「わたしが闘う!」 ミユウの声が、馬車の軋む音を押しのけて森の中に響いた。 俺が止めるより早く、彼女は荷台から飛び降りていた。白い羽がふわりと揺れ、陽の光を受けて淡く輝く。その背中は小さかった。俺の肩よりもずっと細くて、風が強く吹けば飛ばされそうなくらい軽そうなのに、彼女は迷わず小型悪魔の群れへ向かっていった。「待て、ミユウ!」「大丈夫! 龍夜くんは馬車のそばにいて!」 振り返ったミユウは、こんな時なのに笑った。 まるで、道ばたで迷子の子供を見つけた時みたいに。まるで、困っている誰かを助けに行くのが当たり前だと言うみたいに。 その笑顔に、俺は一瞬だけ足を止めてしまった。 次の瞬間、小型悪魔が地面を蹴った。 黒い影が三つ、同時にミユウへ飛びかかる。鋭い爪が光り、耳障りな鳴き声が空気を裂いた。 ミユウは怖がらなかった。 白い羽をひとつ大きく広げ、体をくるりと回す。足元に淡い光の輪が広がったかと思うと、彼女の手のひらから細い光が伸びた。「えいっ!」 可愛い声に似合わない速さだった。 光は鞭のようにしなり、先頭の小型悪魔を横から打った。黒い体が木の幹に叩きつけられ、霧のように散る。続いて二匹目。ミユウは身を低くして爪をかわし、地面に手をつくようにして跳ねた。白いスカートの裾が舞い、彼女の足が小型悪魔の胸に入る。 小型悪魔は悲鳴をあげて吹き飛んだ。 俺は息を呑んだ。 強い。 ミユウはただ明るくて、すぐ笑って、食べ物を見ると目を輝かせる女の子だと思っていた。俺が守ると決めた相手だ。守らなきゃいけない相手だ。なのに今、森の真ん中で一番前に立っているのは彼女だった。「すごい……」 思わず声がこぼれた。 けれど、隣のルゥは冷たい目で戦場を見ていた。「あの程度で見惚れている場合ではありません。よく見なさい、龍夜」 ルゥの言葉に、俺は視線を戻した。 ミユウに倒されたはずの小型悪魔が、地面の上で黒い泥のように揺れていた。霧になって消えたはずの体が、じわじわと集まっていく。折れた爪が戻り、潰れた頭が膨らみ、黄色い目がまた開いた。「……なんだよ、あれ」「小型悪魔の中でも厄介な種類です。核を潰さない限り、何度でも形を戻します」「核ってどこだよ!」「見えれば苦労はしません」 ルゥは当然のように言った。 その間にも、小型悪魔は増えていくよ
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