妻と子供だけは助けて欲しい。 首元に剣を突き付けられてなお、敵国の王はそう言った。 敗戦国の王がその代償に妻や娘を要求されることはよくある話だ。そうすることで、国は生きながらえるのだから。 だから、王がその命を賭してまで親族を見逃してくれと言ったその言葉の意味が一瞬理解出来なかった。 言葉を咀嚼して。 そういえば、ああ。王には息子がいたと思い出す。 なるほど、それならこの国はまだ生きる。 だがしかし、私にどうこう出来る権利はない。 剣を振りかざすと、王は抵抗の意思は見せず真っすぐに私を見つめていた。 どうしてかは分からないが、その翡翠色の目はどこか私を見据えているように感じて、気持ちが悪い。 首を刎ねる。 抵抗はない。 頭部はりんごのように転げ落ちて、その体は力なく崩れ落ちた。 転がった頭へ目を向けると、その双眸はぴったりと私の瞳を見つめていた。 じっと、私を見ている。 これまで切り捨ててきた者達の目からはそんなこと、微塵も感じなかったのに。 それなのに、この王は死してなお私をその瞳に捕らえている。 気持ち悪い。 じっと私のことを見据えている王の首も、そして見つめられていると感じている私自身も。 不明瞭な事は不快だ。 どう対応すべきなのか、分からないから。 なので、この感情はいったん忘れよう。今は、この王の首を以て戦争を終わらせることのほうが重要である。 そうだ。 それに比べたら、私の感情など些細な事だ。 そう脳内で完結させて、王の髪の毛を掴み持ち上げる。 戦争はその瞬間に終わりを告げた。 戦場にいた人間全員が、構えていた武器を下ろす。 味方は歓声を、敵は悲嘆の声を。 私は、特に何も思わなかった。 戦いが終わった。 ただ、それだけだと。 ……。 「簡潔な報告だ、エメ・アヴィアージュ。それで、何か弁明はあるか」 「ありません」 弁明という言葉の意味を咀嚼しながら、なぜ管制室に呼ばれるに至ったのかを顧みる。 数年に渡り続いた隣国との戦争は、敵国の王が討ち取られたことにより終息を迎えた。元はといえば領土の問題、ちょうど間に位置する一つの町がどちらの国に属するのか、町長の話にも耳を貸さずに始めた事。そもそもこちらの国の領土ではあったのだが、維持や資金援助など一切の関与をせずに放置していたところ、隣国がそ
Última actualización : 2026-06-05 Leer más