婚約破棄された公爵令嬢は、偽りの魔王を討ち果たす ―クズ王子に転生した俺、世界を騙して君を救う―

婚約破棄された公爵令嬢は、偽りの魔王を討ち果たす ―クズ王子に転生した俺、世界を騙して君を救う―

last update最後更新 : 2026-06-27
作者:  ぱすた屋さん剛剛更新
語言: Japanese
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故事簡介

コメディ

異世界ファンタジー

一人称

王子

勇者

化け物

転生

歪んだ関係

RPG

乙女ゲームの悪徳王子ヴィンセントに転生した俺。 やったぜ、バラ色の王子生活!……と思いきや、現実は詰んでた。 聖女ミリア(中身はバケモノ)に精神をハックされ、逆らえば即デリート。 最愛の婚約者エリザベートは、冤罪で今にも処刑されそう。 「え、俺の人生、難易度設定バグってない?」 そこで俺に目覚めたのは、世界の法則を書き換える【デバッグアイ】。 代償は「俺が世界一のクズ」を演じ続けること。 エリザベートからは本気で嫌われ、俺はデバッグの反動で毎日盛大に吐血中。 果たして、俺の胃に穴が開くのが先か、彼女が俺を「魔王」として討ちに来るのが先か。 勘違いと吐血とバグにまみれた、死に物狂いの勇者育成ゲームが今、始まる!

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第 1 章

第1回:目が覚めたら絶世の美女を罵倒していた

「――いい加減にしろ、この悪徳の象徴め! 貴様のような薄汚い女、もはや我が婚約者ではない! 今この瞬間をもって、婚約破棄を言い渡す!」

 怒声がシャンデリアの輝く大広間に響き渡った。

 あまりの怒鳴り声に、自分の喉がビリビリと震えるのを感じる。

 ……待て。今の声、俺か?

 俺の声なのか?

 視界が急激に明瞭になる。

 脳を直接かき回されるような酷い眩暈と、他人の人生が濁流のように流れ込んでくる不快感。

 パチリ、と意識のピントが合った。

 目の前には、一人の女性が立っていた。

 夜の帳をそのまま紡いだような銀色の髪。凍てつく冬の湖を思わせる、鋭くも美しい青い瞳。凛とした鼻筋と、震えるのを必死に堪えている薄桃色の唇。

 純白のドレスに身を包んだ彼女は、床に膝をつき、周囲の貴族たちの嘲笑を一身に浴びていた。

(……え、めちゃくちゃ綺麗。嘘、何この美少女。銀髪、吊り目、最高にドタイプなんですけど)

