リリアーナは返事ができなかった。 毎日。 その言葉が胸へ落ちた瞬間、痛みと怒りと、どうしようもない切なさが一度に押し寄せる。 毎日。 それほどまでに、あの人もあの十年を見ていたのか。 失くした夜を。 自分が死んだあとの世界を。 そして今、やり直そうとしているのか。 怒りたかった。 今さら、と思いたかった。 実際、そう思っている。 でも、その表情を見てしまった以上、完全に切り捨てるのは難しかった。 セドリックは続けた。「……もっと早く言うべきことがあった」 「ええ」 「もっと、別の触れ方があった」 「ええ」 「分かっている」 その「分かっている」が、前よりずっと重かった。 言葉ではなく、見たものの重さとして。「でも」 リリアーナはそこでようやく声を出した。 喉の奥が少し熱い。 泣きたいわけではない。 ただ、何かが胸の内側を強く擦っている。「やり直したいと思っても」 「……」 「失くしたものが戻るわけじゃない」 セドリックは黙った。 否定しない。 できないのだろう。 そうなのだ。 前世の自分は死んだ。 あの十年の寂しさも、冷たさも、今の自分がどれだけ言葉にできても、なかったことにはならない。 やり直しは、たぶん始められる。 でも、“取り戻し”とは違う。 その線を、彼も今は分かっているのだと、顔が語っていた。 女医が、薬箱の蓋を閉める音がした。 その小さな音で、張りつめた空気が少しだけ動く。「お嬢様、今夜はあまりお話をなさらないほうが」 穏やかな声でそう言ってくれたのは、配慮だろう。 この場の会話が、ただの体調確認ではないことくらい、年嵩の女医には伝わっているはずだ。 それでも、深入りせず、退く余地だけを与える。 その賢さがありがたい。 エマが主人の肩へ毛布をかける。 やわらかな重みが落ちてきて、ようやく身体の震えに気づいた。 怖かったのだ。 襲撃も。 記憶を共有していると知ったことも。 その両方が。 セドリックは部屋の端から動かなかった。 だが、その視線の質は少し変わっていた。 さっきまでの鋭い警戒より、もっと深いところへ沈んでいる。 問いに答えてしまった人間の、隠し場所を失った目だ。 リリアーナは毛
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