「誰かっ…誰か、いませんかっ…誰か!」静まり返る部屋と何も見えない状況に、香織は言いしれない不安と恐怖を感じていた。それでも自分は、ここでじっと、来るかも分からない誰かの助けを待っているわけにはいかなかった。自分には、待ってくれている子供たちがいる。そう思うことで、勇気を振りしぼることができるのだった。だが、何度叫んでもなんの変化もなく、相変わらず彼女を取り巻くのは静まり返った空気だけだった。どうしたらいいの…っ。焦るあまり、縛られた手首を強く擦ってしまった。その時ー。スタスタと近づいてくる足音を聞いた。途端に、香織の身体は緊張に震え、背中を冷や汗が伝った。息を殺してじっとしていると、足音はピタリと止まり、そしてカチャ…と小さなドアの開く音と共に、それは聞こえてきた。「目が覚めたか」「……」それは、機械を通した耳障りの悪い、ひどく掠れた声だった。香織は思わず息を引き、声の聞こえる方向に顔を向けた。「誰なのっ。…いったい、何がしたいのっ」「……」「こんなことをして、警察に捕まるのが怖くないの!?」「……警察…?」声の主が、その瞬間ふっ…と笑った。香織にはその意味がわからなかったが、この人物が警察を恐れていないことは理解できた。「何が望みなの…」震える声でそう言うと、キュ…と靴音がして、目の前に人の気配がしゃがみ込むのがわかった。咄嗟に身を引こうと上半身を反らすと、その人物が小さく鼻で笑うのが聞こえた。「安心しろ、何もしやしない。だが…明日ここを出たら中村から離れろ。でなければ……次は容赦しない」「……」機械を通した声だからではなく、その纏う気配が覚えのないもので、香織は目隠しの中で眉をひそめた。兼悟から離れろとは、どういう意味だろう…。香織にはこの人物の目的が皆目分からず、ただひたすら困惑していた。*そして兼悟も、香織とはまた違った意味で困惑していた。恩師からピタリと目を据えられ、「よく考えろ」などという半ば脅しのような提案を受けて、渇いた喉を潤す為、水を一口飲んだ。なんでこうなった…?兼悟はほとほと困り果て、だがここで曖昧な態度を取ることは絶対に良くないということも、よくわかっていた。瀬奈を傷つけるからじゃない。この話から逃げられなくなってしまうからだ。政略的には確かにいい話なんだと思う。白鳥
Última atualização : 2026-09-06 Ler mais