Todos los capítulos de ゴミとして捨てられた聖女、王国を奪う: Capítulo 111 - Capítulo 113

113 Capítulos

異界封印

 城全体が、軋んでいた。 魔王城心臓部。 ベル・ブリュードからむき出しになった黒いコアが脈打ち、 天井から砂のような闇が降り続ける。     ◆ 切り裂かれた――魔神ベル・ブリュード。 美しい顔は乱れ、その下に蠢く昆虫のおびただしい数の複眼がヒマリを見つめる。 幾千もの感情を孕んだ異形。 割れた空間からベル・ゲラーテの亡骸が蠢き ベル・ブリュードに取り込まれていく。 「こんなことがっ……!」 続いてベル・プルートの亡骸が現れ、本体へ吸収されていく。 分体を取り込むたびに、ベルの輪郭が濃くなっていく。『私を否定しても何も変わらない』 ベルの声だろうか、上辺だけの優しい音色が重なり合って響く。 彼女自身が意思の統制を失い始めていた。『切り捨てた痛みは、私が引き受ける。 苦しみと痛み。絶望を与えよ』 全身から生えた腕が広がる。 その中にはベル・ゲラーテ、ベル・プルートの腕も混じっていた。 ヒマリの膝が揺れる。(私は――何と戦っているの?)     ◆ 異界門は、そのまま開いていた。 空間そのものが裂けたような黒い穴。 光を飲み込み、音が歪む。 世界の法則そのものを拒絶している。 その前に――ヒマリは立っていた。 王錫を支えに、肩で息をしながら。 ノリスの剣は、ベル・ブリュードを拘束し続けていた。 黒い触手のような影を出し、その四肢を縫い止めている。「……まだ、分体を吸収しきれていない」 ノリス自身が徐々に蟻に食われていく。 密着した左半身が侵食され血が滲む。「このまま、異界に封じて! ベル・ブリュードの身体が崩れている今しかない」 白い肌の下から黒い外骨格が露出し、 顔の輪郭が虫の複眼へと崩れ始めていた。 壊れてなお、目を離せない完璧な美しさだった。「ノリス、いつも私の邪魔ばかりするね」 フェルマーが魔法陣の中央で叫ぶ。「確かに、クルス。これはむしろチャンスだ。 重ね掛けで異界に封印する!」『演算補助中。あと十二秒』 クルスの声が響く。 少し無機質ないつもの声。 ヒマリは息を吸った。 異界門がベル・ブリュードに焦点を合わせ、強烈な磁場を発生させた。 終わる。 ようやく、終われる。 ヒマリは王錫を掲げた。「ベル・ブリュード。あなたの痛みは否定しない。 これで――終わらせる
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終われなかった者

 夜明け前だった。 魔王城の周囲は、ようやく静けさを取り戻していた。 黒い霧は消え、空を覆っていた異形の気配もない。 終わった。 そのはずだった。 だが、ヒマリは王錫を握りしめ、その場から動けずにいた。 膝が痺れる。 気を抜くと倒れてしまいそうだ。 今さらになって、全身の傷が存在を主張し始めていた。 戦わなくていい。 その事実が、どこか現実味を持たない。『……無理をするな』 胸の奥で声が響く。 クルスだった。少し呆れたような声音。『王様にも休息は必要だ』 ヒマリは小さく息を吐いた。「そうね」 少しだけ笑う。 いる。 ちゃんといる。 それだけで不思議なほど安心できた。 その時だった。 砂塵の向こうから、一頭の馬が現れた。 真っ直ぐこちらへ向かってくる。 鎧が砂と血で汚れていた。 魔物の群れをくぐり抜けた傷の跡が、外套に滲んでいた。 ヒマリは目を細めた。(来たのね) 馬が止まる。 男は静かに地面へ降り立った。 崩れた魔王城を見上げながら、男は言った。「……終わったか」「ええ」 短い返答。「あなたが王都を守ってくれたからよ」 ジギスムントはそれに答えず、崩れた尖搭に目をやった。「魔物は?」「……封じたわ」「そうか」 風だけが吹く。 かつては復讐の気持ちだけだった。 王となって。 幾度も戦って。 互いに譲れないものを抱えていた。 だが今は違う。 ヒマリには分かっていた。 この男は戦いに来たのではない。 終わりを探しに来たのだ。「決着をつけに来た」 ジギスムントが腰の剣に手をかける。「私と、お前の」 ヒマリは首を振った。「違う」 ジギスムントの顔を見た。 その蒼く透き通った瞳を見た。 (殺意がまったくない) 王である誇りだけは捨てずに、ヒマリの前に立っている。「あなたは決着をつけに来たんじゃない」 ジギスムントが視線を向ける。「終わりを探しに来たのよ」 沈黙が落ちた。 否定はなかった。「……そう見えるか」 笑い方を、あまり知らない人の笑い方だった。 口の端が微かに上がって、それで終わる。「あなたの望むものと、私の望むものは違う」 ヒマリは静かに言った。「どちらかが間違っているわけじゃない」 そして、ジギスムントを見る。「でも、一つの場所には
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君が消えると、僕が困る

 空が、ゆっくりと白み始めていた。 ジギスムントの背中は、もう見えない。 王都には朝日が差しこんでいた。 その時、胸の奥で声がした。『……見逃すのか? 何度も殺されかけたのに』 クルスだった。 近い。 以前よりずっと。 まるで鼓動の裏側にいるような感覚。「もう、あの人の全てを奪ってしまったわ」『命以外はね』 短い沈黙。 それから、クルスが静かに言った。『君は、本当に甘いね』 いつもの皮肉めいた声音。 だが、その奥にあるものを、ヒマリは知っていた。「否定はしないわ」 ヒマリは小さく笑った。 クルスもまた、わずかに笑う気配を見せる。『今回は少し焦った』 ヒマリも肩の力を抜く。「消えかけたものね」『君と二度と会えないかと思った』 あまりにも自然に返ってきた。 だから逆に言葉を失う。 クルスは続けた。『演算はしていた』『対処法もあった』『生存確率も計算していた――でも、耐えられない』 ヒマリの呼吸が少しだけ止まる。 クルスがそんな言い方をすることは珍しい。『僕は合理的だ。だから理解できるだろう?』『いつか君は死ぬ。  それは避けられない』 淡々とした声。 事実を述べるだけの声。 なのに妙に重かった。『君がいなくなる前に、すべてを手に入れておきたい』 ヒマリは思わず苦笑した。「随分、自分勝手ね」『知ってる』 即答だった。『君もだろう』 反論できなかった。 実際そうだった。 クルスが消えた時。 戦いの最中ですら、頭のどこかが空洞になったような感覚があった。 隣にいるのが当たり前になっていた。『だから、これからは、徹底的に管理する』「……お手柔らかにね」『しない』即答。 しかも、どこか愉しげに。「ひどい」『事実だ』 少しだけ笑いが混じる。『ヒマリ』「なに」 珍しくクルスは少しだけ沈黙した。 演算しているのではない。 言葉を選んでいる。 そんな気配だった。『君は僕が思っていたより弱さが残っていた』「喧嘩売ってる?」『違う』 一拍。『だから安心した』 意味が分からず、ヒマリは眉をひそめる。『君は戻れない王なんかじゃない』『ちゃんと限界があり、管理できる』「やっぱり気持ち悪いわね」『出来れば、ベルに消された君の映像を最初から撮り直したい』 ヒマリ
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