大学を終えて早めにバイト先のエリュシオンに行くと、マスターがパソコンに向かい合っていた。「おはよう、アキトくん。はやいね。忘れ物でもあった?」「いや、シフトできてるかと思って」「ちょうどできたところだよ。これでいい?」 マスターはオフィスチェアごと横にズレ、修也に画面が見やすいようにしてくれた。修也のシフトは3日のみ。女の子と遊ぶ日が欲しいから、基本的週に3日しか入らない。「はい、大丈夫です」「じゃ、これで印刷しちゃうね」 マスターが印刷している後ろで、朱音に空いている日をラインで伝える。すぐに既読がつき、返事が返ってくる。『水曜日でいいですか?』『了解』『6時半待ち合わせでどうでしょう? 夕飯は水族館でと考えています。リクエストがあればそちらにしますよ』『水族館で』『分かりました』 やり取りを終えると、スマホをモバイルバッテリーに繋いでバーテン服に着替える。 水族館デート当日、ふたりは現地で待ち合わせをしていた。どうやら朱音は先に来ていたらしく、ラッコの像の前で待っていた。修也に気づくと、微笑んで手招きをする。「随分早いな」 修也はスマホで時間を確認する。まだ待ち合わせの5分前だ。「チケットを買っておきたかったので。はい、どうぞ」 朱音はチケットと共に封筒を手渡してくる。「ん、ありがとな。んじゃ、行くか」 手を差し伸べると、朱音はきょとんとする。「女の子とデートするみたいにしてほしいんだろ? だから、手」「そういうことでしたか。ありがとうございます」 朱音は自分の手を修也の手に重ねる。朱音の手は華奢で、力加減を間違えたら潰れてしまいそうなほど心もとない。「手、小さいな」「よく言われます。アキトくんは、ここに来たことはありますか?」「あぁ、何回かな」「流石ですね。では、エスコートお願いします」「任せろ」 ふたりで入館すると、床の矢印に沿って見て回る。ほとんどの水槽が鮮やかにライトアップされ、幻想的な雰囲気だ。他のカップル達ははしゃぎながら見て回っている。 一方朱音は、水槽の前で立ち止まっては、「綺麗ですね」「来れてよかったです」など、ぽつりと一言言うだけ。修也としては、静かな朱音を連れて歩く方が気楽だ。 レストランに入ると、雑談しながら食事をする。話の内容も「女ウケいい話題を」と気にすることなく、気兼
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