All Chapters of 10年愛した彼に捨てられ、幽霊になった私: Chapter 11 - Chapter 20

26 Chapters

第11話

「あいつは、どうして死んだんだ……」悠真の疑問に知哉が答えようとしなかったので、結局蓮が口を開いた。「まだ分からない。警察もまだ犯人を特定できていないし、分かっているのは、明里がお前の会社から出てきた直後に連れ去られた、ということだけらしい」自分の会社から?だとすると……別れを切り出したあの日か?悠真の目に宿る後悔を見ながら、明里は彼が何に苛立っているのか分からなかった。ただ、今の自分が何を叫んでも彼には届かないのが残念でならない。だが、すぐに知哉が明里の代わりに、胸の内を言葉にしてくれた。「悠真、お前がそんな面ができる立場だと思ってるのか?明里が生きている間、お前はあいつを裏切った。今さら後悔しているような顔をするな。そんな薄っぺらい情なんて見せられても反吐が出る」知哉はそう吐き捨て、襟元を整えると冷ややかに言い放った。「忘れたか?今日はお前と若菜の結婚式だぞ?今朝、明里に道を譲れと言ったのは誰だ?」今朝、対向車線から来たあの霊柩車が、明里のものだったことに気づき、悠真ははっとした。喉が締め付けられ、何かを言おうとしたが、目の前の男たちの表情を見る限り、どうやら自分に発言権は微塵もないらしいと、気づいた悠真。「悠真、俺たちの関係もこれで終わりだから」そう言い終えた知哉は、振り返ることなく歩き出した。蓮と文哉も悠真をちらりと見ただけで、何も言わずに山を降りていく。一人残された悠真はその場に膝をつき、長い間黙ったままだった。夜も更けた頃、スマホの着信音でようやく正気を取り戻す。そこには「妻」との表示——つまりは、若菜からの連絡だった。明里は、悠真が電話に出るかと思ったのだが、彼はなぜだかただ画面を見つめるだけで、電話に出ることはなかった。しかし、その後もしつこく鳴り続ける着信音。最後には根負けしたのか、彼は電話を取った。繋がるや否や、受話器越しに甘えた声が届く。「悠真、どうして電話に出てくれないの?何かあった?」悠真は長い沈黙ののち、かすれた声で答えた。「ごめん、マナーモードにしてたんだ。今から帰るよ」若菜の返事を待つこともなく、彼は電話を切った。なぜ嘘をついたのか、それになぜ電話に出なかったのか、明里には理解できなかった。彼女が思案にふける間に、彼はすでに下山を始めていた。彼が動き出
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第12話

知哉の後を追いかけていた明里は、その言葉を聞いてふと動きを止めた。犯人が捕まった?自分の遺体が見つかった場所に行ってからというもの、自分はもう悠真のそばに縛られることはなくなった。その代わり、自分の身体は徐々に透けてきている。ということは、すべての真相が明らかになるその日――それはきっと、自分がこの世界から完全に消えてしまう日なのだろう。明里は、その日が来るのを待ち望んでいた。だが同時に、その日が訪れることが、少しだけ怖くもあった。もし今度消えてしまったら、自分はどこへ行くのだろう。生まれ変わるのか、それともこの世から完全に消え去るのか……しかし、恐怖で真実への探求が止まることはない。明里は知哉の後を追い、警察署へ向かった。そして、かつて自分に暴力を振るった犯人たちを見つめる。首謀者である若菜を除いた全員がそこにいた。確実な証拠を突きつけられ、犯人たちは反論の余地がないと悟ると、情状酌量を求めて黒幕の自供を始めた。そして、少しでも罪を軽くしようと、持っているすべての証拠を提出した結果、若菜の罪はもはや確定したものとなった。ニュースが流れたその日、再び悠真のもとにいた明里。わずか数日会わなかっただけだが、悠真はひどく老け込んでいた。復讐心に満ちた目で留置所にいる若菜を睨みつけ、彼は問い詰める。「なぜだ?明里とは別れて、お前と結婚するって約束しただろ?なのになんで、あいつにこんなことしたんだよ?」だが、若菜は当たり前とでもいうように、苦しむ悠真を見つめながら勝ち誇った笑みを浮かべた。「だって、悠真の心には、いつまでもあの女がいるって分かってたから。悠真はあの女と10年一緒にいたんだよ?なのに、もう何にも気持ちがないって言われたって、信じられるはずないでしょ?本当に殺すつもりはなかった。ただ少しお灸をすえて、あなたの前から追い出したかっただけ。でも、明里さんが無理に抵抗したから、こんな結果になっちゃったんだよ?」悠真は、まさかこんな自分勝手な動機だとは思ってもみなかった。もちろん、明里だってそうだった。自分があんな無惨な死を遂げた理由が、若菜の悠真に対する猜疑心からきたものだったなんて。「悠真。明里さんを、あなたが殺したんだよ」もう聞いていたくなかった明里は、背を向けその場から離れようとした。しかし、その
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第13話

