午後の光が、簾を通して作業台の上へ細長く落ちていた。三嶋洋服店の表通りは、八月に入ってさらに白く乾いて見える。通りの向こうでは、自転車で買い物に来た女が、片手で額の汗をぬぐいながら日陰へ寄っていた。近くの商店からは、冷蔵ケースの低い唸りと、客へ声をかける店主の声が、ときおり途切れながら届く。作業場の冷房は控えめにしてあった。古い布を広げる時、強い風で薄紙がめくれたり、軽い生地が不用意に動いたりするのを父は嫌う。美緒も、いつの間にか同じように、作業台の上の空気まで気にするようになっていた。台の中央には、桂木玲子から預かった青灰色の薄物が広げられている。解いて洗い張りされた布は、かつて着物だった時の静かな記憶を残しながら、いまは新しい形へ移る前の長い布片として、美緒の前にあった。透ける地に流れる流水柄と、小さな草花。見る角度によって、柄は前へ浮かび、また布の奥へ沈んでいく。布の左右には、薄紙に描いた二つの仮案を置いていた。一つは、腰より少し下で軽く揺れる羽織ものだった。前を閉じず、肩から自然に落ちる形で、夏の外出や気軽な会食なら扱いやすい。青灰色の透け感を損なわず、以前美緒が仕立てた玲子の洋装へ重ねても重くならないよう、正面の柄は控えめにする案だった。もう一つは、それより丈を長めに取り、膝の少し上で落ち着かせる形だった。背中から脇へ流水柄を長く通せるため、座敷や改まった席で立った時にも、美しい流れが残る。ただ、布の折り跡に見えるわずかな弱りを避けながら裁つには、使える柄の位置が限られる。美緒は、薄紙の一枚を布の上へ慎重に重ねた。直接、線を当てるわけではない。柄の流れと、形にした時の見え方を確かめるためだけの仮置きだった。小さな重しを四隅へ置き、背中に当たる位置へ鉛筆で細い印を加える。正面へ柄を出しすぎれば、玲子の品のある静けさには強すぎる。かといって、柄を抑えすぎれば、この布をわざわざ新たな形へ仕立てる意味が薄れる。美緒は、玲子が以前店へ来た時の姿を思い浮かべた。背筋が伸びているのに、威圧的ではなかった。声を荒らげず、相手の言葉を急かさず、ただその場にいるだけ
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