「ミユウ!」 閉じかけた魔界の門へ、俺は手を伸ばした。 赤黒い光の裂け目が、刃のように細くなっていく。その向こうで、ラフィセルがミユウを連れ去ろうとしていた。白い翼を押さえ込まれても、ミユウは振り返り、まっすぐに俺を見ていた。 怯えきった顔ではなかった。 俺が来ると信じている目だった。「龍夜くん!」 声が届いた直後、ラフィセルの姿が闇に溶けた。 門が閉じる。 ミユウの白い指先が見えなくなり、赤黒い光は一本の線となって消えた。俺の手は、何もない空間をつかんだ。「ミユウ!」 返事はない。 鏡の池を渡ってきた冷たい風が、金色の髪を揺らした。さっきまで門があった場所には、黒く焼けたような円形の跡だけが残っている。「ミユウ! 聞こえるか!」 俺は拳で門の跡を叩いた。 固い壁を殴ったような衝撃が腕を走る。それでも構わず、もう一度拳を振り上げた。「ミユウ!」「いつまでそうやって叫んでいるつもりですか」 背後から飛んできたルゥの声が、俺の拳を止めた。 振り返ると、ルゥは腕を組んで立っていた。いつもと変わらない、偉そうな顔だ。けれど、その視線は俺ではなく、閉じた門へ向けられている。「叫べば門が開くのですか。あなたの声が大きいことくらい、もう十分に分かりました」「分かってる。だけど……!」 言いかけた言葉をのみ込む。 このまま名前を呼び続けても、何も変わらない。 ミユウは最後まで俺を見ていた。助けを諦めた顔ではなかった。なら、俺がここで立ち止まる理由はない。 俺は目を閉じ、一度だけ深く息を吸った。 冷たい空気が胸へ入る。速くなっていた鼓動を数え、吐く息と一緒に焦りを押し出した。 今やるべきことは、嘆くことじゃない。 閉じた門を開けることだ。「ルゥ。この門は、もう開かないのか」「通常の方法では無理でしょう。向こう側から閉じられた門です。鍵穴すら残っていません」「通常の方法なら、か」 ルゥがわずかに眉を動かした。 俺は再び門の跡へ向き直り、今度は拳ではなく、開いた手のひらを押し当てた。 氷に触れたような冷たさが皮膚から染み込んでくる。 だが、その奥に別のものがあった。 小さな脈。 閉じた門の向こうで何かが鼓動しているように、かすかな振動が手のひらへ返ってくる。 意識を集中すると、俺の身体の内側にも、それに応える熱が生
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