すべての加害者たちに死刑判決が言い渡されたのを見届けた直後、明里はこの世から消えた。生まれ変わるのかと思っていたが、明里が次に目を開けたときには、なぜか高校3年生の1学期に戻っていた。それは、知哉が海外に行く前、そして悠真が彼女に告白する前の頃。すでに12月末になっていたから、気づくのがもしあと少し遅かったら、また悠真の告白を受けてしまうところだった。最悪の結末を知った今、やり直しの機会を得たなら、もう前世と同じ道を歩むつもりはない。それなのに今、目の前には、当然のように一緒に食堂へ行こうと笑う悠真、肩を組んでふざける蓮と文哉、そして黙ったままの知哉がいる。周囲の目には、この頃の明里と悠真は、恋人関係になる寸前の仲睦まじいカップルに映っているはずだ。明里はきっぱりとは断らず、食堂へは同行した。だが歩調をわざと悠真とは合わせず、一歩後ろに下がって知哉の横を歩くようにした。蓮と文哉は異変に気付き、悠真の肩を突いて耳元で話す。「明里を怒らせたのか?なんでお前の隣を歩かないんだよ?」悠真も何度か振り返りながら、怪訝そうに明里の様子をうかがっている。「俺も分かんないよ。昼までは普通だったんだけど、急に……」彼ら三人はこそこそやっているつもりなのだろうが、明里から見れば一目瞭然だった。しかし、明里は気にも留めず、振り向いて知哉に声をかけようとしたところで、知哉が緊張でぎこちなくなっているのに気づいた。明里は口角をわずかに上げて微笑んだが、気付かぬふりをして話しかける。「緊張してるの?」平静を装おうとしてかえって不自然になった知哉は、どうしようもなくなりポケットに手を突っ込んだ。そうすればいくらかましだとでも思ったのだろう。知哉が小さく咳払いをし、首を横に振った。だが、明里の角度からは彼の耳が真っ赤に染まっているのがはっきりと見えた。それ以上からかうのはやめ、食堂に入った明里は、悠真たちが席を取るという申し出を断り、一人で並ぶことにした。この振る舞いに、彼らはやはり明里が怒っていると確信した。しかし、四人は互いに顔を見合わせるだけで、理由については誰も見当がつかないようだ。その違和感は、明里が彼らが空けていた悠真の隣ではなく、わざと知哉の隣に腰を下ろした瞬間、最高潮に達した。沈黙の中で食事を終え、トレイを
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第14話

