「落ち着いた?」「おかげさまで。ごめんね。迷惑かけて」「迷惑なんかじゃないよ。むしろ頼ってもらって嬉しかったから」「ならよかったけど。湊くんって少し大人びた感じになった?」 あれから、しばらく抱き合った後に僕たちは隣り合ってリビングのソファーに座っていた。 この子は昔から、たまにあんな風にナイーブになることがある。 それを慰めるのもなんだか懐かしいような気がしなくもないし。「どうだろう。僕はそんな自覚はないんだけどね」「そうかな~結構大人びて見えるんだけど」「まあ、最近色んな経験をしたからね。そのせいで少し思考が成長したのかも?」 自分ではあまり自覚がない。 でも、言われてみればそうなのかもしれない。 いい経験じゃないのが残念なところだけど。「なるほど。確かに湊くん、この一ヶ月でいろんなことがあったしね」「だね。だけど、あんまり悪い気はしてないんだ」「それは、なんで?」「だって、あの経験があったおかげで僕はこうやって日向と一緒に居られるわけだし。僕にとってプラスマイナスで言ったらプラスなんだよ」 あのまま、ほのかと付き合っていたら。 いつか同じような結末になっていたかもしれない。 その時に僕はきっと一人だっただろう。「湊くんってそういう事凄く当たり前みたいに言うようよね」「本心だからね。僕はこうやって日向と一緒に居られて凄く幸せだよ」「あ、ありがと。えへへ」 日向は顔を赤らめながら、僕の肩に頭をのせてくれる。 ドキドキするけど、それ以上に安心感が湧き上がってくる。「どうする? もう少しくらいゆっくりしとく?」「いや、夕飯作ろっか。もう少ししたらお姉ちゃんも帰って来るだろうし」「わかった。じゃあ、準備しようか」 こうして、僕たちは夕飯を作り始める。 夕飯を作っている時には、先ほどのような表情の陰りも無くなっていて安心した。 でも、あんな風にいきなり不安になるという事は何かあったのだろうか? そんな事を考えながら、日向の隣で夕飯づくりに勤しむのだった。 ◇「最近はこの部屋で君と話すことが多いような気がするね」「ですね。何かあったんですか?」「ああ、今日佐山が職員室に連れてこられてね。彼が湊の虐めの首謀者であることが分かって追々処分を決めることになったんだよ」「そうですか」 あの後、本当に水無月先
Last Updated : 2026-07-10 Read more