白川明里(しらかわ あかり)が意識を取り戻したとき、真っ先に目に飛び込んできたのは二人の男女だった。男は、10年間愛し合ってきたにもかかわらず、たった1日前に突然別れを告げてきた桐生悠真(きりゅう ゆうま)。そして女の方は、悠真の心を奪った相手であり、今は悠真の恋人となったーー篠原若菜(しのはら わかな)だった。二人は寄り添いながら、何かを手に小声で話し合っている。だが、明里の存在に気づく様子はまるでない。明里はそっと視線を落とした。そこにあったのは、透けていて実体のない自分の手。その瞬間、ようやく思い出す――自分は、もう死んでいるのだ。ふわりとその場を離れようとした明里だったが、悠真から3メートルほど離れたところで、不意に見えない力に引き戻されてしまった。どうやら彼のそばから離れることはできないらしい。仕方なく二人のもとへ戻った明里の耳には、嫌でも彼らの会話が聞こえてきた。若菜がカレンダーを手に、ある日付を指差して甘えた声を出す。「悠真、今月の7日は大安だから、結婚式、この日にしない?悠真が盛大な式を用意してくれようとしてるのはわかってる。でも私、そんなことより早く悠真のお嫁さんになりたいの」若菜を見つめていた悠真が、優しく微笑んだ。「お前の好きにするといいよ」明里は愕然とした。まさか、結婚式の日取りを決めていたとは。悠真……結婚するんだ。おかしいな。自分が10年待ち続けても叶わなかったのに、悠真は出会って3ヶ月の女とは、こんなにもあっさり決められるなんて。別れたのはつい昨日のことなのに、自分たちが愛し合っていた思い出は、ひどく遠い記憶のように感じられる。明里と悠真は幼馴染で、幼い頃から共に育ってきた。悠真が明里に告白したのは、18歳の時。告白を受け入れてくれた明里に、悠真は耳を真っ赤に染めながらキスをし、「一生、お前を大切にする」と、誓った。二人が最も愛し合っていた頃、悠真は明里を腕に抱き寄せながら、友人たちに向かってこんなことまで言っていた。「俺は一生、明里だけだって決めてる。もし最後に俺が結婚する相手が明里じゃなかったら、その結婚式には絶対来るなよ。いや、来ないどころか、俺を半殺しにしてくれたっていい」そんな二人だったからこそ、今年は籍を入れる予定でいた。だがしかし、若菜が現れた。かつて
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