「航」澪は甘えるような優しい声で話しかけた。「私たち、これで……ようやく、堂々と一緒にいられるようになるね」そう言う彼女の瞳は、未来への希望で輝いていた。そう言われ、航はハッと我に返った。期待に満ちた澪の目を見つめると、急に喉が詰まるように感じ、ただ短く、「ああ」とだけ言って頷いた。それでも彼の視線は、どうしてもダイニングテーブルの、ある空席に向かってしまう。そこは、この3年間、紬がずっと座っていた場所だった。澪と両親の楽しそうな笑い声の中で、航にとってのその日の食事は、なんとも味気のないものだった。この家から紬の姿が消えてしまった。いつも黙々と働き、何もかもを完璧に整えてくれた、あの温かい存在。それを失って航が初めて感じるのは……これほどまでに、ぎこちないということだ。深夜。寝室にて。航は広いダブルベッドに横たわっていた。この3年間、彼はいつもベッドの奥側で眠るのが習慣だった。手前側のスペースは、紬のために空けてあったのだ。夜中にふと目を覚ましたとき、無意識に腕を伸ばすと、紬の柔らかくて温かい体に触れることができた。それだけで不思議と安心し、また深い眠りにつけるのだった。だが今、まどろみの中でいつものように寝返りを打ち、隣へと手を伸ばすと――指先に触れたのは、いつものぬくもりではなかった。冷え切った、誰もいないシーツの手触りだけだった。航はハッとして跳び起き、勢いよく目を開けた。窓の外の白い月光が、誰もいなくなった冷え切ったベッドの半分を、ハッキリと照らし出していた。いつもならそこにいるはずの姿はなく、枕は綺麗に整えられ、布団にも温もりはなかった。紬は……本当に出ていってしまったのだ。深夜のしっとりした冷たい月光に照らされて、頭から氷水を被せられたかのように、航は改めてその事実に気づかされた。その瞬間、胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように鋭く痛み……それと共に襲い掛かってきたこの胸騒ぎ、まさか自分は動転しているだろうか?そう思うと、航は苛立ち紛れに起き上がった。ひどく喉が渇いていたので、水を飲もうとリビングへ向かうことにした。だが、テーブルの上に置かれた魔法瓶を取り上げて振ってみたが、中はすっかり空っぽだった。これまでは、紬がいつも眠る前に、水をいっぱいに用意してくれていたのだ。仕方がな
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