 語彙力が消滅した俺の脳内は、目の前の美女への賛辞で埋め尽くされた。

 だが、現実は残酷だった。

 俺の意識とは裏腹に、俺の右腕は彼女の顔を指差し、口は勝手に次の暴言を紡ぎ出そうとしている。

 いや、止まれ。止まってくれ俺の口。

 こんな美少女を罵倒していい理由なんて、この世のどこにも存在しないはずだ。

「聞こえなかったのか、エリザベート! 貴様の罪状は明らかだ。聖女ミリアへの数々の嫌がらせ、果ては暗殺計画まで……。言い逃れはさせんぞ!」

 違う。俺が言いたいのはそんなことじゃない。

 「さっきはごめん、ちょっと大きな声出しちゃったけど、とりあえず一緒にお茶でも飲んで君の魅力を三時間くらい語らせてくれないかな?」と言いたいんだ。

 なのに、喉の奥からせり上がってくるのは、粘り気のある悪意に満ちた言葉ばかりだ。

 その時、視界の端にパチパチとノイズが走った。

 半透明のウィンドウが宙に浮き上がる。

「……何だ、これ?」

 周囲の人間には見えていないようだ。

 そこには、俺がかつてやり込んだ乙女ゲームのデバッグモードに酷似した画面が表示されていた。

【ログ:イベント「断罪の夜」進行中】

【対象:エリザベート・フォン・アルトワ】

【状態:絶望(深度:大)、婚約破棄確定】

【プレイヤー状態:第一王子ヴィンセント(憑依:覚醒)】

【スキル:デバッグアイ Lv.1 起動】

 ヴィンセント。第一王子。

 その名を聞いた瞬間、記憶のパズルが音を立てて繋がった。

 ここは、俺が死ぬほどやり込んだ乙女ゲーム『深愛のユートピア』の世界だ。

 そして俺が今憑依しているヴィンセントは、物語の序盤でヒロインである聖女に唆され、長年の婚約者であるエリザベートを追放する、典型的な「噛ませ犬」のクズ王子だった。

 ゲームのシナリオ通りなら、俺はこの後エリザベートを国外追放にし、聖女に溺れ、最終的には闇に落ちて魔王と化し、強くなったエリザベートに討伐されて死ぬ。

 待て待て待て。死ぬのは嫌だ。

 それに何より、こんなに可愛い子に殺されるのも嫌だが、彼女を泣かせるのはもっと嫌だ。

「ヴィンセント様……。私は、そのような身に覚えのない罪で断罪されるほど、落ちぶれたつもりはございません」

 エリザベートが、震える声で反論した。

 その瞳には、かつての婚約者への情愛と、信じていたものに裏切られた深い傷跡が見て取れる。

 ああ、ごめん。本当にごめん。俺も今、自分の口が勝手に喋っててパニックなんだ。

 俺は必死に身体の自由を取り戻そうとした。

 謝るんだ。今すぐ土下座して、「全部冗談だった、ちょっとしたドッキリだ」と叫ぶんだ。

 だが、身体が動かない。

 まるで透明な糸で操られているかのように、俺の腕は隣に寄り添う「聖女」を引き寄せた。

「ふふ、ヴィンセント様。そんなに怒らないでください。エリザベート様も、きっと魔が差しただけなのですから……」

 鈴を転がすような甘い声。

 隣にいたのは、ふわふわとした金髪をなびかせた、いかにも「守ってあげたい」と思わせる可憐な少女――聖女ミリアだった。

 ゲームのヒロイン。全プレイヤーが彼女の味方をするはずの存在。

 だが、俺の「デバッグアイ」が捉えた彼女の姿は、全くの別物だった。

【名称:精神寄生体(パラサイト)】

【状態:捕食準備中】

【支配スロット:4/7 埋設済み】

【Slot 4:第一王子ヴィンセント(侵食率:ERROR)】

 背筋に氷を押し当てられたような戦慄が走った。

 聖女じゃない。こいつ、人間ですらない。

 ミリアの背後には、周囲の人間には見えないであろう、どす黒い霧のような触手が何本も伸びていた。

 そのうちの一本が、俺の首筋に深々と突き刺さり、ドクドクと何かを流し込んでいるのが「見えて」しまった。

 魅了。

 ゲーム上の設定だと思っていたそれは、実際には対象の脳をハックし、自我を書き換える恐ろしい寄生行為だったのだ。

 周囲を見渡せば、国王も、騎士団長も、魔導軍の総帥も、全員の首筋に同じ触手が繋がっている。

 彼らの瞳は一様に虚ろで、ミリアの言葉一つひとつに熱狂的な拍手を送っている。

 唯一、その触手が届いていない人間がいた。

 床に膝をつくエリザベートだ。

 彼女のステータスをデバッグアイで確認する。

【名称:エリザベート・フォン・アルトワ】

【パッシブスキル:不変の魂(イミュータブル)】

【効果:あらゆる精神干渉を無効化する】

 なるほど。だからこいつは、エリザベートを排除しようとしているのか。

 自分の魅了が効かない「バグ」である彼女を、この国から追い出すために。

 そして、俺という駒を使って彼女を徹底的に痛めつけ、その絶望をエネルギーとして喰らうために。

(……ふざけんな)

 怒りが湧き上がってきた。

 俺の初恋(三分前)の相手を、こんな化け物の食料にされてたまるか。

 だが、依然として俺の身体はミリアの支配下にある。

 思考は自由だが、出力が制限されている状態だ。

「ミリア、君はどこまで優しいんだ。こんな女、庇う価値もないというのに」

 俺の口が、ミリアの頬を撫でながら甘い言葉を吐く。

 うわ、気持ち悪い。自分の声なのに吐き気がする。

 ミリアは勝ち誇ったような笑みをエリザベートに向けた。その目は全く笑っていない。爬虫類のような、冷酷な観察者の目だ。

「エリザベート・フォン・アルトワ! 判決を言い渡す。貴様を本日をもって国外追放処分とする。二度と我が国の土を踏むことは許さん!」

 決定的な言葉が放たれた。

 大広間にどよめきが広がる。

 エリザベートは、絶望に顔を歪めた。

 一筋の涙が彼女の頬を伝い、床に落ちる。

 その瞬間、俺の胸が締め付けられるような痛みに襲われた。

(待て、行かせるな! 今すぐ抱きしめて「行かないでくれ」って言え!)

