第151話 まだ行ったことのない場所へ連れて行く 蓮は、昼に美月と食事をする約束をしていたので、早々にやって来ていた。 美月の視線は、まず彼の手にしたバラの花に留まった。 「どうしてこれを買ったの?」 「途中で花売りのおばあさんに会ってな、気の毒に思って買ったんだ。ほら、やるよ!」 バラの花束を差し出す仕草は、とても軽いものだった。 目の前に差し出されては、美月も受け取るしかなかった。 蓮は彼女がバラの花を手にしているのを見て、上機嫌だった。「こっちはもう片付いたか?片付いたなら、先に飯を食いに行こう」 美月は颚いた。「ええ!」 二人は連れ立って外へ向かった。 エレベーターに乗る時、蓮が言った。「その花、……やっぱり俺が持ってやろうか?」 「……」美月は言葉を失った。 だから、どうしてわざわざ上まで持って来たのよ。車に置いておけば良かったんじゃない? まるでバカみたいじゃない。 黙って花を差し出し、返してやった。 「どこで食べるの?」 「まだ行ったことのない場所へ連れて行ってやる!」——つまり、瑛士と行った場所ではない、ということだった。 ……そこまでしなくても! 飯を食うだけなんだから、近場でいいじゃない。 ……
Last Updated : 2026-08-16 Read more