数秒後、会場は騒然となった。「うそ……あれって誰?なんとなく面影はあるけど、花嫁さんじゃないわよね?」「前回の式に乱入して、藤堂社長を刺そうとして……花嫁さんを殺しかけたあの女じゃないか?」「マジかよ?藤堂社長があの女とできてたのか?しかも花嫁さんの寝室で?」「そういえば、刺された時も花嫁さんじゃなくてあっちの女を庇って抱えていったな。あれ、愛人だったのかよ!」「『間違えて抱えた』なんて言ってたけど、本気で信じてた自分らが馬鹿みたいだ」「恩を仇で返すとは、このことだな?人間のやることじゃない」野次が飛び交う中、事情を知る者が声を潜めてささやいた。「知ってるか?あれ、藤堂社長の元婚約者、篠原さんだぞ。6年前の火事の原因を作った男の娘だよ!」その爆弾発言が、会場の熱を一気に最高潮まで引き上げた。「は?仇の娘?藤堂社長、どういう趣味だよ?」「花嫁が哀れすぎる。命がけで庇ってあげたのに、この仕打ちなんて……」「どうりで、花嫁さんが現れないわけだわ。私なら二度と来ない!」「藤堂社長の結婚式は、いつだって期待を裏切らないねぇ!」「……」周囲の声が響く中、画面に映し出された修羅場を見て、清也は氷の彫像のように固まっていた。異変を察した側近の高橋和真(たかはし かずま)が、バックステージの操作室へ全速力で駆け出す。「消せ、今すぐ切ってください!」映像は途切れたが、冷ややかな視線と噂話は消えるどころか熱を帯びるばかりだった。莫大な費用を投じた豪華な結婚式は、今や誰もが知るみっともない茶番と化していた。清也は拳を固く握り、爪が白く食い込んだ。言うまでもない。これもすべて雪乃の仕業だ。だが、怒りよりも先に押し寄せてきたのは、凍りつくような恐怖だった。雪乃は、自分との縁を完全に切り捨てるつもりなのだ。そのニュースはすぐさまメディアに広まり、情報操作すら無力化されるほどの広がりを見せた。刺激的な見出しが躍る。【藤堂グループ社長の結婚式、新婦不在で修羅場に】【衝撃のスキャンダル――花嫁のブライダル寝室で敵の娘と関係か】【盾となった花嫁の悲劇――純愛は裏切られた】……療養所でニュースを見た莉子は、流れた映像に呆然と立ち尽くした。画質は粗いが、あれが自分と清也であることは明白
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