明里は新しい友達を作り、食事も通学も一緒に行動するグループができた。明里の中で、悠真たち四人の存在は、すっかり過去のものとなっていた。だから、同じクラスなので顔を合わせることはあるが、接触は明らかに減っている。以前、クラスメイトから「明里は悠真と付き合ってるんだろ?」なんてからかわれた時は、恥ずかしそうに誤魔化していた彼女だったが、今では笑顔で否定するようになった。「ただの友達だよ。それ以上でもそれ以下でもないから」そして心の中で、ひっそりとこう付け加える。「友達ですらなくなるかも」次第にクラスメイトも、明里と悠真が別れたことを噂し始めた。その噂を聞きつけた当初、明里は反射的に「付き合ってさえいなかったのに、破局も何もないと思うんだけど」と言い返したくなった。だが思い直し、わざわざ釈明するのも億劫でやめた。これまで親密すぎた自分たちを見てきた周囲には、どう言おうと破局としか映らないだろう。だから、悠真と自分をセットで扱うことさえやめてくれれば、明里にはそれで十分だった。悠真自身も、明里との距離を感じていた。ただ、他の三人に対する態度ではなく、自分に対してだけのあからさまな避け方に困惑していた。あの日以降、知哉たちには以前と変わらず接する明里だったが、なぜか自分だけには視線を合わせず、まるで存在しないかのように無視するのだ。理由が分からなかった当初は、明里が怒っているのなら、機嫌が直るまで待てばいいと思っていた。しかし、時間が経つにつれ、送るプレゼントはことごとく拒否され、両親を介しての食事の誘いすらも冷ややかな態度で断られるのだった。明里は悠真の母親に尋ねられた。「もしかして、うちのがまた明里ちゃんのこと怒らせたの?」しかし、明里は澄ました笑顔で、「そんなことはありません。私たちの関係は、今くらいがちょうどいいんです」と答える。明里の言葉を何度も繰り返した悠真は、「関係」という言葉に思い至った時、突然、一つの仮説がひらめいた。「そうだ!俺がずっとちゃんとした告白をしてないから、明里は拗ねているんだ!」悠真はカレンダーをめくり、3日後の年越しを思い出すと、あるアイディアが浮かんだ。盛沢市では毎年、カウントダウンイベントとしてドローンパフォーマンスが行われる。そのタイミングで、明里に告白しよう!……
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第15話

明里は行こうかどうか迷ったが、今は前世と違う状況だと思い直す。わざわざ悠真のせいで、カウントダウンイベントを諦める必要なんてない。そう思って、明里は着替えを済ませて外に出た。イベント会場に着いたので、両親と合流するために、電話をかける。両親を見つけた時、予期通りとでもいうのだろうか……そこには他の数人の姿もあった。悠真、知哉、蓮、文哉がそろっている。皆同じマンションに住んでいたので、親同士も仲が良かったのだ。だから、この場所で彼らと顔を合わせることは、明里にとっても特に予想外のことではない。一人ずつに挨拶を済ませて両親のそばへと行った。そんな明里に親たちは「子供たちは子供たちで遊んできなさい」と言い出した。明里は両親と共にいたかったのだが、大人だって自分たちの時間が必要だと説得されてしまった。仕方なく、明里は男たちのあとについて別の場所へと歩き出した。知哉たち三人は気を利かせて悠真の隣の席を空けてくれたのだが、当の明里は悠真とは話したくない。だから気まずい空気が五人の間に漂い、通りすがりの人たちもその異常な雰囲気を察したのか、わざわざ距離をとって避けて通るため、周囲に無人の空間ができてしまった。カウントダウンの時間まではまだ余裕がある。今は、この気まずい空気を何とかしなければならなかった。悠真は、少し先にある飲み物を売るタピオカドリンクの屋台を見て、気まずさを隠すように咳払いをしながら明里に聞いた。「明里、何か飲む?」しかし、悠真がそう言い終えるより先に、明里は屋台の方へと向きを変えていた。明里はスマホを見つめながら適当に飲み物を注文し、彼らを呼ぶように手を振った。それが、悠真への返事なのか、あるいは避けているだけなのか悠真は分からなかった。「みんなも何か飲みたいものがあるか見たら?ないなら、もう少し先まで進もう」全然気にしていないといえば嘘になる。だが、悠真には、一体何が問題だったのかが、本当に分からないのだ。なぜ、こんなにも急に明里の態度が冷たいものになってしまったのだろう。それどころか一瞬、今日計画している告白すら、本当に実行すべきかどうか迷ってしまった。蓮が悠真の肩に手を回し、屋台の方へ促しながら、皮肉めいた声で場を和ませた。「もう、明里に『いるかどうか』じゃなく、『どれにする』って聞く
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第16話