 必死に抗う。意識の海の中で、俺は自分の身体を操る「システム」に体当たりを繰り返した。

 一瞬だけ、指先がピクリと動いた。

 視界のデバッグ画面に警告が出る。

【警告:役柄(ロール)に反する挙動を検出。修正プログラムを実行します】

 激痛が走った。

 だが、その痛みの隙間に、わずかな「空白」が生まれた。

 ほんの数秒。俺が俺自身の声を出せる、奇跡的なデバッグタイム。

「エリザベート……!」

 俺は、去ろうとする彼女の背中に向かって、必死に声を絞り出した。

 エリザベートが、驚いたように振り返る。

 その瞳に、一筋の希望が宿ったように見えた。

(言え! 「愛してる」でも「嘘だ」でもいい、彼女を救う言葉を!)

 だが。

「……貴様の面など、二度と見たくない。とっとと失せろ、この出来損ないが!」

 口から出たのは、システムによって強制変換された、最悪の罵声だった。

 エリザベートの瞳から、光が完全に消えた。

 彼女は深く頭を垂れ、「……承知いたしました」とだけ、枯れた声で答えた。

 彼女が兵士に連行され、大広間の重厚な扉が閉まる。

 周囲からは歓声と嘲笑が上がり、ミリアは俺の腕に満足げに身体を預けてきた。

(……ああ、クソ。やってくれたな、システム)

