ここはバー・エリュシオン。静かな雰囲気で、30代以上の男女に人気がある店。今は閉店後の片付けをしている。「アキトくん、今ちょっといい?」「はい、美奈子さん」 アキトと呼ばれた金髪の青年が、掃除の手を止めてカウンターに入る。彼の名は秋元修也。映画鑑賞と女遊びが趣味の大学生。ちなみにアキトというのは源氏名のようなもので、エリュシオンではストーカー対策で本名を呼び合わないようにしている。「モクテル作ってみたの。味見してみてくれない?」 美奈子はにっこり微笑んで水色のモクテルを差し出す。彼女は骨折したオーナーの代理で来ている。オーナーとは古くからの付き合いで、結婚する前に小さな飲食店を経営していたため、代理を頼まれたと言う。「うわ、可愛い色ですね。女子好きそー」「でしょ? 味も女の子が好きそうな味になったと思うんだけど、どうかな? アキトくんはモテるから、分かると思って」「あっはは、買いかぶりっすよ」 笑いながら、美奈子の胸元に目をやる。バーテン服に隠れた胸は、意外と大きい。私服姿を何度か見たことがあるが、手に収まりきらないほどのサイズに見えた。(ちょっと年上だけど、たまには人妻とかも良さそうだよな) 美奈子をどう口説こうか考えながら、モクテルを傾ける。モクテルはほんのり甘く、後から柑橘系の爽やかな香りが鼻腔を突き抜ける。「美奈子さん、これ絶対女子ウケいい、……あ、れ……?」 強烈な眠気が襲いかかり、立っていられなくなる。(一服、盛られた、か……?)「アキトくーん、大丈夫ー?」 妖艶に微笑む美奈子の口元を認識するのと同時に、意識を手放した。「て……、起きてください」「う、うぅ……」 誰かに体を揺すられ、目を覚ます。何度がまばたきを繰り返してから見上げると、見知らぬ男がいた。男は華奢で、薄茶色のふわふわした髪をしていた。白いワイシャツに黒いスラックスというシンプルな出で立ちだ。(なんだ、コイツ……) 寝起きで回らない頭で男の顔を見る。中性的な小顔で、小動物を連想させる。おそらく、年下か同い年。「誰だ、テメェ……」 体を起こし、あたりを見回してぎょっとする。自分と男は同じダブルベッドの上にいた。室内にはAVでしか見たことがないような拘束具があった。異様な光景に一気に目が覚める。「な、なんだよここ!」「僕にも分かりません」
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