毒スープの朝食という名の拷問を終えた俺は、ミリアに連れられて王宮の訓練場へと足を運んでいた。 日差しが照りつける屋外は、本来なら爽やかなはずなのだが、隣から漂ってくる「腐った蜂蜜」のような甘すぎる香りのせいで、空気そのものが粘ついているように感じる。 俺の心臓は、デバッグアイが表示する精神汚染アラートのせいで、朝からずっと不整脈気味だ。(……ああ、クソ。胃薬が欲しい。それか、このバケモノの顔面を三時間くらい無言で殴らせてくれる権利をくれ。無理なら、せめてエリザベートの等身大抱き枕を支給してくれ。癒やしが……圧倒的に癒やしが足りないんだよ、このクソゲー) 俺の内心の絶叫とは裏腹に、俺の顔は最高に不遜で、最高に「女に骨抜きにされたクズ」の表情を完璧に維持している。 エスコートされる俺の手は、ミリアの細い腰をしっかりと抱き寄せ、彼女の言葉一つひとつに「ああ、そうだね、ミリア」「君の言う通りだ」と無感情な全肯定を繰り返していた。 訓練場では、金属のぶつかり合う音と、荒い吐息が響いていた。 そこでは、俺の弟である第二王子が、近衛騎士たちを相手に剣を振るっていた。 第二王子。名はカイル。 俺とは正反対の赤髪で、裏表のない直情径行な性格。ゲーム『深愛のユートピア』では、熱血騎士系攻略対象として高い人気を誇っていた。エリザベートに対しても、兄の婚約者として真っ直ぐな敬意を払っていたはずの、この国の良心とも呼べる存在だ。(……カイル。お前、昨日の夜まではまだ『微かな抵抗感』をステータスに出してたよな? 朝は流石に酷かったが、もっと頑張れよ、脳筋。お前のその自慢の筋肉は、バケモノに脳ミソを弄らせるために鍛えたんじゃないだろ?) 俺はデバッグアイの出力を上げ、カイルのステータスを注視した。【対象:第二王子カイル】【状態:軽微な魅了(深度:中)】【支配スロット:空き(予約状態)】 首の皮一枚で繋がっている。 カイルは剣を振るうたびに、ミリアからの「愛の視線(侵食波)」に抗うように、無意識に魔力を放出して精神を防御していた。 だが、その守りも限界に近かった。「まあ、カイル様! なんて素晴らしい剣捌きかしら。私、見惚れてしまいますわ」 ミリアが、両手を頬に当てて可憐に声を上げた。 その瞬間、彼女の背中の影から、どす黒い触手がドリルさながらに回転しなが
آخر تحديث : 2026-07-04 اقرأ المزيد