その瞬間、用具入れの扉が勢いよく開けられた。 眩しい光が差し込む。 「……は?」 元彼が振り返る。 逆光の中に立っていたのは、 湊くんだ。 肩で息をしている。 きっと。 学校中を探して、 走ってきたんだ。 湊くんの視線は、 掴まれた腕へ落ちる。 その目を見た瞬間、 私は思った。 ──怒ってる。 声を荒げているわけじゃない。 表情が変わっているわけでもない。 それなのに。 普段の湊くんじゃないと、 すぐに分かった。 静かすぎるほど静かな空気が、 逆に怒りを物語っていた。 湊くんはゆっくり口を開く。 「……手、離して」 低く、 静かな声だった。 元彼は鼻で笑う。 「何、お前」 湊くんを見上げるようにして、 口角を上げた。 「お前こいつのなんなの?今彼?」 その言葉に、 湊くんは何も答えなかった。 数秒だけ、 相手をまっすぐ見つめる。 それから静かに口を開く。 「……違うけど」 そう言って、 一歩前へ出る。 「嫌がってるの分かんない?」 用具入れの狭い空間に、 重たい沈黙が落ちる。 元彼は舌打ちをすると、 乱暴に私の腕を離した。 「……うっざ」 吐き捨てるように笑う。 「なんなんだよ、お前ら」 そのまま肩をぶつけるように湊くんの横を通り過ぎ、 廊下へ出て行った。 足音が遠ざかる。 完全に聞こえなくなるまで、 誰も動かなかった。 静かになった瞬間。 膝から、 力が抜ける。 その場に座り込んでしまいそうになる体を、 なんとか支えようとする。 でも、 うまく息ができない。 手が震える。 視界がぼやける。 怖かった。 本当に。 湊くんが、少しだけ距離を空けたまましゃがみ込む。 無理に近づかず、怖がらせないようにしてくれているみたいだった。 そう思った。 「……柚」 名前を呼ぶ声は、 驚くほど優しかった。 その瞬間だった。 張り詰めていたものが、 一気に切れる。 「みな……とくんっ……」 掠れた声で名前を呼ぶ。 気づけば、 体が勝手に動いていた。 湊くんの胸へ、 勢いよく抱きつ
Last Updated : 2026-07-07 Read more