 俺は、笑みを浮かべたままの顔の内側で、奥歯を噛み締めた。

 最悪のスタートだ。

 婚約者は去り、俺は世界で一番のクズ王子として歴史に刻まれた。

 隣には国を滅ぼそうとする化け物がいて、俺の首にはその触手が繋がっている。

 だが、まだ終わっていない。

 俺の手元には、この不条理な世界の裏側を覗き見る「デバッグアイ」がある。

 見てろよ、ミリア。それからこのクソったれな運命。

 俺は絶対に諦めない。

 俺のドタイプなエリザベートを、あんな悲しい顔のままで終わらせてたまるか。

 たとえ世界中の人間に憎まれる魔王になったとしても、俺は裏側からこの物語をハックし、君を救い出してやる。

 俺は、ミリアの肩を抱き寄せながら、心の中で中指を立てた。

 デバッグ開始だ。

 まずは、この首筋に刺さった気持ち悪い触手をどう引っこ抜くか、そこから考えさせてもらおうか。

 扉の向こう、エリザベートが消えた通路を、俺は冷徹な王子の瞳で見つめ続けた。

 その視線の端で、新しいシステムメッセージが静かに明滅していた。

【ミッション開始:エリザベートを生存させ、ハッピーエンドへ導け】

【現在の生存確率:0.01パーセント】

「……ふん。上等だ。ゲームなら、難易度が高い方が燃えるってもんだろ」

 俺は、誰にも聞こえない声で、そっと呟いた。

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第1回:目が覚めたら絶世の美女を罵倒していた
「――いい加減にしろ、この悪徳の象徴め! 貴様のような薄汚い女、もはや我が婚約者ではない! 今この瞬間をもって、婚約破棄を言い渡す!」 怒声がシャンデリアの輝く大広間に響き渡った。 あまりの怒鳴り声に、自分の喉がビリビリと震えるのを感じる。 ……待て。今の声、俺か? 俺の声なのか? 視界が急激に明瞭になる。 脳を直接かき回されるような酷い眩暈と、他人の人生が濁流のように流れ込んでくる不快感。 パチリ、と意識のピントが合った。 目の前には、一人の女性が立っていた。 夜の帳をそのまま紡いだような銀色の髪。凍てつく冬の湖を思わせる、鋭くも美しい青い瞳。凛とした鼻筋と、震えるのを必死に堪えている薄桃色の唇。 純白のドレスに身を包んだ彼女は、床に膝をつき、周囲の貴族たちの嘲笑を一身に浴びていた。(……え、めちゃくちゃ綺麗。嘘、何この美少女。銀髪、吊り目、最高にドタイプなんですけど) 語彙力が消滅した俺の脳内は、目の前の美女への賛辞で埋め尽くされた。 だが、現実は残酷だった。 俺の意識とは裏腹に、俺の右腕は彼女の顔を指差し、口は勝手に次の暴言を紡ぎ出そうとしている。 いや、止まれ。止まってくれ俺の口。 こんな美少女を罵倒していい理由なんて、この世のどこにも存在しないはずだ。「聞こえなかったのか、エリザベート! 貴様の罪状は明らかだ。聖女ミリアへの数々の嫌がらせ、果ては暗殺計画まで……。言い逃れはさせんぞ!」 違う。俺が言いたいのはそんなことじゃない。 「さっきはごめん、ちょっと大きな声出しちゃったけど、とりあえず一緒にお茶でも飲んで君の魅力を三時間くらい語らせてくれないかな?」と言いたいんだ。 なのに、喉の奥からせり上がってくるのは、粘り気のある悪意に満ちた言葉ばかりだ。 その時、視界の端にパチパチとノイズが走った。 半透明のウィンドウが宙に浮き上がる。「……何だ、これ?」 周囲の人間には見えていないようだ。 そこには、俺がかつてやり込んだ乙女ゲームのデバッグモードに酷似した画面が表示されていた。【ログ:イベント「断罪の夜」進行中】【対象:エリザベート・フォン・アルトワ】【状態:絶望(深度:大)、婚約破棄確定】【プレイヤー状態:第一王子ヴィンセント(憑依:覚醒)】【スキル:デバッグアイ Lv.1 起動】 ヴィンセン
last update最後更新 : 2026-06-25
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第2回:俺の口が勝手に「国外追放」と言い放つ
 断罪劇という名の公開処刑が幕を閉じ、煌びやかな大広間には余韻のような冷たい空気が流れていた。 エリザベートが兵士たちに連行されていった扉を見つめながら、俺の右腕はまだ隣にいる聖女ミリアの腰を抱いている。 ……正直に言おう。今すぐこの腕を切り落として洗浄機に放り込みたい気分だ。(おい、離れろ化け物。俺のパーソナルスペースを侵食するな。お前のその甘ったるい香水の匂い、デバッグアイで見ると『精神汚染物質』って表示されてるんだよ。臭いんだよ!) 心の中では絶叫し、中指を百本くらい立てているのだが、現実は非情である。 俺の顔は蕩けるような甘い微笑を浮かべ、喉からはうっとりとした声が漏れ出している。「ようやく、あの目障りな女がいなくなったね、ミリア。これで私たちの邪魔をする者はいなくなった。君の輝かしい未来に、泥を塗る者はもういないんだ」 うわああああああああ! 何だ今の声! 脳が溶けそうなほど甘ったるい! 俺か? これが俺の出した音なのか? 自分の発言なのに、全身に鳥肌が立って止まらない。 システムによる『ヴィンセント』としてのロールプレイ補正、恐るべし。「まあ、ヴィンセント様。そんなに喜んでいただけるなんて、私、本当に幸せです。……でも、エリザベート様も、きっとすぐに反省してくださいますよね?」 ミリアが俺の胸に顔を埋めて、上目遣いで言った。 可憐だ。