Semua Bab 彼が手放した女性: Bab 621 - Bab 630

642 Bab

第621章 – 意識

二人はしばらく沈黙した後、ジュリアンは低い声で続けた。「ねえ、キャロラインと過ごしたこの何年間もの間、僕は愛が本当に存在するのかどうか、よく考えていたんだ。真の愛、つまり、すり減ることもなく、裏切ることもなく、逃げ出すこともない愛。僕はもうそんなものを信じられなくなっていた。そして君が現れた。君もまた、傷を抱え、傷跡を残して。君は僕に、それが可能だと示してくれたんだ。」エリーズは目を閉じ、ジュリアンの言葉が心地よい波のように彼女を包み込むのを感じた。彼女は、孤独と恐怖と苦闘に満ちた年月を思い浮かべた。命を救ってくれた小さな薬剤師のこと、決して彼女を見捨てなかったソフィーのこと、彼女を信じてくれたグランデ氏のことを。そして、11月のある晩、デュボワ家で彼女の人生に突然現れ、それ以来ずっと彼女のそばにいてくれたジュリアンのことを。翌日、二人は二人きりで一日を過ごすことにした。ソフィーは娘たちの面倒を見ると申し出た。 「娘たちを独り占めできるのは本当に久しぶり!」そう言って、二人はまるで十代の恋人同士のように手をつないで海岸へと向かった。彼らは人影のない浜辺を歩いた。湿った砂には足跡が刻まれ、灰色の空を背景にシルエットが浮かび上がっていた。潮風は冷たかったが、彼らはそれを感じなかった。言葉はほとんど交わさず、ただ並んで歩き、果てしなく続く水平線を見つめていた。あらゆる仕草、あらゆる視線、あらゆる沈黙に、人生は儚く、幸福は尊く、そしてそれをためらうことなく、心ゆくまで味わわなければならないという、鋭い意識が込められていた。二人は小さなシーフードレストランで、まるで恋の初期の頃のように手をつないでランチを食べた。ギリシャ旅行、家の隣にある納屋の改築、協会の施設拡張など、今後の計画について語り合った。初めての喧嘩や仲直りを思い出し、笑い合った。そして食事が終わると、ジュリアンはグラスを掲げ、ただ一言こう言った。「僕たちに。僕たちの愛に。僕たちの人生に。」エリーズはグラスを掲げ、目に感動の輝きを宿らせた。「私たちの人生に乾杯。」
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第622章 – 書籍プロジェクト

その日の夕方、家に帰ると、娘たちが歓声を上げて出迎えてくれた。疲れ切ってはいたものの、幸せそうなソフィーは、その日の冒険の数々を娘たちに話し、皆でリビングルームで笑い合った。まるでごく普通の、仲の良い、愛情あふれる家族のように。そして、エリーゼにとって、長い間味わうことのできなかったこのささやかな幸せは、その晩、世界中のどんな金よりも貴重なものに思えた。彼女は寝る前にノートにこう書いた。ジュリアンと私の間に何かが変わりました。レアの病気が最後の壁を取り払ってくれたのです。私たちは互いを再発見し、これまで以上に強く、より深く結びつきました。今朝、二人だけで海に行きました。浜辺を歩き、語り合い、笑い、そして少し涙も流しました。今夜、私は自分がどれほど幸運かを実感しています。私はほとんどすべてを失いかけましたが、同時にすべてを手に入れました。ジュリアンの愛、レアの回復、アリスの喜び、ソフィーの忠誠心。人生は私から多くのものを奪いましたが、同時に多くのものを与えてくれました。そして今日、私は心から、深く幸せを感じています。***そのアイデアは、5月のある午後、彼女がオフィスで古い書類を整理していた時に、ふと頭に浮かんだ。その日は静かな日で、予定されている会議もなく、協会の静寂を破るのは時計の音と遠くの通りのざわめきだけという、滅多にないひとときだった。何ヶ月も開けていなかった引き出しの底から、手紙の束を見つけた。クララ・フォンテーヌの記事を読んだ後、ラジオで彼女の証言を聞いた後、初めてオフィスのドアをくぐった後に、彼女に手紙を書いてくれた女性たちからの手紙だった。感謝、哀悼、苦しみ、そして希望の手紙。薬、嘘、恐怖、恥、逃避、そして再建――彼女自身の物語と恐ろしいほどよく似た物語を綴った手紙だった。
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第623章 – 書籍プロジェクト

