結婚して五年。歳月が滝沢藍里(たきざわ あいり)に教えたのは、ただ一つの真実だった——どれほど深く愛し合った二人でも、いつかは別々の道を歩むことがあるのだ。結婚一年目、滝沢一聖(たきざわ いっせい)はどこへ行くにも藍里を伴い、まるで「彼女は俺のものだ」と世界中に見せびらかしたいかのようだった。結婚二年目、一聖は滝沢グループの後継者となり、藍里もその傍らで、怒涛の日々を共に駆け抜けた。やがて疲弊が限界を超え、お腹の子を失ってしまった。一聖の涙を見たのは、あの時が初めてだった。真っ赤な目で藍里をそっと抱き寄せ、生涯、決して彼女を悲しませないと誓ってくれた。結婚三年目、仕事が急激に忙しくなり、一聖が帰らない夜が続くようになった。顔を合わせる時間も、少しずつ減っていった。結婚四年目、一聖の体から微かに見知らぬ香水の香りが漂うようになり、二人で向かい合っても、言葉はなく、ただ沈黙だけが降り積もるようになった。そして結婚五年目——一聖はとうとう、結婚記念日を忘れていた。……藍里は一人リビングに座り、ケーキと手料理が並ぶテーブルを前にして、ただ待ち続けた。夜の十時を過ぎても、一聖は帰ってこなかった。深夜の十二時を回ったころ、ようやく玄関の扉が開いた。仕立てのいい黒いスーツを身にまとった一聖だった。夜の冷気をまとったままリビングに足を踏み入れ、ロウソクの灯るケーキを目にして、彼は明らかに息を呑んだ。藍里は顔を上げた。——分かっていた。一聖がこの日を完全に失念していたことを。「今日で、結婚五周年よ。一緒にケーキを食べましょう」胸に込み上げる苦しさをすべて飲み込んで、藍里はできるかぎり穏やかに言った。一聖は拒むことなく、無言で歩み寄り、まるで課せられた義務を果たすかのように、隣に腰を下ろした。藍里は丁寧にラッピングされた箱を差し出した。「プレゼントよ。気に入ってくれるといいんだけど」一聖はそれを受け取り、包みを開けた。中に入っているのは、繊細なデザインのカフリンクスだった。一聖は一瞥しただけで、「ありがとう」と短い言葉を返した。沈黙が、数秒間を満たした。藍里は心の中で苦く笑う。記念日さえ忘れていた一聖に、昔みたいなサプライズを期待するなんて、我ながらどうかしている。案の定、一聖は淡々とした口調で口を開い
Read more