世が世なら国民的アイドル間違いなしの可愛さだ。 だが、デバッグアイを起動している俺の視界には、彼女の頭上に浮かぶ不気味なステータスが刻一刻と変化しているのが見える。【個体名:ミリア(精神寄生体・幼体)】【状態:栄養摂取中(対象:第一王子の愛執・優越感)】【満腹度:45パーセント】 栄養摂取、だと……? こいつ、俺が吐いた甘い言葉や、周囲の人間がエリザベートを嘲笑した時に生じた「負の感情」を、物理的に食っていやがる。 ミリアが満足げに吐息を漏らすたび、俺の首筋に突き刺さった見えない触手がドクドクと脈動し、俺の生命力か精神力のようなものを吸い上げている感覚がある。 このままでは、俺はこの化け物の「餌」として枯れ果てて死ぬだけだ。「さあ、ミリア。夜も更けてきた。君を部屋まで送り届けよう。大切な聖女を、こんな冷たい場所にいつまでもいさせるわけにはいかないからね」 俺の脚が、意志に反し
last update最後更新 : 2026-06-25
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第3回:デバッグアイが捉えた、隣の美少女の「中身」
 結局、一睡もできなかった。 豪華な天蓋付きのベッドに横たわってはみたものの、目を閉じればエリザベートの絶望に満ちた顔が浮かび、目を開ければデバッグ画面の膨大な数値が網膜を焼きに来る。 俺は一晩中、彼女の現在地を示す座標と、その周囲のエンカウント率、さらには天候データまでをも監視し続けた。(……ふふ、ふふふ。国境付近の天候、『晴れ』に固定完了。これで彼女が雨に濡れて風邪を引く心配はない。さらに、道中の野生の猪の攻撃力を『マイナス九十パーセント』に書き換えておいた。もはや今の猪は、突進してきてもちょっと強めのマッサージをしてくれるだけの毛玉だ) 目の下にクマを作り、虚空を見つめながら不敵に笑う王子。 端から見れば、婚約者を追い出して狂ったサイコパスにしか見えないだろう。 だが、俺の心は充実感に満ちていた。これがオタクの、そしてデバッガーの愛の形だ。 たとえ直接会えなくても、俺は世界の理を捻じ曲げて彼女を甘やかす。 そんな俺の「自由時間」を告げる鐘が鳴り、部屋の扉がノックされた。「ヴィンセント様、お早うございます。ミリアがお迎えに上がりましたよ」 その声を聞いた瞬間、俺の身体がバネ仕掛けの人形のように跳ね起きた。 心拍数が跳ね上がり、顔の筋肉が勝手に「恋に落ちた男の顔」へと成形されていく。(来た。化け物……いや、この世界の自称メインヒロイン、聖女様だ) 扉が開き、朝日を背負ってミリアが入ってきた。 昨晩の夜会とは打って変わって、清楚な白を基調とした神殿の法衣に身を包んでいる。 揺れる金髪、潤んだ瞳、そして慈愛に満ちた微笑み。 本来のゲームなら、プレイヤーが「守りたい、この笑顔」と呟くべき決定的な瞬間だ。「おはよう、ミリア。朝から君に会えるなんて、今日は素晴らしい一日になりそうだ」 俺の口が、デロデロに甘い言葉を吐き出す。 ミリアは頬を染め、恥ずかしそうに俯いた。 ……が、俺の「デバッグアイ」は、その可憐な仕草の裏側にある「真実」を無慈悲に暴き出す。
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第4回:銀髪吊り目美少女は俺のどストライクでした
 ミリアとの地獄のような朝食を終え、俺はようやく自室という名の「デバッグルーム」へと帰還した。 扉を閉め、鍵をかけ、背中でその重厚な木材を押し付けるようにして深々とため息をつく。(……死ぬ。死ぬぞこれ。精神の摩耗が激しすぎる。ブラック企業の連勤どころか、二十四時間体制で魂を削り取られてる気分だ) 俺はふらつく足取りで、部屋の隅にある等身大の鏡の前に立った。 鏡の中には、黄金の髪を完璧にセットし、冷徹さと高貴さを煮詰めたような顔をした美青年が映っている。 第一王子、ヴィンセント。 この端正な顔の裏側で、俺は今、自分を呪っていた。(見てくれよ、この『悪い男』のテンプレみたいなツラ。こんな顔で、あんなに可愛いエリザベートに『消えろ』なんて言ったのか? 前世の俺なら、あんな美少女が相手なら一秒で平伏して靴を舐めてる自信があるぞ) 俺は呪縛が解けている今のうちに、デバッグアイを全開にした。 視界がデジタルなノイズに包まれ、いくつものウィンドウが展開される。 俺が探すのはただ一つ。エリザベートの現在地と、その「ビジュアルデータ」だ。「……いた。よし、同期完了。座標確認、北緯三十七度、東経百二十……。馬車は順調に進んでるな」 俺の視界の隅に、小さな小窓が投影される。 そこには、簡素な護送馬車に揺られるエリザベートの姿があった。 窓から外を眺める彼女の横顔。 銀糸のように細く、月光を反射して輝く髪。 少し吊り上がった形の良い目は、冷たさと強さを同居させているが、今はその端に消えない悲しみが張り付いている。 そして、キュッと結ばれた薄い唇。(……ああ。尊い。尊すぎる。なんだこの造形美。前世の俺が何百万円課金しても手に入らなかった『最高レアリティ』の輝きがそこにある) ぶっちゃけて言おう。 エリザベートは、俺の性癖を具現化したような存在だった。 俺は前世から、いわゆる「クーデレ」や「氷の令嬢」といった属性に弱かった。 高嶺の花であればあるほど、その花が自分だけに一瞬
last update最後更新 : 2026-06-27
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