彼女は散らばった箱に囲まれた床に座り、手紙を一枚ずつ読み返した。どの手紙も、静寂の中から湧き上がる声、彼女に差し伸べられた手のように、彼女の闘いが無駄ではなかったというさらなる証拠のように感じられた。ある女性はこう書いていた。「あなたのおかげで、医者に話す勇気が出ました」。別の女性はこう書いていた。「元夫を訴えました。あなたの話が勇気をくれました」。さらに別の、まだ20歳にも満たない若い女性はこう書いていた。「私は一人だと思っていました。でも、そうではないと分かりました。ありがとう」。エリーゼはそれらをすべて、一枚ずつ読み終えると、部屋の黄色い壁に目を凝らし、長い間じっと動かずに立ち尽くし、言葉にできない感情で胸がいっぱいになった。まさにその瞬間、長年抑圧されてきた真実がついに白日の下に晒されるように、そのアイデアが形を成した。本。彼女は本を書こうと決めた。インタビューや講演会で断片的に語るのではなく、アレクサンドルの最初の嘘から協会の設立、彼女の逃亡、離婚、再出発、そしてジュリアンとの愛の誕生まで、すべてを網羅した、構成の整った物語として、自分の物語を語るのだ。飾り立てることも、恥じることも、恐れることもなく、すべてを語る本。協会の扉をくぐる勇気も、相談窓口に電話する勇気もない女性たちに届く本。ある晩、一人で家にいる時に、この本を読んで自分自身を重ね合わせ、そして、自分は一人ではないと知る女性たち。彼女がそのことをジュリアンに初めて話したのは、ある日の夕食後、テラスに座って星空を眺めていた時のことだった。その夜は穏やかで、庭にはスイカズラの香りが漂い、上の階では娘たちが安らかに眠っていた。「ジュリアン、君に伝えたいことがあるんだ。」彼は彼女の方に顔を向け、注意深く耳を傾けた。「聞いているよ。」「本を書くつもりです。」彼はすぐには答えなかった。彼女を見つめ、彼女の目を見て本気かどうか確かめた。すると、彼女の唇にゆっくりと笑みが広がった。「どんな本?」
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第624章 – 書籍プロジェクト

「私のこと。私の物語のこと。私が経験してきたことすべて。ビタミン剤のこと、アレクサンドルのこと、離婚のこと、人生の再建のこと。私たちの関係のこと。」彼は静かに、考え深げに頷いた。「本当にいいんですか?これにはかなりの時間がかかりますよ。それに、辛い記憶が蘇るでしょう。」「ええ、分かっています。でも、そうする必要があるんです。自分の考えを整理して、何が起こったのかを伝えるために、すべてを紙に書き留める必要があるんです。それから…」彼女は言葉を探しながら、ためらった。「それから、私に手紙をくれる女性たちのことを考えるんです。声を上げる勇気のない女性たちのことを。私の話が、彼女たちのうちたった一人でも役に立つなら、それだけで価値があるんです。」ジュリアンは彼女の手を取り、ぎゅっと握りしめた。「だったら、書きなさい。その本を書きなさい。僕がずっと君を支えるから。」翌日、彼女はソフィーに電話でその知らせを伝えた。友人はいつものように大喜びだった。「本!素晴らしいアイデアね!協会ができることよりもはるかに多くの人に届けられるわよ。」「怖いんだ、ソフィー。自分に務まるかどうかが怖い。昔の傷を再び開いてしまうのが怖い。言葉が見つからないのが怖い。」「きっと見つかるわ。エリーゼ、あなたは昔から話し方を知っていたもの。初めて会った日から、あなたはいつも独特の話し方、人の心を打つ話し方を持っていた。自分を信じて。」ソフィーは校正や調査など、必要なことは何でも手伝うと申し出た。「私は作家ではないけれど、目の肥えた読者よ。だから、私があなたの最初の読者になるわ」と彼女は言った。その後数週間、エリーズは準備を進めた。結婚当初からつけていた日記を読み返した。それは、彼女が地獄に落ち、そしてそこから再生していく過程を克明に記録したものだった。手紙や記事、裁判記録を集めた。そして、大まかな計画を練り上げた。それは、監視、発見、脱出、再構築、再生という4つの主要な段階に分けられていた。ジュリアンや協会、少女たちにどれだけの紙面を割くべきか、彼女は迷った。彼らを暴露したくもなかったし、プライバシーを侵害したくもなかった。しかし、彼らについて沈黙を守ることもできなかった。なぜなら、彼らは彼女の物語の不可欠な一部だったからだ。
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第625章 – 書籍プロジェクト

