会社にいるとき、一聖はふとした拍子に手が止まることがあった。デスクの隅に飾った藍里の写真に、ただじっと見入ってしまうのだ。ひとりのときならまだよかった。だが、部下が重要なプロジェクトの報告をしている最中であっても、気がつけば上の空になっている。そのたびに、傍らに控えていた秘書がそっと目配せをして、部下に言葉を止めさせた。五分ほど無言の時間が流れたあと、一聖はまるで深い夢から覚めたようにゆっくりと我に返り、何事もなかったかのように続きを促すのだった。報告を終え、書類を提出しようと近づいた部下が、机の上の写真立てにちらりと目をやった。写真に写っているのが誰なのか、部下には一目で分かった。そのほんのわずかな視線の動きを、一聖は見逃さなかった。彼は声を張り上げ、鋭く言い放った。「そんなにジロジロ見たいか?」部下は書類を抱えたまま慌ててオフィスから飛び出していった。一聖は鋭い目で、逃げるようなその背中を見送る。……それ以上は、特に何も言わなかった。退社後、一聖は大きなショッピングモールに立ち寄り、藍里の好きそうなものを片っ端から探し回った。ありとあらゆる種類の店を回り、気がつけば買い物袋の数は膨れ上がり、使った金額は数十万円にのぼっていた。帰りの車の後部座席で、袋の中を覗き込むたびに、自然と笑みがこぼれるのを抑えられなかった。家に着くと、両手いっぱいの荷物を自分で抱え、勢いよく寝室へ向かった。藍里は、ベッドの上で毛糸のマフラーを編んでいた。物音に気づいた彼女が顔を上げ、一聖が抱えている大量の袋を見て目を丸くする。「一聖、業者の買い付けにでも行ってきたの?」一聖は袋のことよりも、藍里の手元にあるものが気になった。買ってきた品々の説明をするより先に、それを尋ねた。「藍里、それどうしたんだ?」「これ?今日お義母さんと話してたら、あなたって外を出歩くことが多いのに、家にはマフラーひとつないってことに気づいて。道具を買ってきてもらって、編んでみようかと思ったの」妊娠中の身で、無理をさせたくないという気持ちはあった。けれど、自分のためにわざわざ手作りしてくれようとしているということは、それだけ自分を想ってくれている証だ。胸の中に、じわっと熱いものが広がっていった。藍里は、一聖がそこでぼんやり黙り込んでいる
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