。空港に到着し、司は澪のスーツケースを引きながら歩いていた。後ろでは、澪が物珍しそうに周囲を見回している。「司くん、見て!あの建物すごく綺麗!」澪は彼の袖を引っ張って前に走り出し、その指先が不意に彼の手首をかすめた。司は彼女の視線を追って見上げ、思わず唾を飲み込んだ。去年の秋、凛を学術コンテストに連れてきた時も、彼女は同じようにイチョウの木の下に立って感嘆の声を上げていた。ただ凛なら、背伸びして彼の手からミネラルウォーターを奪い取ったり、日差しが眩しいから盾になれと文句を言ったりした。彼は視線を落としてスマホを見た。凛とのトーク画面は、彼が飛行機に乗る前に送ったメッセージのままで止まっていた。【凛、いつ頃こっちに来る?入学手続きの日程を教えてくれれば、空港まで迎えに行くよ】「まずは寮に行って荷物を置こう」彼は思考を引き戻し、澪に笑いかけた。司がベッドのシーツを敷いている間、澪は隣の椅子に座ってそれを見ていた。「司くんって、本当に優しいね。ずっと私にこんな風に優しくしてくれたらいいのに」司は何も答えず、ただ畳んだ布団をベッドの端へと押しやった。夕方、キャンパスを散策していると、澪が突然身を寄せてきて彼の腕に抱きついた。「司くん、今夜新入生歓迎のキャンプファイヤーがあるんだけど、私、人見知りだから一人じゃ不安で……」「俺が一緒に行くよ」司は笑って彼女をなだめた。その言葉を口にした瞬間、ポケットの中でスマホが震えた。凛からだと思い急いで取り出したが、ただの天気予報の通知だった。その夜の歓迎会では、キャンプファイヤーの炎がパチパチと音を立てて燃え、周囲は熱気に包まれていた。澪が焼けた肉を司の口元に運んだ。彼がそれを受け取る時、誤って彼女の指先を軽く噛んでしまう。澪は火傷でもしたかのようにサッと手を引っ込め、耳の先まで真っ赤に染めた。周囲から冷やかしの声が上がり、彼も口角を少し引き上げたが、その視線は何度もスマホの画面へと向かっていた。「凛ちゃん、まだ返事ないの?もしかして怒ってるのかな」司は眉をひそめて画面を見つめた。「まさか。あいつはそんな簡単に意地を張るような奴じゃない」「そっか……」澪はうつむき、長いまつ毛が瞳の奥の光を隠した。「スマホの充電が切れてる
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