思わずハモってしまい、2人の間に気まずい空気が流れた。「なるほど…」そんな2人を見て、医師が言った。「お二人のお子さんではなかったんですね。これは失礼」「……」「……」呆然とする彼らに、医師はまた爆弾を落とした。「でしたらおそらく、そのお子さんは彼女が忘れてしまった方のお子さんでしょうね。おそらくね」「え…」「な…っ」おい、どうすんだっ。このクソ医者が!兼悟はこんな爆弾を落としてしれっと去って行く医師に、心の中で罵声を浴びせた。チラリと彼女を見ると、案の定彼女の顔は青ざめ、そして困惑していた。「私…」香織はショックだった。妊娠していることもそうだが、それがいったい誰の子なのかまったく分からない…という事実に血の気が引いていく思いだった。記憶を消したということは、愛していない人の子供なの…?それとも不倫…?考えたくもないそんなことを、でも考えずにはいられなかった。香織はそっと、お腹に手をあてた。まだなんの膨らみもない、小さな赤ちゃんがここにいる…。そう思うと、胸がきゅうん…と痛む気がした。そういえば…「あの…ここはどこですか?」今更な質問に、兼悟は苦笑した。どうやら、ずいぶんとのんびり屋さんみたいだな。彼は知らない。香織が、以前は大手企業を牽引する冷徹社長の最も信頼する秘書で、秘密の契約恋人だったことを。そしてお腹の中の子供が、その男の子だということをー。「あ、そうだー」医師が「言い忘れた!」と戻って来た。「お腹の中の赤ちゃん、双子ですよ!」「……」「……」2人の複雑そうな顔を見て、今度こそ彼は去って行った。「なんなんだ…」兼悟が呟くと、香織もコクリ…と頷いたのだった。*その頃ー渉は目を皿のようにして、何度も確認した。香織…。「そんなバカな…」彼の手には、香織が乗ったと思われる、例の事故で誰一人として助からなかったあの飛行機の、搭乗者名簿があった。そしてそこに、山内香織の名は確かにあったのだ。渉は名簿の紙を持つ手が震えるのも構わず、それをクシャリと握りしめた。そしてその握りしめた拳の上に顔を伏せ、何かを堪えるようにただじっと動かなかった。ふぅ……やがて、彼は長い息を吐き、言った。「搭乗者の監視映像を手に入れろ」その声は低く、そしてその目は陰鬱に眇められていた。「ごちゃご
Última atualização : 2026-07-06 Ler mais