ある晩、彼女は机に座り、パソコンで新しいファイルを開き、最初の文字を打ち込んだ。「目覚まし時計は6時30分に鳴った。」始まりは困難だった。彼女は書いては消し、また書き直したが、決して満足できなかった。文章は長すぎたり短すぎたり、冷たすぎたり、感情的すぎたりした。話すこと、証言すること、物語を語ることに精通していた彼女が、突然、白紙のページを前にして身動きが取れなくなった。彼女はあらゆることに疑念を抱いた。文体、トーン、正当性。一体自分に本を書く資格があるのだろうか?彼女は小説家でもジャーナリストでも専門家でもない。ただ生き延びた一人の女性に過ぎない。それで十分なのだろうか?彼女が苦労しているのを見たジュリアンは、彼女に貴重なアドバイスを与えた。「話すように書きなさい。目撃したことをそのまま書きなさい。文学作品を作ろうとするな。ただ、自分の物語を語りなさい。」彼女は彼の助言に従った。センターにやってくる女性たちと話すように、裁判官の前で証言するように、心理療法士に打ち明けるように、彼女は書き続けた。言葉はより自由に流れ、文章はより滑らかに繋がった。彼女は朝早く、家が目覚める前に起き、夜明けの静寂の中で1、2時間書いた。夜、娘たちが寝た後も、ジュリアンが居間で彼女の傍らで読書をする間、彼女は書き続けた。週末には、娘たちが庭で遊んでいる間も書き続けた。ページをめくるたびに勝利を感じ、章をめくるたびに解放された。まるで、苦しみを言葉にすることで、それを完全に追い払っているかのようだった。夜になると、時折、悪夢に襲われた。昼間に思い出した記憶が、眠っている間に、より鮮明に、より苦痛に満ちた形で蘇るのだ。彼女は心臓が激しく鼓動するのを感じながら、はっと目を覚まし、起き上がって水を一杯飲み、不安が収まるまで居間でじっと座っていなければならなかった。しかし、彼女は諦めなかった。こうした辛い夜は、彼女が払うべき代償であり、彼女はそれを受け入れる覚悟ができていた。
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第626章 – 執筆

6月のある日曜日、彼女はソフィーとジュリアンの妹クレアを招き、最初の数章を読んでもらった。外部からの視点、建設的な批判、そして励ましが必要だったのだ。彼女たちは庭の大きな菩提樹の下に陣取り、少女たちが芝生で遊ぶ間、静かに読書に没頭した。エリーズはじっとしていられず、行ったり来たりしながら彼女たちの反応を見守った。二人が顔を上げて、目に涙を浮かべたとき、彼女は自分の試みが成功したことを確信した。「本当にショックです」とソフィーは感情を抑えきれない声で言った。「本当に。」「あなたは何か大きな可能性を秘めているわ」とクレアは付け加えた。「このまま突き進んでいかなくてはならないわ。」その晩、エリーゼはノートにこう書いた。本を書き始めました。私の物語です。言葉は時に難しく、記憶は辛いものですが、書くことが私を助け、解放してくれるように感じています。今日、ソフィーとクレアが最初の数章を読んでくれました。二人は泣きました。私も泣きました。この本が、沈黙し、震え、疑念を抱えるすべての女性たちの助けとなることを願っています。彼女たちが一人ではないことを知ってほしい。そして、声を上げ、そこを離れ、人生を立て直す強さを見つけてほしい。この本は私のものですが、同時に彼女たちのものでもあります。私は彼女たちのためにこの本を書いているのです。***最初の数日間が一番辛かった。エリーズは客室に庭を見下ろす窓に面した小さな机を置き、娘たちが学校に行っている間、そしてジュリアンが建設現場にいる間、そこで午前中を過ごした。彼女は日記を目の前に広げた。思春期からつけてきた、表紙が擦り切れたノート。それは彼女の人生すべてを静かに見守ってきた証人だった。気ままな日々、アレクサンドルとの出会い、地獄への緩やかな転落、「ビタミン」の発見、逃亡、再建、そしてジュリアンとの愛の誕生。彼女はそれらをまるで遺物のように、証拠のように大切に保管してきた。そして今、彼女は物語の素材を探すために、それらを一枚ずつ開いていった。
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第627章 – 執筆

