「奥様、もうお時間ですよ」 メイド長のアナスタシアの声で目が覚める。 嫌な夢だった。 体がばらばらに引き裂かれる夢。 手足がちぎれていく感覚はものすごく生々しくて、起きた今でも思い出せる。 思わず体を身震いさせてしまう。「どうされましたか?」「なんでもないの、アナが起こしに来るなんて珍しいわね」「ちょっと事情がございまして」 少し困った表情をしているので何かあったのだろう。 普段ならスフィーナやイリーシャが起こしに来るはずで、わざわざアナが起こしに来る必要なんてない。「それにどうしてこんなに真っ暗なの?」 あまりの暗さで夜かと思ってしまった。 窓を見ると外側から何かで塞がれているようだ。「今改築中でして一週間ほどこの状態になります」 そんな話聞いてなかった。 教えてもらえなかかったのは何か理由があるのかな? でもリチャードとアナが決めたことならきっと大丈夫だ。 ただ改装ってかなり大がかりだけど、一週間で済むのはすごく早い。 もしかして外壁を塗りなおすだけとかなのかな?「改築は何をする予定になっているの?」「窓の雨避けの改修と屋敷の外壁塗装ですね」 聞かれるのは想定済みらしくスラスラと答えが出てくる。 うん、大体想像通りの内容。 外壁の一部だけ塗装がはがれていたからあそこを修繕するんだろうな。「そのためメイド含めて大勢駆り出されています」「ああ、そういうことなのね」 でもけっこう人手不足みたいね。 わざわざ屋敷の人間まで駆り出すなんて。「え、でもそんな状況で本当に一週間で終わるの?」「契約魔術が交わされておりますので問題ありません」 一瞬納得しかかったけどすぐ疑問が浮かんだ。 え? 契約してるっていうことは間に合わなかったらメイドとかも処罰される? そう思ったのが顔に出ていたようでアナがさらに説明を加えてくれた。「契約は業者との間に交わされたものなので屋敷の人間は関係ありません」「でもメイドたちのやる気がなかったから間に合わなかったとか言われたらこちらのせいにならない?」「心の中は証明できないので大丈夫ですが、実際に動きが悪ければなるかもしれません」「じゃあ……」 お手伝いみたいな仕事で処罰される可能性があるなら、やらない方がいいんじゃないかな? どうしてアナは屋敷の人間を手伝わせたりした
Last Updated : 2026-05-29 Read more