澪のアルバイト先である『サニーマート』は、この近辺で唯一、二十四時間営業をしているコンビニエンスストアだ。 澪がここで働き始めてから、もうすぐ二か月になる。 シフトは夜の八時半から十一時半までの遅番で、時給は決して高くない。それでも、遠坂家から自転車でわずか五分という近さは大きな魅力だった。 彼女が店に着くと、店長はレジの奥で小銭を数えていた。 店長の吉田は四十代の、少し頭の薄くなった男だ。多少ケチで細かいところはあるものの、従業員への接し方は悪くない。 だが、店長の娘は違った。 吉田美香――澪より一つ年上で、近所の公立高校に通っており、ときどき店を手伝いに来る。 澪は以前から、美香が自分へ向ける視線にどこか居心地の悪さを感じていた。口を開けば、その言葉の端々には決まって棘があった。 理由を知ったのは、しばらく経ってからだ。 美香には彼氏がおり、ある日店へ買い物に来た際、澪を見て思わず二度見したらしい。 それ以来、美香は尻尾を踏まれた猫のように、澪のやることなすこと気に入らなくなってしまったのだ。 澪にしてみれば完全な濡れ衣だったが、いちいち弁解するのも面倒だった。 商品の品出しをしていた店員の小野寺が、澪に向かって手を振る。 「澪ちゃん!今日は入荷が多くてさ。一人じゃ手が回らないんじゃないかって心配してたんだ」 澪は制服に着替え、エプロンと帽子を身につけて手を洗うと、レジへ入った。 「今日は混んでるんですか」 「まあまあかな。九時過ぎには落ち着いてくれると
最後更新 : 2026-07-06 閱讀更多