Lahat ng Kabanata ng ゴミとして捨てられた聖女、王国を奪う: Kabanata 91 - Kabanata 94

94 Kabanata

王都封鎖

 王都の空気は、重かった。 秋の風は吹き抜ける、だが冷たいだけではない。 何か、湿ったものが混じっている。 王都ブリュード西区画。 城壁の上に立つヒマリは、ゆっくりと遠眼鏡を下ろした。 嫌な感じがする。 昨日より確実に――魔王城が、近い。 もちろん距離が変わるはずはない。 けれど、そう思ってしまうほど、存在感が増していた。 黒い外壁。 空へ突き出した無数の砲塔。 沈黙した巨大建造物。 今はヒマリの制御下にある――はずだった。「……また動いてる」 小さく呟く。 魔王城外壁の砲塔が、ゆっくり角度を変えていた。 ギギ……ギギギ…… 鈍い音。 誰も操作していない。 命令も出していない。 まるで、何かを探しているみたいに。「昨日より稼働数が増えている」 隣でフェルマーが言った。 銀縁眼鏡の奥で、魔法術式が高速回転している。 だが、その顔色は悪い。「砲台に魔物反応は?」「ありません」 即答。 そして。「……それが、一番おかしい」 ヒマリは眉を寄せた。「魔王城内部の魔力流が変質しています」「変質?」「本来、魔王城はヒマリの浄化魔力を基準に最適化されている」「今は、クルスが代わってくれているけど」「内部で別系統の演算処理の痕跡が見える」 嫌な沈黙。「人間の感情波形に酷似した魔力反応です」 ヒマリの胸が、小さくざわついた。「……感情?」「痛み。憎悪。恐怖」 フェルマーは低く続ける。「特に、救済を求める感情への異常執着が見える」 その瞬間。 胸の奥で声がした。『ヒマリ』「クルス?」 静かな声。  魔王城コアを司るヒマリとの融合体。『君が救った人たちを覚えてる?』 ヒマリは目を瞬いた。 戦災孤児。 遺体を抱き、泣いていた母親。 家族を失った兵士。 ロンデルの助けを求めた人々。 全部、覚えている。『浄化した穢れは、本当に消えていたと思う?』 呼吸が止まった。「……どういう意味?」『人間の感情は複雑すぎる』 クルスの声が重くなる。『苦痛を取り除いても、苦しんだ記憶までは消えない』 ヒマリは魔王城を見た。 巨大な黒い城。 おかしなくらい、魔物の気配が感じられない。(まさか……)『魔王城が、学習している』 ぞわり、と背筋が冷える。『救済されなかった痛みを』 そ
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ジギスムント廃嫡

 サンドランド王宮の空気は、張り詰めていた。 誰一人として声を荒げない。 それなのに――沈黙そのものが怒鳴っているようだった。 長机の上に広げられた地図。 北部都市群。 王都ブリュード。 そして、赤く引かれた海路図。 老いたサンドランド王サムールは、机に置かれた報告書を見下ろしていた。 その目はまだ砂漠の王のものだった。「……失敗したか」 低い声。 側近たちが息を呑む。 北部都市群との独占契約交渉。 ロンデル公子擁立工作。 すべて――失敗。 都市群はヒマリ女王を支持。 油田の権益を明け渡し、海路は確保とあるが、 本来の成果とは程遠い。 さらに、ロンデル公子アレクシスがそのまま王都へ合流。 すべてがジギスムントの報告と異なる。「ジギスムントは?」 側近が言い淀む。「……戦争継続の構えです。 すでに第一軍を従え、王都に進軍中」 空気が重くなる。 老王は静かに目を閉じた。「止まれぬか」 誰に向けた言葉でもなかった。 王だからこそ分かる。 一度、前に進むしかない王になった者は。 止まれない。 壊れるまで。 その時だった、扉が乱暴に開く。 伝令が飛び込んできた。「陛下!!」 顔色が悪い。 息も荒い。「申し上げます!!」 伝令は、震える声で告げた。「北部都市でのヒマリ女王暗殺――失敗!!」「……何だと?」老王の声が初めて揺れた。「そんな命は出しておらん」 場が凍った。 誰も言葉を発しなかった。 老王だけが、静かに立ち上がる。「……呼び戻せ」「陛下?」「進軍中のジギスムントを呼び戻すのだ!」 声は低い。 だが、怒りが滲んでいた。「今すぐ行け」「は、はい!」 側近たちが慌ただしく動き出す。 だが。 その時。 別の伝令が飛び込んできた。「陛下!! 北部都市群ネリィ副主席より抗議通達が!!」 巻物を差し出す。 老王が目を通す。 一行。 二行。 その顔から、感情が消えた。 静かに巻物を閉じる。「女王暗殺未遂の証拠を握られ、 飛行魔物による船団焼き討ちまで匂わせてきている…… 白々しく、開かれた貿易などと」 誰かが、ごくりと息を呑む。「陛下……?」 老王はゆっくりと言った。「サンドランドは、本日をもって政治中立を宣言する」 ざわめき。「へ、陛下!?
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侵入した暗殺部隊

