大学入学共通テストが終わると、高校生活で一番気楽で、一番長い春休みが待っていた。クラスの打ち上げで、みんながそれぞれ仲のいいグループの友人と「卒業したらみんなで旅行に行こう」と話していた。大学生になったら、こうして集まれる時間はもう少なくなってしまうから、と。しかし、一度人生を経験していた明里は、知哉以外はみんな盛沢市に残ることを知っていた。留学を選んだ知哉でさえ、他の三人とは裏で連絡を取り合い、4年後には戻ってくるのだから、バラバラになることなんてない。けれど、知哉から旅行に誘われたとき、明里は断らなかった。3月というまだ冬の寒さが残る時期、彼らは南国のリゾート地を目指した。飛行機を降りて、そのままタクシーでホテルへ向かう。明里は唯一の女子だったので、一人部屋だ。その日の夜、部屋のドアが叩かれた。扉の前に行き、「どちら様ですか?」と尋ねる。すると、扉越しに聞き覚えのある声が聞こえてきた。「明里、俺だ」明里がドアを開けると、そこには悠真が立っていた。その瞳には、後悔と恋しさ、そして機嫌をうかがうような遠慮がちな色が浮かんでいる。その瞬間、明里は彼に、あるもう一人の影を重ねてしまった。理屈の上では、二人は同じ悠真のはずで、ただ、生きている時代が違い、置かれた時間軸が違うだけ。半年前、彼自身も過去……いや、未来の出来事を夢で見たと言っていた。けれど明里には、どうしてもそうは思えなかった。あのときの悠真は、ただ未来の10年間に起こる出来事を、一人の傍観者として眺めただけの悠真だったような気がしたのに、今、目の前にいるこの悠真は、まるですべてを実際に経験した人間のようだったから。少し黙ってから、明里は問いかけた。「なんか用事?」「明里、ごめん。お前も俺と同じで、時を遡ってきたんだ。だから、あれは夢なんかじゃない」悠真がためらいながらも、後悔の念をにじませ、明里を見つめた。「明里、もう一度だけ、チャンスをくれないか?絶対に、お前を大事にする。もうあんなことはしないって、誓うから!」呆れた明里が扉を閉めようとした瞬間、悠真が体を入れて必死に止めてきた。「本当にお前が好きなんだ!18歳の俺でも、28歳の俺でも、ずっと愛してるのはお前なんだよ。あの時はただ……誘惑に負けてしまった。なあ、もう一度だけ信じてくれないか?絶対に
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