玲子の指が、封筒の口を静かに開いた。紙の擦れる音は、思いのほか小さかった。それなのに、美緒には、その音だけで客間の空気がひとつ深いところへ沈んだように感じられた。由香の口から、三嶋洋服店へ自分が戻っていることを父へ話したと聞いた直後だった。すでに、店の名が圧力の材料として扱われていた可能性は聞いている。何も知らないまま、今ここで初めて打ちのめされるのではない。それでも、目の前で由香が認めた言葉と、玲子が預かっていた外の記録とが、これから同じ卓の上でつながっていく。そのことは、知っていた事実を、別の重さで美緒へ突きつけた。玲子は、封筒からすべてを取り出そうとはしなかった。数枚の紙だけを選び、卓上へ置く。どれも華美な印のない、簡潔な記録だった。美緒は以前、料亭の席で、その一部を見せられている。あの時は、自分が抱いた違和感が、ただの不安ではなかったと知るための紙だった。今は違う。由香自身へ、彼女が父へ渡したものの先で、何が動いていたのかを示すためのものになっている。玲子は、資料へ目を落とす前に、由香を見た。「由香さん」由香は、膝の上のバッグを握ったまま、ゆっくり顔を上げた。先ほどよりも顔色が薄い。佳穂の問いに答え、自分が父へ何を話したのかを認めた時点で、もう余裕のある笑みを作ることはできなくなっていた。「今、佳穂さんへお話しになったことに、間違いはありませんね」由香の唇が、僅かに動いた。「……はい」声が小さく落ちる。「父へ話したことは、ございます」そこで、由香はすぐに言葉を重ねた。「けれど、先ほども申し上げた通り、黒瀬へ何かをするつもりで話したわけではありません」玲子は、由香の弁明へ頷きも否定もしなかった。「それは、あとで聞かせてもらいます」由香の指先が、バッグの縁へ食い込む。玲子は、卓上の一枚へ手を置いた。「まず
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