昨夜届いた、登録していない番号からの短い返信を、由香は朝から何度も開いていた。ご連絡は若頭へ伝えます。時間につきましては、改めてご連絡いたします。若頭。その呼び方が、胸に引っかかっていた。自分にとっては、迅さんだった。父が話を持ち込み、離婚後はいずれ自分の隣に立つはずだと信じてきた男だった。けれど、久我の文面の中では、由香がどれほど彼を近い存在だと思っていようと、ただ黒瀬の若頭として扱われている。由香がその場へ会いに行くことを願い出ているのではなく、外から用件を持ち込む者として、面会の可否を待たされているようだった。昼を過ぎても、返事は来なかった。由香は部屋を出る気になれず、鏡台の前へ座ったまま時間を潰していた。昨夜、父との履歴を見返してから、何かを考え始めるたびに、画面の中に残る自分の言葉が浮かんでくる。迅さん、明日は外の会合みたいやで。二代目の検査、来週らしいわ。坂下さん、昔からの取引先の人と話してたみたい。美緒さん、今は実家の店に戻ってるみたい。三嶋洋服店って、古いだけの小さい店やろ。父に聞かれたから答えただけだと、何度も思おうとした。けれど、自分から送った文面まで見つけてしまった今、その言葉だけで胸を塞ぐことはできなかった。父は、自分に必要だから聞いたのだ。迅の隣へ立つ女として、黒瀬の家のことを知らなければならないから。由香はそう信じたかった。迅に会えば、まだその信じ方を捨てずに済むかもしれない。自分がしたことは、黒瀬を傷つけるほどのことではなかったと、迅が言ってくれるかもしれない。父が尋ねたのも、娘の婚姻を思ってのことだったのだと、迅の態度から確かめられるかもしれない。そんな期待が、胸の奥のどこかに残っていた。夕方近くになって、スマートフォンが震えた。表示されたのは、昨夜と同じ登録していない番号だった。由香は、息を止めるようにして画面を開いた。本日十八時三十
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