屋台でタピオカドリンクを買った彼らは、それを片手に川沿いをゆっくり歩き出した。甘すぎるくらいのタピオカを少しずつ飲みながら、彼らは沈黙の時間を過ごす。周囲が賑やかになり、明里がふと時間を確認すると、カウントダウンが始まるまであと少しになっていた。川沿いであればどこからでもドローンパフォーマンスが見えるため、場所をあまり気にする必要はない。明里たちは歩みを止め、少しだけ川から離れた場所を取った。そうすれば視界が開け、綺麗な写真も撮れるからだ。近くの広場にある電光掲示板に、カウントダウンの数字が表示された。数が進むにつれ、悠真の心臓が激しく高鳴っていく。気を利かせた知哉たちが少し離れ、明里と悠真のために場所を空ける。ラスト10秒、周囲の人が一緒になって声を合わせている、カウントダウンの声しか聞こえなくなった。うるさくなんてない、この賑やかさが好きなくらいだった。前世の終わり、自分は幽霊のような存在となり、何にも触れず誰にも届かない孤独を味わった。だからこそ時を遡った今、この熱気と活気溢れる世界が、何よりも輝いて見える。「3!」「2!」「1!」ドローンパフォーマンスが始まったと同時に、明里の手が悠真に掴まれた。振り返ると、18歳の少年特有の緊張と、ひたむきな期待に満ちた表情の悠真がいた。「明里、お前が好きなんだ。俺と付き合ってくれない?」言い終わるや否や、少年の頬はみるみるうちに朱色に染まり、繋いだ手までが熱を帯びていく。まっすぐに見つめてくる瞳には、明里しか映っていなかった。そして、ふと明里の脳裏をよぎる前世の記憶。同じ場所、同じセリフで誓いを立てたあの日を思い出す。だが物語の結末は、この男が他の誰かに恋をするというものだった。あまりにも見つめ続ける二人に、周りの誰もが明里が受け入れるのだと思った。それなのに次の瞬間、明里は静かに瞳を伏せ、その手を振り払った。少年の高鳴る心臓が一瞬で凍りつく。「嫌」悠真の表情が凍りついた。笑みが消え、呆然とした様子で明里を見つめている。慌てて明里の手に触れようとするも避けられ、冗談であってほしいとすがるような眼差しを向けた。長い沈黙のあと、悠真は苦しげな笑みを浮かべ問いかけた。「なんで……?俺たち、ずっと仲良くやってたよな?俺が何
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第17話

成功間違いなしと思われていた告白が、まさか失敗に終わるとは誰も思わなかった。周囲の人々が気まずそうに散っていく中、明里は一人、両親のもとへと戻った。その後ろに悠真がついてきていないことに気づいた両親は、不思議そうに問いかける。「悠真くんは?一緒じゃないの?」明里は首を横に振り、母親の腕にすがって、甘えるように言った。「ねえ、お父さん、お母さん。もう帰ろうよ」「まだドローンパフォーマンスはあるみたいだぞ。見なくていいのか?冬休みに入る前も、ずっとこのドローンパフォーマンスを楽しみにしてただろ?」そこで、異変を察した両親は、探るように問いかけた。「悠真くんと喧嘩でもしたのか?」「ううん、ただ少し疲れちゃっただけ」明里の声は沈んでおり、確かに疲れてはいるようだった。両親は周囲に一言断り、そのまま明里を連れて帰宅した。一歩遅れて駆けつけた悠真は、彼らの去った方向を見つめ、失望に胸を押し潰されそうになった。悠真が今日告白することを知っていた悠真の母親も、まさか彼が拒絶されたとは考えてもいなかったので、沈み込む息子の背中を見て、想いを伝えられなかったのだと勘違いし、冗談めかして言った。「あれだけ練習したんじゃないの?本番に弱いんだから、もう」だが悠真が顔を上げると、その目には既に涙が溜まっており、隠しようのない喪失感が漂っている。「振られた」「何て?」耳を疑った両親は、思わずもう一度聞き返した。悠真が自嘲気味に笑う。「俺のことが好きじゃないんだって」結末がそうなると思っていなかった両親は、互いに顔を見合わせた。そして深いため息をつくと、失意の悠真を連れて家路についた。そしてその姿を眺めていたのは、知哉だった。悠真とは対照的に、知哉の顔には確かな笑みが浮かんでいる。それは他人の不幸を蔑む笑いではなく、彼自身の心の中で「自分にも挑戦する権利があるのかもしれない」という希望の光が差した瞬間の笑みだった。だったらもう一度、勇気を出して求めてみよう。明里は、悠真を愛していないのだから。かつての知哉は勇気が出なかった。明里の視線が悠真に向いていることに気づいていたから。だが今、彼は知っている。明里は悠真が好きではない。……一方その頃、帰宅した明里は、入浴を終えてベッドに入るところだった。その時、窓が叩かれる
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第18話

