目の前の男が青葉の赤い唇に口づけしようとするのを見て、拓海はもはや自制が利かなかった。人混みをかき分けて彼女のもとへ駆け寄ろうと必死にもがく。周囲のゲストから向けられる驚きの視線すら、目に入っていなかった。「だ、だめだ!やめろ!」しかし、その叫び声は、瞬く間に周囲の賑やかな声にかき消されてしまった。拓海は恐怖で胸が押しつぶされそうになり、声もかすれていった。頭の中では、ただ一つの強い思いが渦巻いていた。あの男にキスをさせてはいけない。この結婚は、絶対に認められない。青葉は自分の妻だ。自分のものなんだ……そのためなら、どんな犠牲を払っても構わなかった。何が何でも、青葉を取り戻す。青葉がいない間、どれほど彼女を恋しく思っていたか、全部説明しなければならない。今までの真相も、何もかも終わったことも、これからは俺が彼女を守り抜くという決意も。二度と彼女を傷つけたりしないと伝えたかった。しかし、拓海が人混みを抜け出そうとしたその時、制服を着た男二人が、突如として彼の前に立ちはだかった。「申し訳ありませんが、ここから先は立ち入り禁止です」そのうちの一人が手を伸ばし、丁寧ながらも冷徹な口調で拓海を阻んだ。拓海は耳を貸そうともせず、相手の手を払いのけようとした。その声には焦りがにじみ出ていた。「どけ!青葉に会うんだ。彼女は俺の妻だ!」男たちはきょとんとして、黙って顔を見合わせた。その目には明らかな困惑の色が浮かんでいた。青葉がこの人の妻だと?しかし、隆平からは、青葉こそが新しい妻だと聞かされている。しかも、青葉の前夫はかなり前に任務で亡くなったはずだ。たわごとを言うにしても、亡くなった方を引き合いに出すなんて不謹慎すぎる。一人の男が再び拓海を鋭く見据え、釘を刺すように言った。「申し訳ありませんが、やはり中へはお通しできません。これ以上騒がれるようでしたら、お引き取り願います」拓海の顔がみるみる曇っていった。これほど何度も拒絶されたことなど、今までの人生で一度もなかった。昔の彼なら即座に激怒していただろう。だがここは菅原家ではないし、雲嶺市でもない。何をされようと、ここで引き下がるわけにはいかなかった。拓海は拳を握りしめ、深く息を吸い込んだ。「本当に青葉と知り合いなんです。どうかお願いです
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