 城壁が、悲鳴を上げた。 夜の王都に、巨大な破砕音が響き渡る。 ガゴォォォォン――。 魔王城の砲塔から放たれた重射撃が、 王都西区画の結界を正面から打ち砕いた。 白い防壁が大きく揺らぎ、その直後。 積み上げられていた石造りの城壁が、耐えきれずに崩れ落ちた。 粉塵が夜空へ舞い上がる。 砕けた石が雨のように降り注ぎ、 城壁上にいた兵士たちが叫び声を上げる。「城壁が――!」「崩れるぞ! 退け! 退けぇ!!」 長い年月をかけて築かれた王都の防壁が、 わずか一撃で穴を開けられる。 ヒマリは、とっさに身を伏せた。 爆風が吹き抜ける。 耳鳴りが響き、粉塵で視界が白く染まった。 それでも、彼女はすぐに立ち上がった。「クルス……もっと射角をずらして。城壁への被害が大きすぎる」『無茶を言うな!  砲門がいくつあると思っている!?』 クルスの声にも焦りが混じっていた。『こちらの干渉を防ぐために、魔王城は一斉射撃へ切り替えている。 攻撃予測そのものを再演算する必要がある』「つまり……一度射角をずらしただけで 魔王城が対応しているってこと?」 ヒマリの表情が険しくなる。 ただ暴走しているだけではない。 こちらの行動に合わせて、変化している。「フェルマー!」「ああ、無事だ」 すぐに返事が返ってきた。「王都全体に広げたとはいえ、私の結界が一撃で破られるとは――」 ヒマリは周囲を確認する。 崩れた城壁からは煙が立ち上り、 その向こうには、ぽっかりと夜の闇が広がっていた。(城壁が……抜けた) 胸の奥が冷たくなる。 それは単なる防壁の破壊ではない。 王都へ続く道が、開いたということだった。     ◆ その穴を、影が抜けた。 十一人。 全員が黒い外套に身を包み、気配を極限まで消している。 城壁崩壊による混乱と、舞い上がる粉塵。 逃げ惑う兵士たち。 暗殺者たちにとって、侵入するにはこれ以上ない好機だった。「今だ」 先頭の男が、低く呟く。「ヒマリは城壁上にいる。混乱に乗じて接近する」 影たちは一斉に動いた。 無駄のない足運び。 互いの距離を完璧に保った連携。 彼らは訓練された暗殺者だった。 ジギスムントが最後に残した切り札。 北部都市群での失敗し、最後機会を狙っていた。 全員が理解していた。 
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勝つためではなく

 城壁の上。 ヒマリは、崩れた防壁の向こうを見つめていた。 黒い流れが、王都へ入り込んでいる。 無数の黒い蟻の群れ。 それは生き物の群れというより、 巨大な意思を持った災害のようだった。「ヒマリ、蟻とは言え魔物であれば、浄化は有効ではないか?」 フェルマーが問いかける。 ヒマリは錫杖を握ったまま答えた。「やっている。でも……おかしい」 白い光が広がる。 蟻の群れへ触れた瞬間、何匹かが霧のように消滅した。 しかし、消えた数よりも、増える数の方が圧倒的に多い。「蟻でしょう?  本来なら単純な生物のはずなのに……」 ヒマリは眉を寄せた。「欲望が、絞れない」「あの一匹ごとに自分の意思があるとでも?」「信じられないけど――」 白い光の中で、黒い蟻の群れが蠢いている。「飢え、恐怖、逃げたいという本能 ……いくつもの感情が絡み合っている」 一瞬、ヒマリは言葉を失った。「まるで……人間みたい」「厄介ですね」 フェルマーの魔導眼鏡に、複雑な術式が流れていく。「ですが、一定の効果はあります」 彼は蟻の群れを見つめた。「弱った個体は、結界に触れることで消滅しています」「追い出せる?」「一匹ずつなら可能でしょう」 フェルマーは間を置いた。 そして、城壁の下を見る。 黒い波が、石畳を覆っていた。「ですが……問題は数です」 ヒマリは錫杖を握り直した。 再び浄化術式を展開する。 白い光が壁となり、蟻の群れを押し戻した。 しかし、光の外側では別の群れが進み続けている。 終わりが見えない。「クルス」『見えている』「どうすれば止まる?」 返事はすぐには来なかった。 わずかな沈黙。 どこか遠くで悲鳴が上がった。『……魔王城のコアへ直接干渉するしかない』「コアは、私が取り込んだはずじゃないの?」『その後の問題だ』 クルスの声が低くなる。『ヒマリが取り込んだ部分とは別に、魔王城に残されたシステムがある……。 それが今、完全自律稼働している』 一拍。『僕の演算すら、押されている』 ヒマリは遠くを見る。 夜空の向こう。 黒い外壁を持つ魔王城。 一斉砲撃を終えた無数の砲塔が、今も静かに動いている。(次は、どこを撃つ?) 城壁か。 市街地か。 それとも――。「ヒマリ様!」 兵士が駆け寄ってき
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