明里はしばらく沈黙を守っていたが、結局すべてを隠さずに打ち明けることにした。もっとも、表現を少し変えてのことだが。「ある夢を見たの。夢の中で、私はあなたの告白を受け入れた。あなたは私を深く愛してくれたし、付き合って10年、一緒に大学へ入り、起業して、支え合ってきた。それに、プロポーズもしてくれて、一番豪華な結婚式を挙げるとも誓ってくれたの」明里は悠真に視線を向け、微かに笑った。「最初の9年はあなたを信じていた。でも10年目、あなたは私を裏切って、他の女と一緒になっちゃったんだ。そして、私が10年待っても叶わなかった結婚式を、あの女はたった3ヶ月で手に入れたの。夢の中の私は死んだ。それも、かなり惨い死に方でね。でもね、あなたが私の死を知ったのは、あなたの友人よりも後……一番最後だったの。皆が隠してたわけじゃない。ただあなたが、私がすねているだけだとか、あなたの金が目当てだなんて思い込んだせいで、私に起きた異変なんて気にも留めてくれなかっただけ。悠真。私は夢の結末をもう知っちゃったから、同じ道なんか選びたくないの」悠真は黙って明里の話を聞いていたし、明里も落ち着いた様子で、まるで他人の話をしているかのようだった。しかし悠真の心には、信じ難い気持ちとも、あるいは胸の痛みともつかない、得体の知れない感情が渦巻いた。あらゆる感情が入り混じっていたが、最終的に彼の胸に一つの確信が生まれる。「明里、それはただの夢だ。信じてくれ、俺がそんなことをするはずがない!」悠真は自分を必死に弁護した。彼女が見た夢のような男に、自分は絶対にならない。それに夢は逆夢だと言い聞かせた。現実に生きる自分が、そんなことをするはずがない。自分は明里をこんなにも愛しているんだから、どうして傷つけることがあろうか。しかし明里は首を横に振った。「帰って。今はあなたを見たくないの」雨脚が強まる中、悠真は最後にもう一度だけ、明里を見つめた。しかし、今の彼女の様子を見る限り、これ以上言葉を重ねても嫌がられるだけだろう。この夜、明里は安らかな眠りについたが、対照的に、悠真は一睡もできなかった。明里の話があまりに現実味を帯びていたせいか、悠真は家に戻ってから、ある夢を見た。それは、明里が話していたことと、何もかもが同じだった。カウントダウンイベント
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第19話

