「最大の魔力を有する魔王がその力を維持し続けるには、心から愛する者と交わり、その証しである子を成さなければならない。それが儀式を行う最大の目的だ。いまお前となら、それも叶うかもしれぬ」 寝台に改めてそっと組み敷きながら、魔王がやさしくエリオットの体や頬、髪を撫でてくる。まるで宝物を扱うかのような手つきに、儀式という改まった名称の行為を前にして緊張を覚えていたエリオットの体の力が徐々に抜けていく。後頭部に手を宛がわれて横たわらせられると、ほうっと熱を持った吐息が漏れた。 「本来であれば、儀式は婚姻を結んだ最初の夜に行うのだが……お前も知っているように、俺は大失態を犯しておるからな……」 出会って最初のあの獰猛な姿を見せられた夜のことを思い返すと、エリオットは思わず苦笑してしまう。いまでこそこうして笑えはするが、当時は死を覚悟するほど恐ろしかった。 「そうでしたね。私、すごく怖かったんですよ、アズラディーンさま」「……悪かったと思うておる。だが許せとは言わぬ。俺は許されぬことをお前にしてきたのだから」「でも先日魔王様が私に触れて下さったとき、過剰に怖がらなければ、こんな事には……」「それこそ俺の責任だ。お前は何も悪くない」「ですが……」「お互い様だ、エリオット。俺たちはいまこそ互いを愛し合う伴侶となるのだ」 そう囁きながらエリオットを見下ろしつつ優しく頬に触れ、撫でてくる。注がれる眼差しはとても甘く、心から魔王に愛されていることを感じた。 だからもうエリオットは、以前された仕打ちのことを恨んではいない。傷ついたり怖かったりした気持ちをなかったことにはできないが、それをいつまでも憎しみとして燃やし続ける気はなかったからだ。それ以上にいまは、ただ一人の愛しい存在として想いを確かめ合いたいだけだった。その想いを示すようにエリオットは腕を伸ばし、魔王を抱き寄せて答える。 「ええ、そうですね……だからアズラディ
Zuletzt aktualisiert : 2026-07-30 Mehr lesen