それは、想像していたよりもずっと辛い、深い海への飛び込みだった。あのページを読み返すことは、あらゆる屈辱、あらゆる沈黙、密かに流したあらゆる涙を再び味わうようなものだった。それは、朝のコーヒーの香りを再び嗅ぎ、ドアがバタンと閉まる音を聞き、白い錠剤が喉を滑り落ちていく感覚を再び味わうようなものだった。それは、毎朝ビタミン剤を飲んだかどうかを尋ねる、あの無感情でよそよそしいアレクサンドルの声を再び聞くようなものだった。それは、まるで自分がその場所の持ち主であるかのようにテーブルに座り、勝ち誇ったように微笑むサラの顔を再び見るようなものだった。それは、胃を締め付ける氷のような恐怖、頬を焦がす恥辱、長い間抑え込まなければならなかった無力な怒りを再び感じさせるものだった。ある日は、彼女は文章を書くことができなかった。画面の前に座り、キーボードに手を置いたまま、一文字も打つことができなかった。記憶が彼女を圧倒し、息苦しくさせ、彼女は立ち上がって庭に出て、歩き、深呼吸をしなければならなかった。彼女は古い菩提樹の下のベンチに座り、風に揺れる枝を眺めた。彼女は失われた年月、自分が犠牲にしてきたもの、奪われたものすべてを考えた。そして少しずつ、平静が戻り、呼吸が楽になり、心の中で言葉が形作られ、彼女は続ける決意を固めて机に戻った。諦めようと思うたびに、彼女は感謝の手紙をくれた女性たち、事務所に来た人々の顔、握った震える手を思い出した。そして彼女は仕事に戻った。こうした心の嵐を乗り越えるため、彼女は心理療法士のデラランド博士に頼り、毎月定期的に面談を続けた。セラピストは彼女が物事を客観的に見られるよう助け、過去に囚われるのを防ぎ、苦しみを重荷ではなく原動力へと変える手助けをした。「あなたはもう、あの苦しみを経験した女性ではありません」と彼女は彼女に言い聞かせた。「あなたは回復し、それを語ることを選んだ人です。これは弱さではなく、強さの表れです。」これらの言葉は、夜の灯台のように、彼女が道に迷わないように導いてくれる道標だった。
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第628章 – 執筆

ジュリアンは、彼女の苦しみを隠そうとはしなかったが、常にそばにいて、静かに支え続けた。彼女が話したいときは耳を傾け、泣きたいときは抱きしめ、一人になりたいときは沈黙を尊重した。彼女が苦しんでいるのを見ても、計画を思いとどまらせようとはしなかった。過去を辿るこの旅は必要不可欠であり、人生の道の一部であり、愛する女性を阻むものは何もない、誰一人としていないことを彼は知っていたからだ。ある晩、継母との屈辱的な場面を描写しようとして特に辛い一日を過ごした後――継母は決して彼女を受け入れず、常に露骨な軽蔑の目で彼女を扱ってきた――彼女はジュリアンの腕の中で泣き崩れ、もう抑えきれない嗚咽に震えた。彼は何も言わずに彼女をしっかりと抱きしめ、彼女が少し落ち着くまで待った。それから、彼女が少し落ち着いた頃、彼はグラスに水を注ぎ、彼女の向かいに座り、優しく尋ねた。「なぜこんなことをするんだ、エリーズ?なぜこんな苦しみを自分に課すんだ?」彼女は一口飲み、グラスを置いて、彼の目をまっすぐに見つめた。「だって、私がやらなければ、誰がやるの?この話が私の心の中に閉じ込められたままだと、私はそれに囚われてしまう。でも、もし私がそれを語り、分かち合えば、それは役に立つものになる。傷ではなく、武器になるのよ。」ジュリアンはゆっくりと頷いた。「君は私が知っている中で最も勇敢な女性だ。」彼女は弱々しく微笑み、目にはまだ涙が浮かんでいた。「勇敢だとは感じません。ほとんどの場合、疲れ果てています。でも、私は歩み続けます。それが勇気の唯一の定義だと私は信じています。もうこれ以上続けられないと思っても、歩み続けること。」彼は彼女の手を取り、ぎゅっと握りしめた。「さあ、続けて。僕は君をずっと支えるよ、どのページも。」彼女は個人的な日記だけに頼るのではなく、外部の資料も参考にした。長年にわたって女性たちから送られてきた手紙を読み返し、そこに込められた感謝と希望に心を打たれた。クレマン弁護士の許可を得て、裁判記録、離婚判決書、そして医療報告書も精査した。さらに、証言に確固たる理論的根拠を与えようと、デラランド博士に連絡を取り、強制支配と家庭内暴力に関する心理学の本を借りることさえした。
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第629章 – 執筆

