とは言えだ。 着任当日とはいえ休むわけにはいかない。職務怠慢、私の頭の中の上官がそう叱責してくるのだ。脳内から中々出て行ってくれないこの声は、私が今までいち兵士として従って来た数々の上官の、その集合体のようなもの。なにせ幼少期は上官の暴力と暴言の記憶しかない。頭にこびりついた声が、すぐにでも任に就けと怒鳴る。 私はもう兵士ではないというのに。 移動距離を踏まえ休息する、そんな選択肢は初めから除外している。任地に迫る脅威は、疲労など考慮してくれない。この地において脅威が存在するかは不明だが、必要があるから私が配置されたのだろう。たとえ左遷であろうとも。この地を守護しなければならないという事実は変わらない。 ヤグラが出来次第という話だが、私がこの村ですべきことはただ一つ。守護だけだ。俯瞰出来なくとも、守護という職責は全う出来る。カルムへやってきた際、入り口を護っている者は見受けられなかった。自警団に番人の役割はないのか、それとも偶然いなかったのかは分からないが、ともかく。ヤグラが出来る間、私がその役目を担うことにする。もしカルムに本来の番人がいるなら、いずれ本人から言われるだろう。 思って、鎧を装備する。やはりひらひらとした洒落た洋服は動きづらく、釈然としない、何とも言えない感じだ。その点で言えば形容し難いずれが戻った感覚である。ただ、賜った鎧は性能面よりも造形美を重視したもので、鉄に厚みはなく防御面に不安要素がちらつく。全体的に青に塗装され、引きずりそうなほどの白いサーコートは、果たして本当に必要なのだろうか。しかし、これで戦えと言っているのだ。不良品というほどでもない。いずれ慣れるだろう。ぐっとガントレットを握り、部屋を見渡す。何もない、私が使うには少し広い部屋。持ってきたアタッシュケースと、鎧を収納していた入れ物だけが鎮座している。突如空き部屋に現れた、何日か限定の厄介者。 ロラの家は一人で住むには些か大きい、二階建ての家だった。二階といってもあるのは一部屋だけで、常日頃から使っていなかったという。ではなぜあるのかという話だが、それは私には関係のない話だ。私に関係あるのは、この二階の部屋を貸し与えられたということだけ。 鎧を装着し終えると、一階へ降りる。一段、また一段と足を
Last Updated : 2026-07-25 Read more