藤堂雪乃(とうどう ゆきの)は冷静沈着で理知的な女医として有名で、多くの男たちの初恋の人でもあった。そんな雪乃が、なぜか陰鬱で近寄りがたい藤堂清也(とうどう せいや)に一目惚れしてしまった。藤堂グループのトップに立つ清也。6年前、婚約者だった女性の父親が婚約パーティーの最中に泥酔して火事を起こし、清也は藤堂家の唯一の生き残りとなった。それ以来、清也はかつて婚約までした恋人である篠原莉子(しのはら りこ)と絶縁し、誰も寄せ付けないほどに性格が歪んでしまった。誰もが雪乃の恋は実らないと思っていたが……氷のように冷たい清也が、雪乃にだけは心を開き、3年間もの間、独占的で優しい愛を捧げ続けた。結婚式の日、ちょうど指輪を交換しようとした時だった。突然一人の女が駆け寄り、手に持ったナイフで清也を突き刺そうとした。雪乃は反射的に身を翻し、清也を庇った。ナイフが胸に刺さった瞬間、雪乃の身体から力が抜け、そのまま清也の腕の中へ崩れ落ちた。突き飛ばされた女は、声を振り絞って叫んだ。「清也、私たちの決着はまだついてない!何が結婚よ!?」雪乃は、その女が6年前に清也と絶縁した莉子だと悟った。騒然とする中、押さえつけられていた莉子は突然暴れ出し、その刃先を自分の首に向けた。「清也、もう疲れたわ。二人の縁も、ここで終わりにしてやる」雪乃を抱えていた清也は瞳を見開いて手を離すと、莉子のもとへ駆け寄り、素手でナイフを掴み止めた。その勢いで、雪乃は硬い地面に強く叩きつけられた。胸からの血が、純白のドレスを真っ赤に染め上げていく。清也は莉子を強く抱きしめ、傷つけまいとその身を庇っていた。そして、情緒不安定で気を失った莉子を抱き上げ、目の前を急ぎ足で通り過ぎる清也を見る。最初から最後まで、清也が自分を振り返ることは一度もなかった。雪乃は口の端から血を溢れさせながら、皮肉な笑い声を漏らした。なぜ清也があの時、自分と付き合う気になったのか分かった気がした。目の前の莉子の顔が、自分によく似ていると気づいた瞬間、すべてを悟った。自分はただ、莉子の「替え玉」だったということに。意識が途切れる寸前、客たちの悲鳴が耳に届いた。「花嫁が大量に出血してる!早く救急車を!急ぐんだ!」……病院での3時間にわたる救命
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