次第に、彼女の証言は単なる個人的な証言を超え、強制支配のメカニズム、自尊心の緩やかな崩壊、そして被害者の生存戦略についてのより広範な考察へと発展していった。執筆を進めるにつれ、彼女は書くことが自分に予期せぬ効果をもたらすことに気づいた。記憶に言葉を与えることで、彼女は記憶を和らげることができた。長年影に潜んでいた記憶を、言葉という厳しい光にさらすことで、より恐ろしいものになるどころか、本来の姿へと縮小させたのだ。確かに恐ろしい過去の出来事ではあったが、もはや現在を支配することはなかった。執筆開始当初に再発した悪夢も、再び頻度が減った。時折夜な夜な彼女を悩ませていたアレクサンドルの姿は、ぼやけ、遠く、ほとんど非現実的なものとなった。彼女はもはや彼の犠牲者ではなく、自らの物語の語り手となった。そして、この新たな立場は、彼女にこれまで知らなかった強さを与えた。9月のある朝、最後の章を読み終えた彼女はペンを置き、肘掛け椅子に深く腰掛け、目を閉じた。すると、これまでに感じたことのないような安らぎに包まれた。本はまだ完成していなかったが、肝心な部分は既にあった。物語は語られ、真実は明らかになった。彼女は言葉にできないことを言葉にし、その言葉はもはや彼女を恐れさせなかった。過去を物語へと昇華させることで、彼女は過去から解放された。それは、過去に支配されるのではなく、自らがコントロールする運命だったのだ。その晩、ジュリアンと娘たちと夕食を共にしようとしていた時、彼女は笑顔でこう告げた。「もうすぐ終わるわ。」少女たちは理解できずに彼女を見つめていたが、ジュリアンは彼女の笑顔に応え、目に感動の光を宿らせた。「じゃあ、お祝いしよう」と言って彼女の手を取り、レアとアリスの驚きの視線の中、ワインの栓を抜いた。彼女は寝る前にノートにこう書いた。
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第630章 – 疑念

本の執筆がほぼ完了しました。何ヶ月にもわたる努力、迷い、そして涙。しかし同時に、恵み、解放、そして安らぎの瞬間もありました。執筆は私に過去の記憶を掘り起こし、再びそれらと向き合うことを強いました。それは苦痛であり、時には耐え難いほどでした。しかし今日、私は自分がどれほど成長したかを実感しています。この本は単なる証言以上のものです。それは自由への行為です。私はもはや過去の囚人ではありません。過去を言葉に変え、それを必要とするすべての女性にこの言葉を贈ります。まもなく原稿は出版社に送られます。そして何が起ころうとも、私は自分がすべきことを成し遂げたのです。自分の物語を語り、証言し、そして解放したのです。***原稿は完成した。エリーズはそれを3回読み返し、修正し、注釈を加え、いくつかの箇所を書き直し、他の箇所を削除した。机の上には300枚のページがぎっしりと積み重なり、彼女の人生のすべて、少なくともその最も暗い部分、彼女が何年もかけて払拭しようとしてきた部分がそこに詰まっていた。彼女はここ数週間、ほとんど強迫観念的なほどの正確さで、すべての文章、すべての単語、すべての句読点を丹念に磨き上げてきた。そして今、それが終わり、最後の句点が書き込まれた今、彼女は奇妙な空虚感に襲われた。まるで何ヶ月もの間彼女を支えてきたすべてが突然消え去り、彼女は岸辺に取り残され、もう一歩も踏み出せないかのようだった。疲労だけではなかった。もっと深く、もっと陰険な何かだった。心の奥底で、小さな声が、この本を書くべきではなかったと囁いていた。自分は作家ではない、正当な作家ではない、ただ恥をかくだけだと。彼女はその声を知っていた。それはアレクサンドルの声だった。容赦ない批判と軽蔑を通して、彼が彼女の中に植え付けた声。継母の声でもあり、彼女は決して居場所がないと常に言い聞かせていた。人生を通して、自分は十分ではない、才能がない、価値がないと理解させてきたすべての人々の声だった。そして、彼女が黙らせたと思っていたその声が、今、かつてないほど大きな声で戻ってきた。
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