「……またこれか」 エリオットが書斎に出入りするようになって二週間と少し。何度か魔王に書物を読み解いてもらったおかげで随分と魔物の書物を理解することができるようになり、そこで得た知識を活用し、早速様々な料理に挑戦していた。 今宵のメニューは満月の夜に収穫した野菜に月光草という花、干したカエルなどをふんだんに使ったスープは、魔物の疲労回復に良いとされていると本で見つけた料理の一つだ。見た目はおどろおどろしいが、ゼフによればかなり効き目は強いものだとも言う。 「今夜のは苦みがまろやかになるようにヤギの乳のチーズを入れてみました」 スープを前に顔をしかめている魔王にエリオットがそう説明をすると、魔王はうんざりといった様子でスプーンを手に取り掬い上げる。一応はひと|匙《さじ》掬ったそれを口元に運んで飲み込んではくれるものの、やはり表情は渋いままだ。 「……ゼフ、赤身肉のステーキを用意しろ」「は、はい、ただいま」 魔王に命じられゼフは慌てて厨房へ向かうなか、エリオットはひと口しか味わってもらえなかった自作のスープを前に居た堪れない思いで見つめる。 書物で魔物や魔力についての知識を得始めたことにより、どのような手段で魔力が回復しやすいかを知ることが出来ている。その中でもエリオットは割と得意である料理による対処法を試しているのだが、なかなか上手くいっているように思えない。 魔王は憮然としたまま赤ワインを何杯も喉に流し込み、まるでうがいをして口の中を整えているかのようだ。その様はエリオットの料理に対する評価にも感じられ、ますます居た堪れない思いにさいなまれていく。 「おい、人間。何度も言うがな、俺の魔力はああいった対処療法的なもので易々と回復するようなものではないとは思わぬのか? 曲がりなりにも魔王の魔力だぞ? そんな低級魔物の対処法でどうにかなるとでも?」「……申し訳ございません」 確かに魔王の言う
Zuletzt aktualisiert : 2026-07-10 Mehr lesen