王立学園・地下資料室。 アナスタシス・コードの光が、静かに揺れていた。 再生された記録を見つめながら、クラリッサは小さく息を吐く。「……ついに、ここまで読み解けたわ」 その呟きに、ジュリアンは手にしていた資料を静かに閉じた。「はい、学園祭ですね」 クラリッサは頷く。「断罪へ向かう運命が、初めて形になった夜です」 その言葉を聞いたエルネストは、わずかに視線を伏せた。「――月が落ちる夜か」「この日以来、アルトリウス殿下とまともに話せなくなりました」 クラリッサは胸元へ手を添え、静かに理紋を輝かせる。「アナスタシス・コード」 薄桃色の光が広がり、景色はゆっくりと過去へ溶けていった。 ◇ ――王立学園・学園祭最終日。 夜の学園は無数の灯火に彩られ、人々の歓声があちこちから聞こえていた。 しかし、誰もが同じものを見上げている。 夜空いっぱいに浮かぶ巨大な満月。 まるで学園の尖塔へ落ちてくるかのような、不思議な近さだった。「月が落ちる夜だ……」「今年も来たんだな」「綺麗……」 クラリッサも思わず空を見上げ、小さく息を呑む。(こんなに近く感じるなんて……) その幻想的な光景に見入っていると、隣から穏やかな声が聞こえた。「綺麗ですね」 振り向くと、そこにはエルネストが立っていた。「ええ。まるで手が届きそうです」 すると彼は、ほんの少しだけ口元を緩める。「届くかもしれないな」「え?」「未来というものは案外そういうものだ。 遠く見えても、手を伸ばせば届くことがある」 その言葉に、クラリッサの胸は少しだけ高鳴った。 その時だった。「兄上ー! 早く来てください! 皆が待っていますよー!」 遠くからルシアンの明るい声が響く。「騒がしいな」 そう言いながらも、エルネストの表情はどこか柔らかい。 思わずクラリッサも笑みを浮かべた。 しかし、その笑顔は長くは続かなかった。 頭の奥で、誰かの声が響いたのである。【イベント発生条件 達成】(……え?)【月が落ちる夜】【ルート固定イベント 開始】 さらに黄金の文字が次々と浮かび上がる。『プリムローズ・メモリア』『第一告白イベント』『重要対象者 選定開始』『未来固定率 上昇』 意味の分からない言葉が頭の中へ流れ込み、 クラリッサは思わず胸を押
Última atualização : 2026-09-05 Ler mais