大学入学共通テストが近づいており、最後の総仕上げに追われている時期なので、昼食後、明里は盛沢第一高校へと戻った。高校時代に戻ってきたとはいえ、長らく勉強から離れていたこともあり、基礎から見直す必要があった。悠真と離れた今、前世のときよりきっと良い結果が出せるはずだ、と彼女は考えていた。冬休み明け、夜の自習時間。教室は生徒たちがこそこそと話す声に包まれていた。友人と見たドローンパフォーマンスの話や、年末年始の出来事を楽しそうに話している。そんな中で明里だけは、ただ一心に課題と向き合っていた。だからこそ、後ろの席で自分をじっと見つめている悠真の視線には、まったく気づいていなかった。午後10時。自習が終わると、寮に帰る人も、家に帰る人も皆それぞれが鞄を背負い、次々と教室から出て行った。明里も鞄を持って校舎を後にする。教室を出るのが遅かったせいか、正門へ着くと、案の定、悠真が待っていた。彼女の姿を見つけると、彼はすぐに近づいてきた。「明里、今日は家に帰る日だろ?一緒に帰ろう」なぜこれほどまでに、悠真が自分に固執するのか、明里には分からなかった。前回あんなにもはっきりと拒絶したはずなのに、まだ諦めようとしないなんて。しかし、彼の後ろについてきている、しばらく悠真のせいで疎遠になっていた知哉たちの顔をちらりと見て、少し考えた末、明里は結局承諾することにした。5人は街灯の下を静かに歩き始めた。しばらくして、沈黙を破ったのは悠真だった。「明里。昨日、変な夢を見たんだ」彼は恐る恐る口を開いた。自分の話を最後まで聞いてほしい、そんな顔。無表情のままの明里だったが、拒絶しているようではなかったので、悠真はほっとして続けた。「俺も、明里が言っていたあの光景を見て……」明里はその言葉に反応し、興味深げに振り返る。その反応に気づいた悠真は急いで続けた。「でも、明里。あれはただの夢だろ?なのに、どうして信じるんだよ?」その瞬間、明里の瞳からすっと光が消えた。明里が大きく深呼吸をし、今にもその場から立ち去ってしまうと悠真が思ったところで、明里が口を開いた。「もしそれが、ただの夢じゃなかったら?」予想外の返しに、悠真は何と言ったらいいのか分からなかった。「もし夢じゃなかったとして……あれが10年後の現実だとしても、それは未来の誰かの
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第20話

「明里!」聞き慣れた声が背後から聞こえてきて、明里は思わず足を止めた。まさか知哉が追いかけてくるとは思ってもみなかった。なぜなら、明里がここに戻ってきてからというもの、彼はまるで何かを恐れるように、ずっと明里と一定の距離を保っていたから。たまに言葉を交わすことがあっても、それは悠真に気づかれないような時ばかりだった。明里は追いかけてきた知哉の方を向き、眉をひそめる。「どうして追いかけて来たの?皆と一緒に帰るんじゃないの?」「帰らない」彼は首を振って明里に向き直ると、毅然とした声で、そしてとても真剣な面持ちで切り出した。「明里、聞きたいんだけど、どうして最近、俺たちと距離を置いているんだ?俺たちが何か怒らせるようなことした?」明里は視線をそらし、ため息をついた。「そんなことないよ。ただ、自分の中で考えがまとまっていないだけなの」明里は道端の小石を蹴りながら、歩みを進める。しばらく沈黙が続き、知哉がもう答えは返ってこないと諦めかけたその時、家の前に着いた明里が、かすかに笑みを浮かべて言った。「知哉。私ね、もう悠真を好きでいるのはやめることにしたの」予想外の言葉に、知哉は完全に言葉を失った。長い沈黙ののち、ようやく蚊の鳴くような声で問い返す。「どうして?ずっと悠真が好きだったんじゃないのか?」「人の心なんて、変わるものなんだよ」明里は家の入り口で立ち止まると、振り返って知哉を見た。「それに、結末が悲劇だとわかっている道でも、迷わず進むと思う?」答えられなかった知哉は、明里が玄関を開け、待っていた明里の母親に駆け寄って抱きつく姿を、ただ眺めていた。笑って明里を抱きしめていた彼女の母親が、入り口にいる知哉に気づいて優しく微笑む。知哉も軽く会釈をすると、すぐに背を向け、家路についたが、明里の最後の言葉が脳裏から離れなかった。結末が悲劇だとわかっている道でも……自分は迷わず進むことができるのだろうか?もしかして彼女は何か自分の気持ちに気づいたのか。あるいは、ここ数日の自分の行動が行き過ぎていて、注意する言葉だったのか。知哉はそう考えずにはいられなかった。だが知哉はこう思うのだ。明里が幸せになれるなら、自分一人が悲劇の結末を迎えようとも、それは大したことではない、と。……半年という月日はあっという間に過ぎ去った。明里が
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